AI検索機能がパブリッシャーへのトラフィックを減少させている

AI検索機能がパブリッシャーへのトラフィックを減少させている

前回「生成AI時代におけるブランドマネジメントの転換」と題して、デジタル時代の新たな潮流として”生成AI時代”が到来と消費者行動の根本的変化について、ご紹介しました。

今回は、生成AI時代の検索サービスで提供されているAI検索機能がパブリッシャーへのトラフィックを大きく減少させている現状と対策についてご紹介していきます。

1.GoogleのAI Overviews(AIによる概要)とは

「GoogleのAI Overviews」をご存じでしょうか? おそらく多くの人があまり気にせず利用されている機能だと思うのですが、GoogleのAI Overviews(日本語では、AIによる概要として提供されています。)機能は、2024年に本格的な展開を開始し、検索結果ページでユーザーの質問に対して包括的な回答を直接提供する機能です。

以前「Search Generative Experience (SGE)」として試験提供されていたものが、一般公開に伴い改名されたものです。

この機能の目的は、ユーザーが求める情報をより迅速かつ簡潔に提供することにあると言われています。

例えば、「Xとは何か?」といった定義を求めるクエリや、「Yのメリットとデメリット」といった比較を求めるクエリに対して、AIが複数のウェブサイトから情報を集約し、簡潔な回答を生成します。各段落には情報源となった参照リンクも表示されます。

Googleの検索を利用する側にとっては非常に便利な機能なのですが、この機能により、ユーザーが個別のウェブサイトを訪問する必要が大きく減少し、パブリッシャーのオウンドメディアに対するトラフィック減少が大きな懸念となっています。

2.オウンドメディアへの影響と懸念されるトラフィック減少

この「AIによる概要」機能が、オウンドメディアのトラフィック減少につながると懸念される主な理由は以下の通りです。

ゼロクリック検索の増加

ユーザーが検索結果ページ上でAIが提供する要約だけで必要な情報を得てしまい、個々のウェブサイトをクリックして訪問する必要がなくなるケースが増加します。これにより、ウェブサイトへのクリック率(CTR)が低下し、結果としてトラフィックが減少します。一部の報告では、AIによる概要が表示される場合、最上位にランク付けされているサイトでもCTRが大幅に減少する事例が示されています(例:MailOnlineの調査でデスクトップで56.1%、モバイルで48.2%のCTR低下が報告されています)。

情報の集約によるサイト訪問の機会損失

AIは複数の情報源から情報を集約して表示するため、ユーザーは様々なサイトを巡回する必要がなくなります。これにより、特に情報提供を主とするオウンドメディアは、本来獲得できたはずの訪問機会を失うことになります。

収益への影響

広告収入やリード獲得など、ウェブサイトのトラフィックに依存するビジネスモデルを持つオウンドメディアは、トラフィック減少が直接的な収益減につながる可能性があります。

下位ページの参照増加と上位ページの分散

AIによる概要では、必ずしも検索上位のページだけでなく、検索結果20位未満のページから情報が引用されるケースもあると報告されています。これにより、これまで上位表示されていたページのトラフィックが分散され、全体として減少する可能性も指摘されています。

3. 具体的な報告事例

GoogleのAI検索機能の導入後にトラフィックの急落を経験したパブリッシャーの報告が複数あります。

Charleston Craftedの事例

DIYの自宅リノベーションに関するガイドを掲載するウェブサイト「Charleston Crafted」の運営者は、2024年3月以降、Googleからのトラフィックが70%以上減少したと報告しています。この減少がGoogleのAIによる概要の導入時期と重なることから、AIによる概要が原因である可能性を指摘しています。

Bloombergの調査

Bloombergが25の独立したパブリッシャーや協力者に対してインタビューを行ったところ、AIによる概要やそれに伴うアルゴリズムの変更により、ウェブサイトへのトラフィックが急落したことが明らかになりました。Similarwebのデータ調査でも、ファッション&ライフスタイル、旅行、DIY&ホームデザイン、料理の全カテゴリでトラフィックの減少が見られたとされています。

