メモリリークとは

メモリリーク(Memory Leak)とは?プログラムが確保したメモリ領域を、使用しなくなった後も解放せず、結果として利用可能なシステムメモリを徐々に消費し続けてしまう不具合のこと。

メモリリーク(Memory Leak)は、コンピュータプログラムが動的にメモリを確保(アロケート)した後、そのメモリが必要なくなったにもかかわらず、適切に解放(デアロケート)されずにシステム内に残存してしまうソフトウェアの不具合です。この現象が継続的に発生すると、プログラムが消費するメモリ量が時間とともに増加し続け、最終的にはシステム全体のパフォーマンス低下、他のアプリケーションへの影響、そして最悪の場合、システムクラッシュやフリーズを引き起こす原因となります。


メモリリーク の基本的な概念

現代の多くのプログラミング言語では、プログラムがデータを一時的または長期的に保存するために、実行時にシステムからメモリ領域を要求します。このメモリ領域は、使用が終わればシステムに返却(解放)されることが期待されます。メモリリークは、この「解放」のプロセスが適切に行われない場合に発生します。

: C言語のような手動メモリ管理を行う言語では、malloc()関数でメモリを確保したら、必ずfree()関数で解放する必要があります。もしfree()を呼び忘れると、その確保したメモリはプログラムが終了するまで解放されず、リークとなります。

 \text{int*} \text{ptr} = (\text{int*}) \text{malloc}(\text{sizeof}(\text{int}) * 100); // ... ptr を使用 ... // free(ptr); // これを忘れるとメモリリーク

JavaやPythonのようなガベージコレクション(Garbage Collection, GC)を持つ言語では、開発者が明示的にメモリを解放する必要は通常ありません。GCが不要になったメモリ領域を自動的に回収してくれるからです。しかし、GCがあってもメモリリークは発生し得ます。これは、オブジェクトが論理的には不要になったにもかかわらず、プログラム内のどこかから参照され続けているために、GCがそのオブジェクトを「まだ必要」と判断して回収できない場合に起こります。


メモリリーク が発生する主な原因

メモリリークの原因は、プログラミング言語や環境によって様々ですが、一般的なものとしては以下が挙げられます。

  1. 手動メモリ管理の誤り: CやC++など、開発者が明示的にメモリを確保・解放する必要がある言語で最もよく見られます。
    • メモリ解放関数の呼び出し忘れ(例: mallocに対するfreeの忘れ)。
    • 確保したメモリへのポインタを失ってしまう(例: ポインタを上書きしてしまい、元のアドレスを参照できなくなる)。
    • メモリを二重に解放してしまう「二重解放(Double Free)」や、解放済みのメモリにアクセスしてしまう「解放済みメモリ使用(Use-After-Free)」などの、関連するバグもメモリの不正利用に繋がります。
  2. ガベージコレクション言語での参照の保持: Java、Python、JavaScriptなどのGC言語では、オブジェクトが不要になっても、何らかの参照が残り続けているためにGCの対象とならない場合にリークします。
    • イベントリスナーの登録解除忘れ: UIイベントリスナーやコールバック関数を登録した後、不要になった時点で解除し忘れると、イベントソースがリスナーオブジェクトを参照し続け、GC対象外となる。
    • キャッシュの無限増大: キャッシュ機構を実装する際に、キャッシュのサイズ制限を設けなかったり、古いデータを適切に削除しなかったりすると、キャッシュが肥大化し続ける。
    • Staticなコレクションの誤用: アプリケーション全体で共有されるStaticな(静的な)コレクション(リスト、マップなど)にオブジェクトを追加し続け、削除しないと、そのオブジェクトはGCされない。
    • クロージャによる変数の補足: JavaScriptなどで、クロージャが外部スコープの変数を参照し続けることで、その変数がGCされない。
  3. リソースの解放忘れ: メモリ以外にも、ファイルハンドル、データベース接続、ネットワークソケットなどのシステムリソースが適切にクローズされずに残存し、リソースリークを引き起こすことがあります。これらはメモリリークと区別されますが、同様にシステムリソースを枯渇させる原因となります。

メモリリーク がもたらす影響

メモリリークは、プログラムやシステムに対して徐々に、しかし確実に悪影響を及ぼします。

  • パフォーマンスの低下: 利用可能なメモリが減少することで、OSがディスクへのスワップ(ページング)を頻繁に行うようになり、I/O処理が増加し、システムの応答速度が著しく低下します。
  • アプリケーションのクラッシュ: プログラムがさらにメモリを要求しても、システムに割り当てられるメモリが不足し、メモリ不足エラー(Out Of Memory, OOM)が発生してアプリケーションが強制終了します。
  • システム全体の不安定化: 深刻なメモリリークは、OS全体のメモリを枯渇させ、他のアプリケーションの動作に影響を与えたり、システム全体がフリーズしたり、再起動を余儀なくされたりする原因となります。
  • サービスの中断: ウェブサービスやサーバーアプリケーションの場合、メモリリークによりサービスが停止し、ユーザーへの提供が中断される可能性があります。

メモリリーク の検出と対策

メモリリークは、多くの場合、直接的なエラーメッセージを伴わないため、発見が難しい不具合の一つです。

  1. 定期的な監視: システムやアプリケーションのメモリ使用量を定期的に監視し、異常な増加がないかを確認します。
  2. プロファイリングツールの利用: メモリプロファイラ(例: Valgrind (C/C++), JProfiler/VisualVM (Java), memory_profiler (Python))を使用して、プログラム実行中のメモリ確保・解放の状況を詳細に分析し、リーク箇所を特定します。
  3. コードレビュー: メモリ管理に関するベストプラクティスに従っているか、リソースが適切に解放されているかをコードレビューで確認します。
  4. 自動テスト: 長期実行テストや負荷テストを行い、メモリ使用量の増加傾向がないかをチェックします。
  5. 言語機能の活用: C++のスマートポインタ(std::unique_ptr, std::shared_ptr)のように、RAII (Resource Acquisition Is Initialization) の原則に基づいて自動的にリソースを解放する機能を利用します。

 \text{std::unique_ptr<int> \text{ptr}(new int[100]); // スコープを抜けると自動的に解放される}

  1. Javaのtry-with-resources文のように、リソースの自動クローズを保証する構文を使用します。

メモリリークは、プログラムが確保したメモリ領域を適切に解放せず、結果としてシステムメモリを徐々に消費し続けてしまう深刻な不具合です。手動メモリ管理の誤りや、ガベージコレクション言語における参照の保持などが主な原因となり、システムパフォーマンスの低下、アプリケーションのクラッシュ、さらにはシステム全体の不安定化を招きます。定期的な監視、プロファイリングツールの利用、コードレビュー、適切な言語機能の活用などにより、メモリリークを早期に検出・防止することが、安定した高品質なソフトウェアシステムを維持するために不可欠です。

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