タブーサーチとは

タブーサーチ(Tabu Search)とは、局所探索法の枠組みに基づくメタヒューリスティック手法の一つであり、最適化問題において局所最適解に陥ることを避けるために、「タブーリスト」を用いて探索の多様性を確保するアルゴリズムのこと。

タブーサーチ(Tabu Search)は、組合せ最適化問題や連続最適化問題の近似解を探索するためのメタヒューリスティック手法の一つです。局所探索(Local Search)をベースとしながらも、単純な局所探索が陥りやすい局所最適解からの脱出を可能にし、より大域的な最適解を見つける能力を高めることを特徴とします。この手法は、一時的に「禁止された手(タブー)」を記憶する「タブーリスト」を用いることで、探索経路の多様性を確保し、同じ解を繰り返し探索することを防ぎます。

タブーサーチ の基本的な概念

最適化問題の多くは、非常に広大な探索空間を持ち、厳密な最適解を見つけることが計算量的に困難な場合があります。このような場合、ヒューリスティック手法やメタヒューリスティック手法が用いられます。局所探索は、現在の解の近傍を探索し、より良い解が見つかればそれに移動するというシンプルな戦略を取りますが、周囲にこれ以上良い解がない「局所最適解」に到達すると、それ以上探索を進めることができなくなります。

タブーサーチは、この局所最適解からの脱出を可能にするために、以下の二つの主要なメカニズムを導入しています。

  1. タブーリスト(Tabu List): 探索の履歴を記憶するためのリストです。具体的には、最近行った操作や、移動によって訪れた特徴的な解の要素を一定期間「タブー(禁止)」とします。これにより、直前の探索経路を逆戻りしたり、同じサイクルを繰り返したりすることを防ぎ、探索が停滞するのを回避します。タブーリストの長さは、アルゴリズムの性能に大きな影響を与えます。
  2. アスピレーション基準(Aspiration Criterion): タブーリストによって禁止されている操作であっても、もしその操作を行うことで「タブーを破るに値する」非常に良い解(現在の最良解よりも大幅に良い解など)が得られる場合に、そのタブーを一時的に解除して探索を続行することを許容するルールです。これにより、探索の柔軟性を高め、良い解を見逃すリスクを減らします。

タブーサーチ のアルゴリズムの概要

タブーサーチの一般的なアルゴリズムは以下のステップで進められます。

  1. 初期解の生成: まず、何らかの方法で初期解 Scurrent​ を生成します。この解が現在の最良解 Sbest​ となります。タブーリストは空にします。
  2. 近傍解の生成: 現在の解 Scurrent​ の近傍(隣接する解の集合)N(Scurrent​) を生成します。
  3. 最良の近傍解の選択: 近傍解 Sneighbor​∈N(Scurrent​) の中から、タブーリストに載っておらず、かつ目的関数値を最も改善する(または最も悪化させない)解 S′ を選択します。
    • もし S′ がタブーリストに載っていても、アスピレーション基準を満たす場合は、その解 S′ を選択します。
  4. 解の更新: Scurrent​ を S′ に更新します。
  5. タブーリストの更新: S′ を生成するために行った操作(または S′ 自体)をタブーリストに追加し、最も古いタブー要素をリストから削除します。
  6. 最良解の更新: もし Scurrent​ が Sbest​ よりも良い解であれば、Sbest​ を Scurrent​ に更新します。
  7. 終了条件のチェック: 事前に定められた反復回数、計算時間、目的関数値の改善停滞などの終了条件が満たされるまで、ステップ2から繰り返します。
  8. 結果の出力: 最終的な最良解 Sbest​ を出力します。

タブーサーチ の利点と課題

利点:

  • 局所最適解からの脱出: タブーリストとアスピレーション基準により、探索が局所最適解で停滞するのを効果的に防ぎます。
  • 探索の多様性: 同じ経路を繰り返すことを防ぎ、探索空間のより広い範囲を探索する能力を持ちます。
  • 汎用性: 多様な組合せ最適化問題(例:巡回セールスマン問題、スケジューリング問題、ナップサック問題)に適用可能です。

課題:

  • パラメータチューニング: タブーリストの長さやアスピレーション基準の設定など、アルゴリズムの性能を左右するパラメータの適切なチューニングが必要です。これは問題によって異なり、試行錯誤が必要な場合があります。
  • 近傍構造の設計: 効率的かつ適切な近傍解の生成方法を設計することが重要です。近傍が小さすぎると探索が限定的になり、大きすぎると各反復の計算コストが増大します。
  • 計算コスト: 各反復で近傍解を評価するため、問題の規模によっては計算コストが高くなることがあります。

タブーサーチは、局所探索の枠組みにタブーリストとアスピレーション基準という強力なメカニズムを組み込むことで、最適化問題における局所最適解への陥りを回避し、より質の高い近似解を探索することを可能にするメタヒューリスティック手法です。その汎用性と効果的な探索能力により、巡回セールスマン問題やスケジューリング問題など、多くの複雑な組合せ最適化問題の解法として広く利用されています。適切なパラメータ設定と近傍構造の設計が、タブーサーチの性能を最大限に引き出す鍵となります。

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