突然のサービス停止リスクから企業を守る:米国クラウド依存の隠れた危険性と対策

突然のサービス停止リスクから企業を守る:米国クラウド依存の隠れた危険性と対策

クラウド依存時代の新たなリスク

現代企業におけるクラウドサービスの重要性

現代の企業において、クラウドサービスは最早インフラの根幹を担う存在となりました。

世界中の組織の約56%がMicrosoft Azureをクラウドサービスとして利用しており、AWS、Google Cloudと合わせると、大部分の企業がいずれかの米国系クラウドプロバイダーに依存している状況です。

この依存度の高さは驚異的な数値として表れています。国際データ企業によると、世界のパブリッククラウドサービス市場は2024年の7,730億ドルから2029年には1兆8,060億ドルまで成長すると予測されています。

企業のデジタル変革が加速する中で、クラウドサービスは単なる選択肢ではなく、競争優位性を維持するための必須インフラとなっているのが現実です。

しかし、この圧倒的な依存度の高さが、新たなリスクの温床となっていることを多くの企業が見過ごしています。

システム開発やデータ管理からAI・機械学習まで、あらゆる業務プロセスがクラウドに集約されることで、単一障害点(Single Point of Failure)としてのリスクが格段に高まっているのです。

Microsoft-イスラエル事例が示すサービス停止の現実

2025年9月、技術業界に大きな衝撃を与える事件が発生しました。Microsoftが、イスラエル軍によるガザ地区での監視活動にAzureクラウドサービスが利用されていたという内部調査結果を受け、同国向けの一部サービスを停止したのです。

Microsoft cuts off some services used by Israeli military unit ※外部リンク

この事例は、技術的障害や自然災害ではなく、「プロバイダーの倫理的判断」によってクラウドサービスが突然停止される可能性を現実のものとして示しました。

この対応が正しいか正しくないかは置いておいて、本記事では、企業におけるリスクという観点のみで話を進めます。

契約上は何の問題もなく、技術的にも正常に機能していたサービスが、プロバイダー側の価値判断により一方的に停止される―これまでの災害復旧計画やSLA(Service Level Agreement)では想定されていなかった新種のリスクとして考えておくべき事案です。

特に注目すべきは、この停止が「事前通知なし」で実施された点です。通常のメンテナンスや計画停止とは異なり、企業側には代替策を講じる時間的猶予が与えられませんでした。これにより、影響を受けた企業は即座に業務停止や重要システムの機能喪失に直面することとなりました。

※記事には、”その後同社はイスラエル国防省に対し、特定のクラウドストレージやAIサービス、・・・・を「停止し、無効化する」と通知した。”とあります。

従来のクラウドリスク管理

従来のクラウドリスク管理では、以下のような技術的要因に焦点が当てられてきました。

  1. システム障害によるサービス停止
  2. データセンターの物理的災害
  3. サイバー攻撃によるセキュリティ侵害
  4. ネットワーク障害による接続不良

しかし、2024年の調査では、47%の企業が「クラウド関連の脅威」を上位3つのサイバーセキュリティ懸念の一つに挙げており、リスクの性質が大きく変化していることが明らかになっています。

今や企業が考慮すべきクラウドリスクは、以下の5つの領域に拡大しています。

  1. 政治・地政学的リスク: 国際情勢の変化に伴うサービス制限
  2. 法規制・コンプライアンス変更リスク: 新法施行による既存契約への影響
  3. プロバイダーの倫理基準変更リスク: ESG重視によるサービス利用制限
  4. 利用規約の一方的変更リスク: 契約条件の遡及的適用
  5. 技術的・運用上のロックインリスク: ベンダー依存による切り替え困難性

2024年時点で73%の企業がハイブリッドクラウド戦略を採用していることは、こうしたリスクに対する企業の危機意識の表れといえるでしょう。

企業が直面する現実的な影響

これらのリスクが現実化した場合の企業への影響は深刻です。クラウドセキュリティ侵害の平均被害額は1件あたり約500万ドルに達するとされており、サービス停止による機会損失や代替システム構築コストを考慮すると、その経済的インパクトは計り知れません。

また、2024年には27%の組織がパブリッククラウドでセキュリティインシデントに直面し、これは前年から10%増加しています。

技術的なインシデントだけでなく、政治的・倫理的理由によるサービス停止リスクも加わることで、企業のリスク管理はより複雑化しているのが現状なのです。

次章からは、多面的なリスクに対して、技術的対策、契約面での対策、組織体制の整備という3つの観点から、実践的な解決策を提示します。

特に、システム開発・運用に携わる技術者の皆様にとって、明日から実装可能な具体的な対策手法を中心に解説していきます。また、実際に発生した事例を詳細に分析し、企業が取るべき具体的なアクションプランを段階的に展開していく予定です。

APPSWINGBYは、最先端の技術の活用と、お客様のビジネスに最適な形で実装する専門知識を有しております。システム刷新(モダナイゼーション)やシステムリプレース、新規サービスの設計・開発、既存システムの改修(リファクタリング、リアーキテクチャ)、DevOps環境の構築、ハイブリッドクラウド環境の構築、技術サポートなど提供しています。サイト、システムの一新をお考えでしたら、弊社お問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人
株式会社APPSWINGBY
株式会社APPSWINGBY マーケティング

APPSWINGBY(アップスイングバイ)は、アプリケーション開発事業を通して、お客様のビジネスの加速に貢献することを目指すITソリューションを提供する会社です。

ご支援業種

情報・通信、医療、製造、金融(銀行・証券・保険・決済)、メディア、流通・EC・運輸 など多数

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監修
APPSWINGBY CTO川嶋秀一
株式会社APPSWINGBY  CTO 川嶋秀一

動画系スタートアップや東証プライム上場企業のR&D部門を経て、2019年5月より株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTO。
Webシステム開発からアプリ開発、AI導入、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトまで幅広く携わる。
C, C++, C#, JavaScript, TypeScript, Go, Python, PHP, Java などに精通し、Vue.js, React, Angular, Flutterを活用した開発経験を持つ。
特にGoのシンプルさと高パフォーマンスを好み、マイクロサービス開発やリファクタリングに強みを持つ。
「レガシーと最新技術の橋渡し」をテーマに、エンジニアリングを通じて事業の成長を支えることに情熱を注いでいる。

APPSWINGBY CTO川嶋秀一
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動画系スタートアップや東証プライム上場企業のR&D部門を経て、2019年5月より株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTO。
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C, C++, C#, JavaScript, TypeScript, Go, Python, PHP, Java などに精通し、Vue.js, React, Angular, Flutterを活用した開発経験を持つ。
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