リージョンとは

リージョン(Region)とは、クラウドコンピューティングにおいて、物理的に独立した地理的エリアに分散配置されたデータセンター群の集合体のこと

リージョン(Region)は、クラウドコンピューティングサービスを提供する事業者が、そのインフラストラクチャを地理的に分散配置するために設定した、独立した大規模なデータセンター群の集合体を指します。

各リージョンは、それぞれが完全に独立した電力供給、ネットワーク接続、冷却システムなどを持ち、自然災害や広域ネットワーク障害など、ある一つのリージョン全体に影響を及ぼすような大規模な障害が発生した場合でも、他のリージョンがサービス提供を継続できるよう設計されています。

リージョン の基本的な概念

クラウドプロバイダーは、世界中に複数のリージョンを展開しています。これにより、ユーザーは自社のサービス提供地域やデータ規制、レイテンシ(遅延)の要件に応じて、最適なリージョンを選択してリソースをデプロイすることが可能になります。

リージョンの主な特徴は以下の通りです。

  1. 地理的独立性: 各リージョンは地理的に十分な距離を置いて配置されており、地震、津波、台風などの自然災害や、大規模な停電、通信障害といった地域的な広範囲の障害が、隣接するリージョンに同時に影響を及ぼす可能性を最小限に抑えるように設計されています。
  2. 論理的独立性: 各リージョンは、クラウドサービスの機能、API、リソース、ネットワークなどが論理的に独立して管理されます。これにより、あるリージョンで発生した障害が、他のリージョンに波及することを防ぎます。
  3. 複数のアベイラビリティーゾーン(Availability Zone, AZ)の包含: 多くのクラウドプロバイダーは、1つのリージョン内に複数の「アベイラビリティーゾーン」を配置しています。アベイラビリティーゾーンは、それぞれが独立した電源、冷却、ネットワークを持つデータセンター群であり、同一リージョン内でも物理的に隔離されています。これにより、リージョン内でさらに高い可用性と耐障害性を提供します。

 \text{リージョン} \supset \text{アベイラビリティーゾーン}_1, \text{アベイラビリティーゾーン}_2, \dots

(リージョンは複数のアベイラビリティーゾーンを含む)

リージョン がもたらすメリット

リージョンを適切に活用することで、クラウド利用者は以下のような多大なメリットを享受できます。

  1. 高可用性と災害対策(DR: 異なるリージョンにシステムを分散配置することで、一方のリージョンが機能停止しても、もう一方のリージョンでサービスを継続するディザスタリカバリ戦略を構築できます。これにより、RTO(目標復旧時間)RPO(目標復旧地点)を最適化し、事業継続性を大幅に向上させることが可能です。
  2. 低レイテンシ(低遅延): ユーザーに近いリージョンにサービスをデプロイすることで、データ転送にかかる時間を短縮し、アプリケーションの応答速度を向上させることができます。これは、Webサービス、ゲーム、リアルタイム通信など、レイテンシに敏感なアプリケーションにとって特に重要です。
  3. データ主権とコンプライアンス: 各国のデータ保護規制(例:EUのGDPR)や業界固有のコンプライアンス要件(例:医療データの保管場所)を満たすために、特定の地理的エリア内でのデータ保管が義務付けられている場合があります。リージョンを選択することで、これらの規制に対応することが可能になります。
  4. 冗長性とスケーラビリティ: 複数のリージョンにシステムを分散配置することで、大規模なトラフィックの増加にも対応できるスケーラブルなアーキテクチャを構築できます。また、リージョン間の負荷分散も実現可能です。

主要なクラウドプロバイダーにおける リージョン の例

大手クラウドプロバイダーは、世界中に多数のリージョンを展開しています。

  • Amazon Web Services (AWS): 「us-east-1 (N. Virginia)」「ap-northeast-1 (Tokyo)」「eu-west-1 (Ireland)」など、複数のリージョンとそれぞれのリージョン内に複数のアベイラビリティーゾーンを持ちます。
  • Microsoft Azure: 「East US」「Japan East」「West Europe」など、地域名と方位で識別されるリージョンと、それぞれのリージョン内にアベイラビリティーゾーンを持ちます。
  • Google Cloud Platform (GCP): 「us-central1 (Iowa)」「asia-northeast1 (Tokyo)」「europe-west1 (Belgium)」など、リージョンとそれぞれのリージョン内にゾーンを持ちます。

リージョンは、クラウドコンピューティングにおいて、物理的に独立した地理的エリアに分散配置されたデータセンター群の集合体です。各リージョンは高い独立性を持ち、その内部には複数のアベイラビリティーゾーンが配置されています。これにより、クラウド利用者は、高可用性と災害対策の強化、ユーザーへの低レイテンシ提供、データ主権やコンプライアンス要件への対応、そしてシステムの冗長性とスケーラビリティの確保といった多大なメリットを享受できます。現代のグローバルなクラウドサービスにおいて、リージョンはITインフラの設計と運用の根幹をなす重要な概念です。

関連用語

ディザスタリカバリ(DR) | 今更聞けないIT用語集
スケーラビリティ | 今更聞けないIT用語集
クラウドソリューション

お問い合わせ

システム開発・アプリ開発に関するご相談がございましたら、APPSWINGBYまでお気軽にご連絡ください。

APPSWINGBYの

ソリューション

APPSWINGBYのセキュリティサービスについて、詳しくは以下のメニューからお進みください。

システム開発

既存事業のDXによる新規開発、既存業務システムの引継ぎ・機能追加、表計算ソフトによる管理からの卒業等々、様々なWebシステムの開発を行っています。

iOS/Androidアプリ開発

既存事業のDXによるアプリの新規開発から既存アプリの改修・機能追加まで様々なアプリ開発における様々な課題・問題を解決しています。


リファクタリング

他のベンダーが開発したウェブサービスやアプリの不具合改修やソースコードの最適化、また、クラウド移行によってランニングコストが大幅にあがってしまったシステムのリアーキテクチャなどの行っています。