504.7億円にも達したクレジットカードの不正利用 ~不正利用の実態と最新対策

504.7億円にも達したクレジットカードの不正利用 不正利用の実態と最新対策

はじめに

クレジットカード不正利用の現状と社会的影響

クレジットカードは現代社会において広く利用されており、オンラインショッピングの普及やキャッシュレス決済の拡大に伴い、その利便性が一層高まっています。しかし、それに比例してクレジットカードの不正利用も増加傾向にあります。特に近年では、カード番号の盗用や偽造カードの使用、フィッシング詐欺などの手口が高度化し、被害が拡大しています。

クレジットカードの不正利用は、個人だけでなく、加盟店やカード会社、さらには経済全体にも大きな影響を及ぼします。消費者は不正請求による経済的損失や信用情報への影響を受ける可能性があり、加盟店はチャージバックによる金銭的負担を負うことになります。また、カード会社は不正利用対策に多大なコストをかけており、これらの影響はキャッシュレス社会の健全な発展を妨げる要因となり得ます。

1.クレジットカード不正利用の統計データ分析

日本クレジット協会の調査データ概要

日本クレジット協会(外部リンク)は、クレジットカードの不正利用に関する詳細な統計を定期的に公開しています。これには、不正利用額の推移、主な被害手口、被害の発生件数、カード会社や加盟店の対応状況などが含まれています。本記事では、最新のデータをもとに不正利用の実態を明らかにし、特に2012年以降の動向に注目して分析を行います。

2012年以降の不正利用額の推移

2012年の不正利用額は68.1億円でしたが、それ以降、増加の一途をたどっています。特に、2018年には235.4億円、2022年には約400億円を超える規模に達しており、10年間で大幅に増加しました。オンライン決済の普及により、カードの番号盗用を用いた不正利用が顕著に増えており、物理カードを用いたスキミングや偽造よりも、オンライン詐欺の割合が高まっています。

下のグラフは、日本クレジットカード協会が公開しているクレジットカード不正利用被害の集計結果(外部リンク)の年間の不正利用被害額をグラフにしたものですが、2014年には約114億円だったものが2023年には540億円もの額に達しています。

クレジットカード不正利用被害額

また、不正利用が急増した背景には、以下のような要因が考えられます。

  • キャッシュレス決済の普及:インターネット通販やデジタル決済の拡大に伴い、不正利用の機会が増加。
  • 不正手口の高度化:フィッシング詐欺や情報漏洩によるカード情報の流出が多発。
  • 対策の遅れ:加盟店や利用者のセキュリティ対策が不十分なケースが多い。

被害の増加要因と背景

クレジットカードの不正利用が急増している主な要因には、技術の進化とそれに伴う犯罪の巧妙化が挙げられます。

  1. フィッシング詐欺の増加:偽のECサイトや銀行サイトに誘導し、ユーザーのカード情報を詐取する手口が横行
  2. 情報漏洩の頻発:企業のデータ漏洩事件が増え、クレジットカード情報がダークウェブで取引されている
  3. ワンタイムパスワードや3Dセキュアの普及不足:強固な本人認証手段を導入していない店舗での不正利用が多発
  4. スキミング技術の進化:物理カードのデータを盗み取るスキマー機器の技術が高度化

特に、COVID-19の影響でオンラインショッピングが急増したことが、不正利用のさらなる加速に繋がったと考えられます。

今後、不正利用を抑制するためには、クレジットカード会社のセキュリティ対策の強化だけでなく、加盟店や消費者側の意識向上も不可欠です。

2.クレジットカード不正利用の手口と手法

クレジットカードの不正利用は多様な手口で行われており、犯罪者は最新の技術や手法を駆使してカード情報を盗み取り、不正に利用します。本章では、代表的な不正利用の手口とその詳細について解説します。


クレジットカード番号の盗用

クレジットカードの番号盗用は、近年最も多い不正利用の手法の一つです。これは、カード自体を盗むのではなく、カード番号、有効期限、セキュリティコード(CVV/CVC)などの情報を取得し、不正決済やカードの偽造に使用する手口です。

主なカード番号の盗用手法

  • データ漏洩:企業のシステムからクレジットカード情報が流出し、ダークウェブ上で売買される。
  • フィッシング詐欺:偽の銀行やECサイトを作成し、ユーザーが自分で入力することで情報を盗む。
  • スキミング:実店舗の決済端末に小型のスキマー機器を設置し、カード情報をコピーする。
  • マルウェア攻撃:ウイルスに感染したパソコンやスマートフォンからカード情報が盗まれる。

