マイクロサービスアーキテクチャ:クラウドネイティブ時代のシステム設計 その2

マイクロサービスアーキテクチャ:クラウドネイティブ時代のシステム設計 その2

前回は、「マイクロサービスアーキテクチャ:クラウドネイティブ時代のシステム設計」と題して、マイクロサービスの基本から設計時の鉄則、マイクロサービス分割戦略などについてご紹介しました。今回は、”マイクロサービスでよく使われるデータ管理”や”CI/CDパイプライン”についてご紹介します。

5.マイクロサービスのデータ管理

マイクロサービスでは、各サービスが独立したデータベースを持つことが基本です。 これは、各サービスが自律的に開発・運用できるようにするためですが、一方でデータの整合性を保つのが難しくなるという課題も生まれます。

データベース分割のコツは、ビジネス機能やドメインに沿って分割すること。 例えば、ECサイトであれば、「商品情報」「顧客情報」「注文情報」のように、関連性の高いデータをまとめて一つのデータベースに格納します。 こうすることで、各サービスが必要なデータにだけアクセスできるようになり、データの整合性も保ちやすくなります。

Sagaパターンとイベントソーシングでデータ整合性もバッチリ!

複数のサービスにまたがるトランザクション処理は、マイクロサービスにおける大きな課題の一つです。

  • Sagaパターン:複数のサービスにまたがるトランザクションを、小さなローカルなトランザクションの組み合わせで実現するパターン。
  • イベントソーシング:状態の変化をイベントとして記録し、それを元に各サービスが状態を更新するパターン。

これらのパターンを組み合わせることで、データの整合性を保ちつつ、柔軟なトランザクション処理を実現できます。

CQRSパターンでパフォーマンス向上!

CQRS(Command Query Responsibility Segregation)パターンは、データの読み込み(Query)と書き込み(Command)を分離するパターンです。

  • 読み込み処理:パフォーマンスを重視した専用のデータストアやキャッシュを利用する。
  • 書き込み処理:データの整合性を重視したデータベースに書き込む。

これにより、特に読み込み処理の多いシステムにおいて、パフォーマンスを大幅に向上させることができます。

6.マイクロサービスのデプロイと運用

マイクロサービスのデプロイと運用

コンテナとKubernetesで自動化、楽々運用!

マイクロサービスは、たくさんの小さなサービスが集まってできています。 それぞれを個別に手動でデプロイ・管理するのは、想像するだけで大変ですよね? そこで登場するのが、コンテナKubernetesです。

  • コンテナ:アプリケーションとその実行に必要な環境をまるごとパッケージ化したもの。
  • Kubernetes:コンテナを自動でデプロイ・管理してくれるオーケストレーションツール。

コンテナを使えば、開発環境と本番環境の違いを気にせず、スムーズにデプロイできます。 Kubernetesを使えば、複数のコンテナをまとめて管理し、負荷に応じて自動でスケールさせたり、障害発生時に自動で復旧させたりすることも可能です。

CI/CDパイプラインでさらに効率UP!

CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)パイプラインとは、コードの変更からデプロイまでを自動化する仕組みです。

  • 継続的インテグレーション(CI):コードの変更を頻繁にメインブランチに統合し、自動でテストを実行する。
  • 継続的デリバリー(CD):テストが成功した変更を、自動で本番環境にデプロイする。

CI/CDパイプラインを構築することで、開発者はコードを書くことに集中でき、リリース作業の手間を大幅に削減できます。 結果として、開発スピードが向上し、より頻繁に新機能をリリースできるようになります。

モニタリングでシステムの状態を常に把握!

マイクロサービスは、多数のサービスが連携して動作するため、システム全体の状態を把握することが重要です。 そこで必要となるのがモニタリングです。

モニタリングツールを使って、各サービスの稼働状況、パフォーマンス、ログなどを監視することで、問題の早期発見・対応が可能になります。 また、パフォーマンスデータなどを分析することで、システムのボトルネックを特定し、改善につなげることもできます。

7.マイクロサービスのメリット・デメリット

ここではマイクロサービスのメリットとデメリットの両方をご紹介します。メリットデメリットを良く理解して、マイクロサービスのたくさんの魅力を有効活用していきましょう。

開発スピードUP!スケーラブル!障害に強い!

  • 開発スピードUP!:サービスごとに独立して開発できるから、大人数での開発もスムーズに進みます。 例えば、機能追加や修正も影響範囲が限定されるので、迅速に対応できます。
  • スケーラブル!:負荷の高いサービスだけを増強できるから、無駄なコストをかけずにシステムを拡張できます。 例えば、年末年始のセールでアクセスが集中するECサイトでも、必要な部分だけスケールアップすればOK!
  • 障害に強い!:一つのサービスに問題が発生しても、システム全体が停止することはありません。 例えば、決済サービスに障害が発生しても、商品検索やカート機能は問題なく利用できます。

複雑性、運用コスト、分散トランザクション…課題もあるよ

メリットがたくさんあるマイクロサービスですが、もちろんデメリットも存在します。

  • 複雑性:サービスの数が増えると、システム全体の把握が難しくなります。
  • 運用コスト:各サービスのデプロイや監視など、運用コストが増加する可能性があります。
  • 分散トランザクション:複数のサービスにまたがるデータの整合性を保つのが難しくなります。

これらの課題を解決するためには、適切な設計やツール選定、そしてチーム内でのコミュニケーションが重要になります。

関連サービス:リファクタリング・リアーキテクチャ

まとめ

ここまで読んで、「マイクロサービスって、なんか難しそう…」と感じた人もいるかもしれません。でも、安心してください!この記事で解説したように、マイクロサービスには、

  • 開発スピードUP!
  • スケーラブル!
  • 障害に強い!

といった、たくさんのメリットがあります。

もちろん、複雑さや運用コストといった課題もありますが、適切な設計とツール、そしてチームワークで必ず乗り越えることができます。

クラウドネイティブな時代、システム開発の現場は常に変化しています。マイクロサービスアーキテクチャは、そんな変化に柔軟に対応できる、まさに「これからのシステム開発に必須」の設計手法です。

この記事が、あなたのマイクロサービス理解の一助となり、未来のシステム開発をリードする一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。

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この記事を書いた人

株式会社APPSWINGBY

株式会社APPSWINGBY マーケティング

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APPSWINGBY CTO川嶋秀一

株式会社APPSWINGBY
CTO 川嶋秀一

動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
Webシステム開発からアプリ開発、AI、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトを担当。C,C++,C#,JavaScript,TypeScript,Go,Python,PHP,Vue.js,React,Angular,Flutter,Ember,Backboneを中心に開発。お気に入りはGo。