Googleの見解と今後の動向

Googleの見解と今後の動向

Googleは、AIによる概要がパブリッシャーやクリエイターに価値のあるトラフィックを送ることに引き続き注力していると述べています。

しかし、AI Overviewsが表示される検索クエリは着実に増加しており、より多くのコンテンツがGoogleのAI機能によって要約されるようになっています。

AIによる概要からの検索トラフィックはGoogle Search Consoleのレポート対象となりますが、通常のウェブ検索とまとめてレポートされるため、現状ではAIによる概要の影響を個別に区別することは難しい状況が続いているのが現状と言えるでしょう。

AI機能の拡充

GoogleはAI Overviewsに加えて、ChatGPTに対抗するAI Modeの導入も予定しており、これによりトラフィックへの影響はさらに拡大する可能性があります。

AIモード(AI Mode)とは

「AIモード(AI Mode)」は、Google検索に搭載された、より高度で対話型のAI検索機能です。従来のGoogle検索がキーワードに対する関連性の高いウェブページ一覧を表示するのに対し、AIモードはユーザーの質問に対してAIが直接、要約された回答や関連情報を生成し、提供することを目指しています。

これまでの「AIによる概要(AI Overviews)」もAIが生成した情報の要約を検索結果の上部に表示する機能でしたが、AIモードはさらに進化した、より対話的で深掘りした情報探索を可能にするものとして位置づけられています。

AIモードの主な特徴

  • 対話型の検索体験: ユーザーはAIに対して、より複雑で長い質問をしたり、追加の質問をしたりすることで、会話形式で情報を深く掘り下げていくことができます。まるでチャットボットと会話するように検索を進めるイメージです。
  • 網羅的かつ分かりやすい回答: 複数の情報源からAIが情報を統合し、要点をまとめて生成された回答が提供されます。これにより、ユーザーは複数のウェブサイトを行き来することなく、求める情報の概要を素早く把握できます。
  • 文脈理解と推論能力: AIがユーザーの検索意図や文脈をより深く理解し、単なるキーワードマッチングではなく、高度な推論に基づいて最適な回答を導き出します。
  • マルチモーダル対応: テキストだけでなく、音声や画像を使った質問にも対応できるようになるとされています。これにより、DIYの作業手順をカメラで見せながら質問するなど、より直感的な情報収集が可能になります。
  • エンドツーエンドの体験: 単純な情報提供だけでなく、ショッピングサイトへの誘導や、予約など、次の行動につながるような情報提供も重視されています。例えば、旅行の計画や商品選びなど、複数の情報源を比較検討しながら最終的な意思決定をサポートするような使い方が想定されています。
  • 参照リンクの提供: AIが生成した回答には、情報源となったウェブサイトへの参照リンクも表示されます。これにより、ユーザー

AIモードの展開状況

地理的展開

  • 最初にアメリカで実験的に導入
  • 2025年6月にインドで正式展開
  • 2025年5月20日、Google I/O 2025で検索体験を刷新する新機能「AIモード」を正式に発表。※この時点で、日本での正式リリースの予定は未発表でした。

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この記事を書いた人
株式会社APPSWINGBY
株式会社APPSWINGBY マーケティング

APPSWINGBY(アップスイングバイ)は、アプリケーション開発事業を通して、お客様のビジネスの加速に貢献することを目指すITソリューションを提供する会社です。

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情報・通信、医療、製造、金融(銀行・証券・保険・決済)、メディア、流通・EC・運輸 など多数

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監修
APPSWINGBY CTO川嶋秀一
株式会社APPSWINGBY  CTO 川嶋秀一

動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
Webシステム開発からアプリ開発、AI、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトを担当。C,C++,C#,JavaScript,TypeScript,Go,Python,PHP,Vue.js,React,Angular,Flutter,Ember,Backboneを中心に開発。お気に入りはGo。

APPSWINGBY CTO川嶋秀一
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