特徴点マッチングとは

特徴点マッチング(Feature Point Matching)とは?複数の画像間で共通する特徴的な点(特徴点)を抽出し、それらの対応関係を識別するコンピュータビジョンの手法のこと。

特徴点マッチング(とくちょうてんマッチング、Feature Point Matching)は、コンピュータビジョン分野における基本的な技術の一つであり、複数の異なる画像(または動画の連続するフレーム)の中から、画像間の対応関係を持つ「特徴点(Feature Point)」を抽出し、それらがどの点と点とで対応するかを識別するプロセスを指します。この技術は、画像間の幾何学的変換の推定、物体認識、パノラマ画像の生成、三次元復元など、多岐にわたる応用において不可欠な役割を果たします。

特徴点マッチング の基本的な概念

画像には、多くの情報が含まれていますが、その全てが画像間の対応を見つけるのに適しているわけではありません。特徴点とは、画像内で際立った特徴を持つ点や領域のことで、例えば、画像の角(コーナー)、エッジの交点、またはテクスチャが豊富な部分などが挙げられます。これらの特徴点は、画像が回転したり、スケールが変更されたり、視点が変化したりしても、比較的安定して検出できる性質を持つことが理想的です。

特徴点マッチングのプロセスは、大きく以下のステップに分けられます。

  1. 特徴点検出(Feature Detection): 各画像から、後続のステップで比較・照合可能な、安定した局所的な特徴点候補を抽出します。
  2. 特徴量記述(Feature Description): 検出された各特徴点について、その周囲の画素値のパターンや勾配方向といった情報に基づいて、その特徴点を数値的に表現したベクトル(「特徴量記述子」または「ディスクリプタ」)を生成します。この記述子は、他の画像中の特徴点と比較するために用いられます。
  3. 特徴点マッチング(Feature Matching): 一方の画像の特徴量記述子と、もう一方の画像の特徴量記述子を比較し、類似性の高いペア(対応点)を見つけ出します。通常、記述子間の距離(例:ユークリッド距離、ハミング距離)を計算し、距離が最も近いものを対応点とします。
  4. 外れ値除去(Outlier Removal): マッチングされた特徴点の中には、誤った対応関係(外れ値)が含まれることがあります。これらの外れ値を、RANSAC(Random Sample Consensus)などのロバスト推定手法を用いて除去し、より正確な対応点集合を抽出します。

代表的な特徴点と記述子

様々な特徴点検出・記述手法が提案されていますが、代表的なものをいくつか挙げます。

  • SIFT (Scale-Invariant Feature Transform): 画像スケールや回転に対して不変性を持つ特徴点(キーポイント)を検出し、その周囲の勾配ヒストグラムに基づいて特徴量記述子を生成します。非常に頑健で広く使われています。
  • SURF (Speeded Up Robust Features): SIFTに似ていますが、計算を高速化したバージョンです。ヘシアン行列の近似や積分画像を用いることで、高速な処理を実現しています。
  • ORB (Oriented FAST and Rotated BRIEF): FAST検出器で特徴点を検出し、BRIEF記述子を回転不変になるように修正したものです。SIFTやSURFよりも高速に動作し、リアルタイムアプリケーションに適しています。
  • AKAZE (Accelerated-KAZE): 非線形スケール空間(画像のエッジ付近をシャープに保ちつつ、平坦な領域を平滑化する)を用いた特徴点検出・記述手法です。高画質画像に対して優れた性能を発揮します。
  • BRISK (Binary Robust Invariant Scalable Keypoints): バイナリ記述子を用いることで、高速な特徴量マッチングを可能にします。

特徴量記述子間の距離

特徴量記述子間の類似度を測るためには、様々な距離尺度が用いられます。

  • ユークリッド距離(Euclidean Distance): 連続値の特徴量記述子(例:SIFT, SURF)に対してよく用いられます。2つの記述子ベクトル [d11​,d12​,…,d1n​] と [d21​,d22​,…,d2n​] の間のユークリッド距離は次式で計算されます。

 D_{Euclidean} = \sqrt{\sum_{i=1}^{n} (d_{1i} - d_{2i})^2}

  • ハミング距離(Hamming Distance): バイナリ記述子(例:ORB, BRIEF, BRISK)に対して用いられます。2つのバイナリ記述子間でビットが異なる箇所の数を数えます。

特徴点マッチング の応用例

特徴点マッチングは、コンピュータビジョン分野の多岐にわたるアプリケーションの基盤技術となっています。

  • 画像スティッチング(Image Stitching): 複数のオーバーラップする画像を結合して、パノラマ画像や広角画像を生成します。
  • 物体認識・追跡(Object Recognition/Tracking): データベースに登録された物体と、入力画像中の物体を照合したり、動画内で特定の物体を追跡したりします。
  • 三次元復元(3D Reconstruction)/ SLAM (Simultaneous Localization and Mapping): 異なる視点から撮影された複数の画像から、シーンの三次元構造を復元したり、ロボットが自己位置を推定しつつ周囲の環境地図を構築したりします。
  • 拡張現実(Augmented Reality, AR): 現実世界に仮想オブジェクトを重ね合わせる際に、現実世界の画像を認識し、仮想オブジェクトを正確に配置するために利用されます。
  • 画像検索(Image Retrieval): 与えられた画像と類似する画像をデータベースから検索します。

特徴点マッチングは、複数の画像間で共通する特徴的な点(特徴点)を検出し、その特徴を数値化した記述子を用いて対応関係を識別するコンピュータビジョンの重要な手法です。SIFT, SURF, ORBなどの様々な特徴点検出・記述手法と、ユークリッド距離やハミング距離などの類似度尺度を組み合わせて行われます。画像スティッチング、物体認識、三次元復元、ARなど、多岐にわたる応用分野の基盤技術であり、現代の視覚情報処理システムにおいて不可欠な役割を担っています。

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