ルーティングプロトコルとは
ルーティングプロトコル(Routing Protocol)とは、コンピュータネットワークにおいて、データパケットを送信元から宛先まで効率的に転送するための最適な経路(ルート)を、ルーター間で自律的に学習し、決定するための規約(プロトコル)を指します。
これにより、ネットワーク上のルーターは互いに情報を交換し、ネットワークトポロジの変更や障害に動的に対応しながら、最も効率的なデータ転送経路を維持することが可能になります。
ルーティングプロトコルの基本的な概念
インターネットをはじめとする大規模なネットワークは、多数のルーターが相互に接続されて構成されています。ルーティングプロトコルは、これらのルーターが協調して動作し、膨大な数の経路の中から最適なものを選択するための「道案内役」として機能します。
主な概念は以下の通りです。
- ルーター(Router): 異なるネットワーク間を接続し、データパケットの転送経路を決定するネットワーク機器です。ルーティングプロトコルは、ルーター上で動作します。
- ルーティングテーブル(Routing Table): ルーターがパケットの転送先を決定するために参照する情報リストです。宛先ネットワークアドレスと、その宛先に到達するためのネクストホップ(次にパケットを転送すべきルーターやインターフェース)が記述されています。ルーティングプロトコルは、このテーブルを自動的に構築・更新します。
- 最適な経路の決定: 「最適な経路」とは、単に最短距離であるとは限りません。一般的には、帯域幅、遅延、ホップ数(ルーターを経由する数)、信頼性、コストなど、様々なメトリック(Metric)に基づいて評価されます。ルーティングプロトコルは、これらのメトリックを考慮して、最適な経路を選択します。
- ネットワークトポロジの変化への対応: ネットワークは動的であり、ルーターの追加・削除、リンクの障害、帯域幅の変化などが常に発生します。ルーティングプロトコルは、これらの変化を検出し、ルーティングテーブルを迅速に更新することで、データ転送の中断を最小限に抑えます。
ルーティングプロトコルの主要な分類
ルーティングプロトコルは、その動作原理と適用範囲によって大きく二つに分類されます。
- IGP(Interior Gateway Protocol):
- 定義: 単一の自律システム(Autonomous System, AS)内部で動作するルーティングプロトコルです。ASとは、単一の管理エンティティ(企業、ISPなど)によって管理されるIPネットワークの集合体です。
- 目的: AS内のルーター間で効率的な経路情報を交換し、AS内の全てのルーターが到達可能なすべてのネットワークへの最適な経路を学習すること。
- 主な種類:
- 距離ベクトル型(Distance-Vector Protocol):
- 動作原理: 各ルーターが、隣接ルーターから受け取った情報(各宛先への距離と方向)を基に自身のルーティングテーブルを更新します。隣接ルーターからの情報を「ベクトル」として受け取り、「距離」を計算して更新します。
- 特徴: 実装が比較的容易です。ルーティング情報の収束(コンバージェンス)に時間がかかり、ルーティングループが発生するリスクがあります(限定的ですが)。
- 例: RIP(Routing Information Protocol)。主にホップ数(ルーターを経由する数)をメトリックとして使用し、最大15ホップまでの制限があります。
- リンクステート型(Link-State Protocol):
- 動作原理: 各ルーターが、自身の隣接関係(リンクの状態)に関する情報をネットワーク全体にブロードキャストします。これにより、全てのルーターがネットワーク全体の正確なトポロジマップを構築し、ダイクストラ法などのアルゴリズムを用いて最適な最短パスを計算します。
- 特徴: ルーティング情報の収束が高速で、ルーティングループが発生しにくいです。ネットワーク全体のトポロジを把握するため、計算リソースをより多く消費します。
- 例: OSPF(Open Shortest Path First)。コスト(帯域幅などに基づいて計算)をメトリックとして使用し、大規模ネットワークに適しています。**IS-IS(Intermediate System to Intermediate System)**も同様の特性を持ち、主にISPのバックボーンで利用されます。
- 距離ベクトル型(Distance-Vector Protocol):
- EGP(Exterior Gateway Protocol):
- 定義: 異なる自律システム(AS)間でルーティング情報を交換するために使用されるルーティングプロトコルです。インターネットのAS間ルーティングの基盤となります。
- 目的: 異なるAS間でネットワーク到達性に関する情報を交換し、インターネット全体の経路を構築すること。
- 主な種類:
- パスベクトル型(Path-Vector Protocol):
- 動作原理: 各ASが、自身が到達可能なネットワークのリストと、その宛先に到達するために通過するASのパス情報を交換します。メトリックは、ASパスの属性(ポリシー、経路フィルタリングなど)に基づいて決定されます。
- 特徴: 大規模なインターネットの経路情報を効率的に管理し、AS間のルーティングポリシーを柔軟に適用できます。ルーティングループのリスクは低いですが、コンバージェンスはIGPより遅いです。
- 例: BGP(Border Gateway Protocol)。インターネットのバックボーンで事実上の標準として使用されています。
- パスベクトル型(Path-Vector Protocol):
ルーティングプロトコルの機能と選択基準
ルーティングプロトコルは、様々な機能を備えており、ネットワーク設計者は目的に応じて適切なプロトコルを選択します。
- 経路情報の交換: 最も基本的な機能であり、ルーター間でルーティングテーブルの情報を共有します。
- 最適な経路の計算: メトリックとアルゴリズムを用いて、各宛先ネットワークへの最適なパスを計算します。
- ルーティング情報の収束(Convergence): ネットワークトポロジの変化(リンクダウン、ルーターダウンなど)が発生した際に、全てのルーターが新しいネットワーク状態を認識し、ルーティングテーブルを更新し終えるまでの時間です。収束が速いほど、ネットワークの可用性が高まります。
- ルーティングループの防止: パケットが同じルーター間を無限に転送され続ける現象を防ぐためのメカニズム(例:ホップ数制限、スプリットホライズン、ポイズンリバースなど)。
選択基準:
- ネットワークの規模: 小規模ネットワークではRIP、大規模ネットワークではOSPFやIS-IS、AS間ではBGP。
- トポロジの複雑性: リンクステート型は複雑なトポロジに適応しやすい。
- 収束速度の要求: 高速な収束が必要な場合はリンクステート型。
- リソース要件: CPU、メモリ、ネットワーク帯域の消費量。
- 管理の容易さ: プロトコルの設定やトラブルシューティングの複雑さ。
- セキュリティ: 経路情報の不正な注入や改ざんに対する対策。
ルーティングプロトコルは、ネットワーク上のデータパケットを送信元から宛先まで効率的に転送するための最適な経路を、ルーター間で自律的に学習し決定するための規約です。単一の自律システム内で機能するIGP(RIP、OSPF、IS-ISなど)と、異なる自律システム間で機能するEGP(BGPなど)に大別されます。
これらのプロトコルは、経路情報の交換、最適な経路の計算、迅速な収束、ルーティングループの防止といった重要な機能を提供します。ネットワークの規模、要求される収束速度、利用可能なリソース、管理の容易さなどを考慮して適切なルーティングプロトコルを選択することは、ネットワークの安定性と効率性を維持する上で不可欠です。
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