この手口による被害を防ぐためには、公式サイト以外でのカード情報入力を避けること、クレジットカード会社のセキュリティサービス(ワンタイムパスワードや3Dセキュアなど)を利用することが重要です。


カード偽造とスキミング

カード偽造は、実際のカードを複製して不正利用する手法であり、特に磁気ストライプカードが主な標的となります。

主な偽造・スキミング手口

  • スキマー機器の設置:ATMやPOS端末にスキミング装置を取り付け、カードの磁気データを読み取る。
  • 店員による不正コピー:レストランや小売店の従業員がカードリーダーを使用して情報を抜き取る。
  • 偽造カードの作成:取得したカード情報を空のカードに書き込み、新しいクレジットカードとして使用。

対策として、EMVチップ(ICチップ)付きカードの利用が推奨されており、多くの国ではチップ決済が主流となっています。しかし、磁気ストライプを使用する店舗では依然として被害が発生しているため、カードの利用履歴を定期的にチェックし、不審な取引があればすぐにカード会社へ連絡することが重要です。


なりすまし(フィッシング・ソーシャルエンジニアリング)

「なりすまし」とは、犯罪者が正規のユーザーになりすましてクレジットカードを不正利用する手口です。特に、オンライン決済ではカードの物理的な提示が不要であるため、本人確認が不十分なケースが多く、なりすまし被害が発生しやすい傾向にあります。

主ななりすましの手法

  • フィッシング詐欺:偽の銀行やクレジットカード会社のメールを送り、ユーザーに偽サイトで情報を入力させる。
  • ソーシャルエンジニアリング:電話やSNSを利用して、ターゲットから直接カード情報を聞き出す。
  • アカウント乗っ取り:メールアカウントやECサイトのアカウントをハッキングし、保存されているクレジットカード情報を悪用する。

これらの手口に対抗するためには、以下の対策が有効です。

  • 公式なウェブサイト以外ではクレジットカード情報を入力しない。
  • クレジットカード会社からのメールやSMSの内容を慎重に確認し、URLを直接クリックせずに公式サイトへアクセスする。
  • 二段階認証を利用し、不正アクセスを防ぐ。

オンライン決済における不正利用

近年、ECサイトやモバイル決済の普及に伴い、オンライン決済に関連する不正利用が増加しています。オンライン決済では、カード情報さえあれば決済が可能なため、番号盗用やなりすましが発生しやすい環境となっています。

オンライン決済における主な不正利用の手口

  • カード情報の不正売買:盗まれたクレジットカード情報がダークウェブ上で売買され、不正利用される。
  • 不正転売目的の購入:不正に取得したカード情報を用いて高価な商品を購入し、それを転売して利益を得る。
  • ボット攻撃:自動化されたプログラム(ボット)を使用して、多数のクレジットカード番号を試行し、有効な番号を特定する。

対策としての最新技術

  • 3Dセキュア(本人認証サービス):オンライン決済時にSMS認証やワンタイムパスワードを要求することで、不正利用を防ぐ。
  • AIによる不正検知:カード会社がAIを活用し、通常とは異なる取引を自動検知し、不正取引の可能性がある場合にブロックする。
  • トークン化技術の導入:実際のクレジットカード番号ではなく、ランダムなトークンを用いて決済を行うことで、番号の盗用を防ぐ。

消費者側の対策としては、以下の行動が重要です。

  • 不正利用防止のために、カードの利用履歴を定期的にチェックする。
  • 安全なECサイト(SSL証明書の有無など)でのみカード情報を入力する。
  • カードの利用限度額を適切に設定し、不正利用時の被害を最小限に抑える。

クレジットカードの不正利用は、手口の進化とともに拡大しています。しかし、カード会社や加盟店、利用者がそれぞれ適切な対策を講じることで、被害を最小限に抑えることが可能です。次回は、最新のセキュリティ対策について詳しく解説します。

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この記事を書いた人
株式会社APPSWINGBY
株式会社APPSWINGBY マーケティング

APPSWINGBY(アップスイングバイ)は、アプリケーション開発事業を通して、お客様のビジネスの加速に貢献することを目指すITソリューションを提供する会社です。

ご支援業種

情報・通信、医療、製造、金融(銀行・証券・保険・決済)、メディア、流通・EC・運輸 など多数

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監修
APPSWINGBY CTO川嶋秀一
株式会社APPSWINGBY  CTO 川嶋秀一

動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
Webシステム開発からアプリ開発、AI、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトを担当。C,C++,C#,JavaScript,TypeScript,Go,Python,PHP,Vue.js,React,Angular,Flutter,Ember,Backboneを中心に開発。お気に入りはGo。

APPSWINGBY CTO川嶋秀一
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動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
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