多項式時間アルゴリズムとは

多項式時間アルゴリズム(Polynomial-Time Algorithm)とは、アルゴリズムの計算量が、入力サイズの多項式で表現されるオーダーに抑えられるアルゴリズムのこと。

多項式時間アルゴリズム(たこうしきじかんアルゴリズム、Polynomial-Time Algorithm)は、計算理論およびアルゴリズムの分野において、その計算量(処理にかかる時間や必要なメモリ量)が、問題の入力サイズに対して多項式関数で表現できるオーダーに抑えられるアルゴリズムを指します。具体的には、入力サイズを n としたとき、計算量が O(nk) (k は任意の非負の定数)で表されるアルゴリズムが多項式時間アルゴリズムと呼ばれます。このようなアルゴリズムは、入力サイズが増加しても、計算量が急激に増加することがないため、効率的なアルゴリズムであると一般的に考えられています。

多項式時間アルゴリズム の基本的な概念

アルゴリズムの効率性を評価する際、「計算量(Computational Complexity)」という概念が用いられます。これは、アルゴリズムが問題を解くために必要な資源(主に時間や空間(メモリ))の量を、入力サイズ n の関数として表現するものです。

時間計算量(Time Complexity)の場合、入力サイズ n が大きくなったときの処理時間の増加傾向を、漸近的記法(Big O記法)を用いて表します。

  • 多項式時間: 処理時間が O(nk) で表される場合(例:O(n),O(n2),O(n3) など)。k が定数である限り、たとえ k=100 であったとしても、そのアルゴリズムは数学的には多項式時間アルゴリズムに分類されます。
  • 指数時間: 処理時間が O(2n),O(n!) のように指数関数で表される場合。入力サイズ n が少し増加するだけで、処理時間が爆発的に増加するため、大規模な問題に対しては非現実的な計算時間を要します。

多項式時間アルゴリズムは、指数時間アルゴリズムと比較して、入力サイズが大きくなっても計算時間が比較的緩やかに増加するため、「現実的に解ける問題」や「効率的なアルゴリズムが存在する問題」の指標とされています。

多項式時間アルゴリズム の例

多くの実用的な問題に対するアルゴリズムは、多項式時間アルゴリズムです。

  • ソート(並べ替え):
    • バブルソート: O(n2)
    • マージソート、クイックソート: O(nlogn) これらはいずれも多項式時間アルゴリズムです。
  • 探索:
    • 線形探索: O(n)
    • 二分探索: O(logn) これらも多項式時間アルゴリズムです。
  • 行列の乗算: サイズの行列同士の乗算は、単純な方法で O(n3) の計算量を持ちます。より高速なアルゴリズムも存在しますが、いずれも多項式時間です。
  • 最短経路問題: ダイクストラ法など、多くの最短経路アルゴリズムは多項式時間です。

多項式時間アルゴリズム とP/NP問題

計算複雑性理論において、多項式時間アルゴリズムの概念は、PとNPの問題という重要な未解決問題と深く関連しています。

  • Pクラス(Polynomial Time): 決定問題(Yes/Noで答えられる問題)のうち、多項式時間アルゴリズムで解ける問題のクラスです。Pクラスに属する問題は、「効率的に解ける問題」とみなされます。
  • NPクラス(Non-deterministic Polynomial Time): 決定問題のうち、解が与えられたときに、その解が正しいかどうかを多項式時間で検証できる問題のクラスです。NPクラスには、現在のところ多項式時間アルゴリズムが見つかっていない問題(NP完全問題など)も含まれます。

「P = NPか?」という問題は、NPクラスに属する問題の全てがPクラスにも属するのか、つまり、NP完全問題のような難しい問題も多項式時間で解けるアルゴリズムが存在するのか、という計算機科学における最も重要な未解決問題の一つです。

多項式時間アルゴリズム の限界と現実

数学的に多項式時間アルゴリズムであっても、実用上常に効率的とは限りません。例えば、O(n100) の計算量を持つアルゴリズムは、理論的には多項式時間ですが、現実の入力サイズでは指数時間アルゴリズムと大差なく、実用的ではありません。

しかし、理論的な効率性の基準として多項式時間が重要視されるのは、以下の理由からです。

  • 多項式時間の増加は、指数時間の増加に比べて圧倒的に緩やかである。
  • 多くの場合、多項式時間アルゴリズムは実用的な性能を持つ。
  • アルゴリズムの設計や解析において、数学的な取り扱いが容易である。

多項式時間アルゴリズムは、その計算量が入力サイズの多項式関数で表現されるオーダーに抑えられるアルゴリズムであり、効率的なアルゴリズムの指標とされています。入力サイズが増加しても計算時間が爆発的に増大しないため、多くの実用的な問題に対して適用可能です。計算複雑性理論のP/NP問題においても中心的な概念であり、アルゴリズムの効率性を評価し、問題の計算的な困難さを理解する上で不可欠な概念です。

関連用語

アルゴリズム | 今更聞けないIT用語集
NP困難 | 今更聞けないIT用語集
AIソリューション

お問い合わせ

システム開発・アプリ開発に関するご相談がございましたら、APPSWINGBYまでお気軽にご連絡ください。

APPSWINGBYの

ソリューション

APPSWINGBYのセキュリティサービスについて、詳しくは以下のメニューからお進みください。

システム開発

既存事業のDXによる新規開発、既存業務システムの引継ぎ・機能追加、表計算ソフトによる管理からの卒業等々、様々なWebシステムの開発を行っています。

iOS/Androidアプリ開発

既存事業のDXによるアプリの新規開発から既存アプリの改修・機能追加まで様々なアプリ開発における様々な課題・問題を解決しています。


リファクタリング

他のベンダーが開発したウェブサービスやアプリの不具合改修やソースコードの最適化、また、クラウド移行によってランニングコストが大幅にあがってしまったシステムのリアーキテクチャなどの行っています。