TPCベンチマークとは

TPCベンチマーク(Transaction Processing Performance Council Benchmark)とは、トランザクション処理システムやデータベースシステムの性能を客観的に評価するための標準的な評価指標のこと。

TPCベンチマーク(Transaction Processing Performance Council Benchmark)は、トランザクション処理システムやデータベースシステムの性能を、様々なワークロード条件下で客観的かつ公平に評価するための標準的な評価指標、およびそれを提供する非営利団体Transaction Processing Performance Council(TPC)が策定した一連の測定基準を指します。

これらのベンチマークは、データベース、サーバーハードウェア、ストレージ、およびネットワークの組み合わせが、現実世界のビジネスアプリケーションにおいてどの程度の処理能力と応答時間を持つかを測定するために設計されています。

TPCベンチマークの基本的な概念

TPCベンチマークは、単なる最大スループットの測定に留まらず、システムの応答時間や、複雑なビジネスロジックを含むトランザクション処理能力を総合的に評価することを重視しています。これにより、ベンダー間の製品比較や、システム設計の最適化に役立つ信頼性の高いデータを提供します。

主な概念は以下の通りです。

  1. 標準化されたワークロード: 特定のビジネスシナリオを模倣した、厳密に定義されたワークロード(トランザクションの種類、データ構造、ユーザー数など)を使用します。これにより、異なるシステム間での公平な比較が可能になります。
  2. 客観的な評価: ベンチマーク結果は、TPCのガイドラインに沿って独立した監査人によって検証されます。これにより、結果の信頼性と客観性が保証されます。
  3. 複数メトリクスの測定: 単にトランザクションのスループット(1秒あたりのトランザクション数)だけでなく、平均応答時間、価格性能比(Price/Performance ratio)など、複数のメトリクスが評価されます。価格性能比は、システムの導入コストと性能を総合的に評価する指標として重要です。

TPCベンチマークの主要な種類

TPCは、様々な種類のシステムやワークロードに対応するために、複数のベンチマークを策定しています。

  1. TPC-C(OLTPワークロード): オンライン・トランザクション処理(Online Transaction Processing, OLTP)システム向けのベンチマークであり、最も広く知られ、利用されています。架空の卸売業者の受発注システムをモデルにしており、新規注文の入力、支払いの処理、注文状況の照会、在庫レベルの確認など、典型的なOLTPトランザクションをシミュレートします。
    • 主な測定指標:
      • tpmC(transactions per minute C): 1分間あたりの新規注文トランザクション数。
      • Price/Performance: 1tpmCあたりのシステム導入コスト。
  2. TPC-H(Ad-hoc Queryワークロード): **意思決定支援(Decision Support System, DSS)データウェアハウス(Data Warehouse)**向けのベンチマークです。大量のデータに対する複雑なアドホッククエリ(即席の問い合わせ)の処理能力を評価します。様々な結合、集約、サブクエリなどを含む22種類のクエリが定義されています。
    • 主な測定指標:
      • QphH(Queries per Hour H): 1時間あたりの複合クエリ処理数。
      • Price/Performance: 1QphHあたりのシステム導入コスト。
  3. TPC-DS(Big Data/Analyticsワークロード): TPC-Hの後継として、より複雑なデータ分析、データマイニング、機械学習などのビッグデータ高度な分析ワークロードを評価するために設計されています。様々なスキーマ(スター型、スノーフレーク型)やデータ型(テキスト、数値)をサポートし、より現実的な分析シナリオを反映しています。
    • 主な測定指標:
      • QphDS(Queries per Hour DS): 1時間あたりの複合クエリ処理数。
  4. TPC-E(OLTPワークロードの進化版): TPC-Cの進化版として、より現代的なOLTPアプリケーション(金融取引など)の特性を反映しています。TPC-Cよりも複雑なトランザクション、高いデータ関連性、およびアプリケーションロジックを考慮しています。
    • 主な測定指標:
      • tpsE(transactions per second E): 1秒あたりのトランザクション数。

TPCベンチマークの重要性と限界

TPCベンチマークは、データベースシステムやサーバーの性能評価において、業界で広く認知された信頼性の高い基準として利用されています。

重要性

  • 公正な比較基準: 厳密なルールと監査プロセスにより、異なるベンダーや製品間の性能を客観的に比較できます。
  • システム選定の指標: 企業が新しいデータベースシステムやハードウェアを導入する際の重要な選定基準となります。
  • 技術進化の促進: ベンダーはTPCベンチマークで高いスコアを出すために、システムの性能改善に努めます。

限界

  • 現実世界との乖離: TPCベンチマークは特定のビジネスシナリオをモデル化していますが、全ての組織やアプリケーションの実際のワークロードを完全に反映するわけではありません。特定のアプリケーションには、ベンチマークが想定していない特性(例:突発的なピーク負荷、特定の種類のクエリ集中)がある可能性があります。
  • 最適化の影響: ベンダーは、TPCベンチマークの特性に合わせてシステムを最適化する傾向があります。この最適化が、必ずしも一般的な実運用環境での性能向上に直結するとは限りません。
  • コスト: TPCベンチマークを実施し、公式に結果を公開するには、多大なリソース(ハードウェア、ソフトウェア、人件費、監査費用)が必要です。

TPCベンチマークは、トランザクション処理システムやデータベースシステムの性能を客観的に評価するための標準的な評価指標であり、TPCが策定した一連の測定基準です。TPC-C(OLTP)、TPC-H(アドホッククエリ)、TPC-DS(ビッグデータ分析)、TPC-E(現代的OLTP)など、様々なワークロードに対応するベンチマークが存在し、それぞれが特定のシナリオを模倣して、スループットや価格性能比を測定します。これらのベンチマークは、公正な比較基準としてシステムの選定や技術進化に貢献する一方で、現実世界のワークロードとの乖離や、ベンチマーク特化の最適化といった限界も存在します。そのため、TPCベンチマークの結果は、あくまでシステム選定における一つの重要な指標として捉え、自社の具体的な要件と照らし合わせて総合的に判断することが不可欠です。

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