テクニカルレビューとは

テクニカルレビュー(Technical Review)とは、技術的な成果物の品質と適合性を専門家が評価する体系的なプロセス

テクニカルレビュー(Technical Review)は、ソフトウェア開発、システム設計、ドキュメント作成など、技術的な成果物(ソースコード、設計書、仕様書、テスト計画書など)の品質、正確性、適合性、および標準や要件への準拠を、その分野の専門家が体系的に評価するプロセスです。これは、プロジェクトの早期段階で潜在的な問題や欠陥を発見し、手戻りによるコスト増大やプロジェクトの遅延を防ぐことを主な目的とします。

テクニカルレビュー の基本的な概念

テクニカルレビューは、単なる誤字脱字のチェックや表面的な確認に留まらず、成果物の背後にある技術的なロジック、アーキテクチャの妥当性、アルゴリズムの効率性、セキュリティ上の考慮事項、保守性、拡張性など、多岐にわたる側面を深く掘り下げて検証します。

主要な要素は以下の通りです。

  1. 目的:
    • 欠陥の早期発見と修正。
    • 技術的なリスクの特定と軽減。
    • 品質基準や設計原則への準拠の確認。
    • 知識共有とチーム内の技術力向上。
    • 一貫性と標準化の促進。
  2. 対象成果物:
    • 設計ドキュメント: システム設計書、データベース設計書、ネットワーク構成図など。
    • ソースコード: プログラムの各モジュール、関数、クラスなど。
    • テスト関連ドキュメント: テスト計画書、テストケース、テスト結果報告書など。
    • 要件定義書、仕様書: 機能要件、非機能要件など。
    • アーキテクチャ設計: システム全体のアーキテクチャ図や説明。
  3. 参加者:
    • 作成者(Author): レビュー対象の成果物を作成した者。
    • レビュアー(Reviewer): 成果物を評価する技術専門家。通常、成果物の作成者とは異なる第三者が複数名参加します。
    • モデレーター(Moderator): レビュー会議の進行を管理し、議論が建設的かつ効率的に進むように調整する者(オプション)。
    • 記録者(Scribe): レビュー中に発見された問題点や決定事項を記録する者(オプション)。

テクニカルレビュー の種類とアプローチ

テクニカルレビューには、そのフォーマリティや実施方法に応じていくつかの種類があります。

  1. ウォークスルー(Walkthrough): 非公式または半公式なレビュー形式で、成果物の作成者が少人数のチームメンバーや関係者に対して、成果物の内容を説明し、フィードバックを求めるものです。作成者主導で行われ、主に理解を深めることと、初期の段階での問題発見を目的とします。
  2. インスペクション(Inspection): 最も公式で厳格なレビュー形式であり、定義されたプロセスとチェックリストに基づいて、訓練されたレビュアーが体系的に成果物を検査します。欠陥の発見に特化しており、モデレーターが進行を管理し、記録者が詳細を記録します。
    • プロセス:
      1. 計画: レビューの目的、範囲、参加者の決定。
      2. 概要会議: 全員で成果物の目的とレビューのプロセスを共有。
      3. 準備: レビュアーが個別に成果物を詳細に確認し、欠陥を特定。
      4. レビュー会議: レビュアーが集まり、発見された欠陥を報告・議論。モデレーターが進行。
      5. 手直し: 作成者が欠陥を修正。
      6. フォローアップ: 修正が正しく行われたかを確認。
  3. ピアレビュー(Peer Review): 同僚(ピア)同士が互いの成果物をレビューする形式です。ウォークスルーよりは構造化されているものの、インスペクションほど厳格ではないことが多いです。コードレビューツールなどを用いて非同期的に実施されることも増えています。
  4. 形式レビューと非形式レビュー:
    • 形式レビュー: 事前に定義された手順、役割分担、記録、報告プロセスを持つレビュー。インスペクションが典型的です。
    • 非形式レビュー: より柔軟で、プロセスが厳密に定義されていないレビュー。ウォークスルーやカジュアルなペアプログラミングなどがこれに当たります。

テクニカルレビュー の実施における成功要因

テクニカルレビューを効果的に実施するためには、以下の要素が重要です。

  • 明確な目的設定: 何をレビューするのか、何を目指すのかを明確にする。
  • 適切な参加者の選定: 成果物に関連する専門知識を持つレビュアーを選定する。
  • 準備の徹底: レビュアーが事前に成果物を十分に理解し、問題点を洗い出しておく時間を与える。
  • 建設的な雰囲気: レビューは成果物に対する評価であり、作成者個人を攻撃する場ではないことを明確にする。批判的ではなく、改善提案を重視する。
  • 効果的なモデレーション: 議論が脱線せず、生産的に進むようにモデレーターが介入する。
  • 記録とフォローアップ: 発見された問題点を正確に記録し、それらが適切に修正されたことを確認するプロセスを設ける。
  • チェックリストの活用: 経験や過去の教訓を基にしたチェックリストを用いることで、レビューの網羅性と一貫性を高める。

テクニカルレビューは、技術的な成果物の品質と適合性を専門家が体系的に評価するプロセスです。ソースコード、設計書、テスト計画書など多岐にわたる成果物を対象とし、欠陥の早期発見、リスク軽減、品質向上、知識共有を目的とします。

ウォークスルー、インスペクション、ピアレビューといった多様なアプローチが存在し、プロジェクトの特性や要求されるフォーマリティに応じて選択されます。効果的なレビュー実施のためには、明確な目的設定、適切な参加者の選定、十分な準備、建設的な議論、そして確実なフォローアップが不可欠であり、これらを遵守することで、プロジェクト全体の成功に大きく寄与します。

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