インクリメンタルロードとは
インクリメンタルロードは、データベースやデータウェアハウスにおいて、データ全体を一度に読み込むのではなく、前回処理した時以降に発生した差分や変更分のみを抽出してロードする処理方式のことであり、大量データの処理時間を大幅に短縮し、システムへの負荷を最小限に抑え、処理の効率とリアルタイム性を向上させるためのデータ連携技術のことです。
インクリメンタルロードの概要と必要性
インクリメンタルロード(Incremental Load)は、データ統合プロセス、特にETL(Extract, Transform, Load)やELTパイプラインにおいて、効率性を追求するために不可欠な手法です。
データウェアハウスや分析基盤では、業務システム(ソースシステム)から日々膨大なデータが転送されます。この際、毎回データ全体(フルロード)を転送し、ターゲット側で更新処理を行うことは、以下の課題を引き起こします。
- 処理時間の増大: データの増加に伴い、ロードにかかる時間が増大し、定められた時間内(バッチウィンドウ)で処理が完了しなくなる可能性があります。
- システム負荷の集中: ソースシステムおよびネットワークに高い負荷がかかり、業務システム側のパフォーマンスに悪影響を与える可能性があります。
インクリメンタルロードは、このフルロードの非効率性を克服するために導入されます。ターゲットシステム側では、最新の変更データのみが既存のデータに追加(INSERT)されたり、既存のレコードが更新(UPDATE)されたりする形で処理されます。
主な目的は、最小限のデータ転送量でターゲットシステムを最新の状態に保ち、データ更新の頻度を高めることです。
インクリメンタルロードを実現する主要な手法
インクリメンタルロードを実現するためには、ソースシステム側で「いつ、どのデータが、どのように変更されたか」を正確に識別する仕組みが必要です。
1. タイムスタンプ(更新日時)による識別
最も一般的な手法です。ソーステーブルの各レコードに最終更新日時を示すタイムスタンプ列を設けておきます。
- 手順: 抽出処理の際、前回ロードが完了した時刻を基準点とし、その時刻以降にタイムスタンプが更新されたレコードのみを抽出します。
- 課題: 削除(
DELETE)されたレコードを追跡できないため、別途削除処理を扱う仕組みが必要となる場合があります。
2. シーケンス番号や変更フラグによる識別
タイムスタンプの代わりに、レコードの変更が発生するたびに増加するシーケンス番号や、変更されたことを示すフラグ列(例:is_modified)を利用する手法です。
- 手順: 前回ロードした最後のシーケンス番号を覚えておき、それより大きい番号を持つレコードのみを抽出します。
- 利点: タイムスタンプの粒度よりも確実に変更順序を追跡できます。
3. CDC(Change Data Capture)技術の利用
CDCは、データベースのトランザクションログやレプリケーションログを監視することで、テーブルレベルではなく、行レベルの変更(INSERT、UPDATE、DELETE)をリアルタイムに近い形でキャプチャする高度な技術です。
- 特徴: CDCは、データが「どのように」変更されたか(例:更新前の値と更新後の値)という詳細な変更履歴も提供するため、ターゲットシステムでの処理を最も効率的に行えます。
- 応用: ストリーミングETLやリアルタイム分析基盤の構築に不可欠な技術です。
ロード方式の選択と考慮事項
インクリメンタルロードを採用する際、システムの要件に基づいて「どの程度の頻度で」「どのように」データを処理するかを決定する必要があります。
| ロード方式 | 説明 | データ抽出対象 | 主な適用シーン |
| フルロード | データ全体を毎回抽出・ロードする。 | 全データ | 初回ロード時、またはデータ量が非常に少ない場合。 |
| インクリメンタルロード | 差分データのみを抽出・ロードする。 | 変更されたデータのみ | 大量データが頻繁に更新される分析基盤。 |
インクリメンタルロードを導入する際の最大の注意点は、データの欠落や重複が発生しないよう、変更点を正確にトラッキングする仕組みを担保することです。特に、ソースシステムでの障害やネットワークの瞬断が発生した場合の処理再開ロジック(リカバリ処理)を、厳密に設計する必要があります。
関連用語
お問い合わせ
システム開発・アプリ開発に関するご相談がございましたら、APPSWINGBYまでお気軽にご連絡ください。
APPSWINGBYの
ソリューション
APPSWINGBYのセキュリティサービスについて、詳しくは以下のメニューからお進みください。
システム開発
既存事業のDXによる新規開発、既存業務システムの引継ぎ・機能追加、表計算ソフトによる管理からの卒業等々、様々なWebシステムの開発を行っています。
iOS/Androidアプリ開発
既存事業のDXによるアプリの新規開発から既存アプリの改修・機能追加まで様々なアプリ開発における様々な課題・問題を解決しています。
リファクタリング
他のベンダーが開発したウェブサービスやアプリの不具合改修やソースコードの最適化、また、クラウド移行によってランニングコストが大幅にあがってしまったシステムのリアーキテクチャなどの行っています。

ご相談・お問い合わせはこちら
APPSWINGBYのミッションは、アプリでビジネスを加速し、
お客様とともにビジネスの成功と未来を形作ること。
私達は、ITテクノロジーを活用し、様々なサービスを提供することで、
より良い社会創りに貢献していきます。
T関する疑問等、小さなことでも遠慮なくお問合せください。3営業日以内にご返答致します。

ご相談・お問合せはこちら
APPSWINGBYのミッションは、アプリでビジネスを加速し、お客様とともにビジネスの成功と未来を形作ること。
私達は、ITテクノロジーを活用し、様々なサービスを提供することで、より良い社会創りに貢献していきます。
IT関する疑問等、小さなことでも遠慮なくお問合せください。3営業日以内にご返答させて頂きます。