4月1日から解禁 デジタル給与(デジタル給与払い)とは

2023年4月1日から解禁されるデジタル給与(デジタル給与払い)。今後、決済系アプリを開発する際や企業広告等に関連すると思われるデジタル給与払いについて、メリット・デメリットを中心に簡単に解説していきます。

デジタル給与(デジタル給与払い)とは

デジタル給与(デジタル給与払い)とは、銀行などの金融機関ではなく“資金移動業者”の口座に資金を移動させることにより、会社が従業員に給与を支払う制度のことです。

2022年11月に厚生労働省が労働基準法施行規則の一部を改正する省令を公布し、開始時期は、同省令の中で令和5年(2023年)4月1日となりました。

資金移動業者とは

資金移動業者とは、財務局に認可された通貨をデジタルマネーに変換して、ショッピングの支払いや資金の移動といった為替取引を行う銀行以外の業者のことです。

資金移動業者は、財務局に登録されており、資金移動業者登録一覧(外部リンク)から確認することができます。2023年3月15日時点での資金移動業者登録一覧によると登録業者は84社となっていますので、デジタル給与(デジタル給与払い)は企業の参画意欲の高い制度だと言えそうです。

デジタル給与のメリット

デジタル給与のメリットについては、企業側と従業員側の双方にメリットがある制度だと言われています。

まず、企業側のメリットとしましては、柔軟な給与の支払い形態を採用している企業イメージの向上ということで、人事、特に新卒採用などに大きなメリットがあると言われています。

従業員側のメリット

一方で従業員側のメリットとしましては、キャッシュレス決済における資金移動(チャージ)の手間がなくなり利便性が向上することが最も大きなメリットとなります。

これまでは使う分だけ銀行口座からアプリにお金をチャージすることが常識でしたが、給与がそのまま決済アプリ口座に振り込まれることで、チャージを気にすることなくキャッシュレス決済を行うことができるようになります。

デジタル給与のデメリット

当然のことながら、デジタル給与にはデメリットも存在しています。

先ほど、従業員のメリットとして紹介した“給与を直接アプリへ振り込み”ですが、従業員から給与を銀行口座とアプリ口座の二つに分割して振り込んで欲しいという要望がでてきます。その結果、振込手続きの仕事が増える上に、振込手数料も二重に発生することになりますので、企業にとっては負担が大きく増えることになります。

また、経理上、振込履歴を二重で確認する必要がでてきますので、中小零細企業にとっては大きな負担増となりますので、デジタル給与制度を導入する際には注意が必要です。

従業員側のデメリット

従業員側のデメリットも存在します。

まず、希望するアプリに資金が移動できない可能性がでてきます。前述した通りデジタル給与払い対応しているアプリは、財務局に認可された資金移動業者になりますので、認可されていない業者のアプリに資金を移動することはできません。

また、給与を振り込む企業が、従業員が希望するアプリ口座の開設をし、デジタル給与口座の振り込みを制度として認めない(認めることができない)ケースなども出てくる可能性があります。

資金移動が1件当たり100万円との上限が決められていますので、デジタル給与として給与や賞与として受け取ることができる金額が決まっていますので、100万円を超える資金の移動を希望する場合は、事前に登録してある銀行口座とアプリ口座のふたつに資金を移動させる必要がでてきます。

振り込まれた後、デジタル給与の保証の問題もデメリットのひとつとして存在しています。アプリを運用する資金移動業者が経営破綻してしまった場合の補償や、情報漏洩等のセキュリティリスクなどもデメリットとして今後出てくる可能性があります。

まとめ

日本国内におけてもキャッシュレス決済が普及し、多くの人々がキャッシュレス決済で買い物をすることが日常となりました。2023年4月1日から解禁されるデジタル給与払いは、キャッシュレス決済アプリの利用者数増を受け、今後はデジタル給与払いを希望する従業員が増え続けることが予想されています。

米国では、小切手と銀行振込に変わる新しい給与の支払い方法として、ペイロールカード(payroll card)と呼ばれるプリペイドカード方式の給与受け取り口座が普及しはじめています。日本国内でも今後銀行口座に変わり、アプリ口座へのデジタル給与払いがDefaultになる可能性があります。

デジタル給与の導入を検討している場合は、キャッシュレス決済アプリの動向やメリット・デメリットを踏まえつつ、企業や従業員にとって最適な環境を準備していきましょう。