インターコネクトとは
インターコネクトは、コンピュータシステム内の異なるコンポーネント間、または複数のシステム間で、データや信号を伝達するための接続技術、配線、およびプロトコル全体のことであり、システム全体の性能やスケーラビリティ、効率を決定づける、内部および外部の高速な通信路のことです。
インターコネクトの概要と種類
インターコネクト(Interconnect)は、広範なIT分野で使用される用語であり、データの流れや通信の観点から、システムを構成する要素を接続するあらゆる手段を指します。その役割は、情報のボトルネックを解消し、コンポーネントが効率的に連携できるようにすることです。
インターコネクトは、その接続のスコープに応じて、大きく二つに分類されます。
1. システム内部のインターコネクト
単一のコンピュータやサーバー内部におけるコンポーネント間の通信路を指します。
- CPUとメモリ: CPUとメインメモリ(DRAM)の間を接続するバスやインターフェース(例:IntelのQuickPath Interconnect (QPI) や Ultra Path Interconnect (UPI)、AMDのInfinity Fabric)。
- CPUと周辺機器: CPUとGPU、ストレージ、ネットワークカードなどの高速な周辺機器を接続するインターフェース(例:PCI Express (PCIe))。
2. システム間のインターコネクト
複数のサーバー、ストレージ、またはノードを接続し、クラスターやデータセンター全体を構成するための通信路を指します。特にHPC(High-Performance Computing、高性能計算)やAI(人工知能)の分野で重要性が増しています。
- クラスターインターコネクト: 大規模な並列計算のためにノード間を接続する専用ネットワーク(例:InfiniBand、Omni-Path)。
- データセンターインターコネクト(DCI): 離れたデータセンター間を接続し、データ複製やディザスタリカバリを実現する高速な通信リンク。
主な目的は、システム内のコンポーネントが、その性能を最大限に発揮できるように、低遅延(Latency)かつ高帯域幅(Bandwidth)な通信環境を提供することです。
高性能計算(HPC)における重要性
HPCや大規模な分散コンピューティング環境において、インターコネクトの性能は、個々のプロセッサの性能と同等か、それ以上に重要視されます。
1. 低遅延の要求
並列計算では、一つのタスクを完了するために、多数のノードが頻繁にデータを交換する必要があります。データ交換にかかる時間が長ければ、すべてのノードがアイドル状態(待ち状態)になり、全体の計算効率が大幅に低下します。
- インターコネクトの遅延は、ノード間の通信において、計算時間を支配する主要因となります。そのため、HPC用インターコネクトは、ネットワークの伝送遅延を極限まで低く抑えるように設計されています。
2. 高帯域幅とスケーラビリティ
大量のデータを短時間で転送するためには、高い帯域幅が必要です。また、ノード数の増加に対応できるよう、インターコネクト技術はスケーラブルでなければなりません。
- 例(InfiniBand): InfiniBandは、極めて低い遅延と高いスループットを提供するインターコネクト規格であり、大規模なAI学習クラスターやスーパーコンピューターで広く採用されています。これは、ノード間通信を高速化するために、専用のプロトコルとネットワークアダプタ(Host Channel Adapter, HCA)を使用します。
インターコネクトのプロトコル
インターコネクトは、物理的な配線だけでなく、その上で動作するプロトコルによっても定義されます。
- Ethernet: データセンターやクラウド環境で最も広く使用されているプロトコルです。近年では、RoCE(RDMA over Converged Ethernet)などの技術により、Ethernet上でInfiniBand並みの低遅延通信を実現する試みも進んでいます。
- PCI Express (PCIe): マザーボード上でコンポーネントを接続する高速シリアルバス規格です。CPUと高性能な周辺機器(GPUやNVMe SSDなど)とのデータ転送において、世代を重ねるごとに帯域幅を拡大し続けています。
- NVLink: NVIDIAによって開発された独自のインターコネクト技術であり、特に複数のGPU間、またはGPUとCPU間で極めて高速な通信を行うために設計されています。AIやディープラーニングの訓練におけるマルチGPU連携を効率化します。
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