エラーハンドリングとは

エラーハンドリングは、ソフトウェアの実行中に発生する予期せぬ事態(エラー、例外、障害)を検知し、適切に処理するためのプログラム設計手法、またはその実装機構のことであり、プログラムの異常終了やデータ破損を防ぎ、システムを安定的に稼働させ、利用者に対して適切な情報を提供するための堅牢性(ロバストネス)を確保する技術のことです。

エラーハンドリングの概要と必要性

エラーハンドリング(Error Handling)は、すべてのソフトウェア開発において品質と信頼性を左右する非常に重要な要素です。プログラムの実行環境では、ファイルの読み書き失敗、ネットワーク接続の切断、無効なユーザー入力、メモリ不足など、様々な理由で予期せぬ事態(例外、Exception)が発生する可能性があります。

エラーハンドリングの基本的な役割は、これらの例外が発生した際に、プログラムをクラッシュさせることなく、事前に定義された安全な手順(エラー処理ロジック)に処理の流れを移行させることです。これにより、システムは以下の目標を達成できます。

  1. 安定性の維持: 致命的な障害を回避し、システムの継続的な稼働を保証します。
  2. データの一貫性: 処理途中でエラーが発生した場合でも、データの不整合や破損を防ぎます(特にデータベース操作において重要)。
  3. ユーザーエクスペリエンスの向上: 利用者に対して、プログラムの内部エラーコードではなく、人間が理解できる適切なエラーメッセージを提供します。

主な目的は、システムを堅牢にし、予期せぬ入力や環境の変化に対して予測可能で信頼性の高い振る舞いを保証することです。

エラーハンドリングの主要な手法

エラーハンドリングを実装するための手法は、プログラミング言語の機能や設計パターンによって異なりますが、代表的な手法は以下の通りです。

1. 例外処理(Exception Handling)

現代のほとんどのオブジェクト指向言語(Java, C++, Python, C#など)で採用されている標準的な手法です。

  • 構造:
    • Try: エラーが発生する可能性のあるコードブロックを囲みます。
    • Catch: Tryブロック内で特定の種類の例外が発生した場合に、実行される処理(エラー処理ロジック)を記述します。
    • Finally: 例外が発生したかどうかにかかわらず、必ず実行されるべき後処理(リソースの解放など)を記述します。
  • 利点: 正常な処理の流れ(Tryブロック)と、エラー処理ロジック(Catchブロック)を明確に分離できるため、コードの可読性が高まります。

2. リターンコード(Return Codes)

C言語などの例外機構がない言語や、特定のAPI設計で用いられる手法です。

  • 構造: 関数が処理結果として、処理の成否を示す特定の整数値(リターンコード)を返します。
    • 0: 成功(または定義された成功コード)。
    • 非ゼロ: エラー(エラーの種類を示すコード)。
  • 利点: 関数が実行された結果が数値で明確に示されます。
  • 課題: 呼び出し側(クライアント)が毎回リターンコードを明示的にチェックする(例:if (func() != 0))必要があり、チェックを怠るとエラーを見逃す可能性があります。

3. エラーオブジェクトまたは列挙型の利用

Go言語やRust言語などの比較的新しい言語で採用されている手法です。

  • Go言語の例: 関数が、実際の戻り値と、その処理中に発生したエラーオブジェクト(通常は nil でない場合にエラー)の二つを返します。クライアントは戻り値がエラーかどうかをチェックすることが強制されます。
  • 利点: 例外のようにプログラムの実行フローを大きく変更することなく、エラーの発生を呼び出し元に通知し、簡潔に処理を記述できます。

エラーハンドリング設計の原則

効果的なエラーハンドリングを実践するためには、以下の原則が重要です。

  • エラーの早期発見と局所化: エラーが発生した場所で速やかにそれを検知し、影響範囲を最小限に抑える(局所的な処理を行う)。
  • エラーの再スロー(Re-throw): エラーを処理できない場合、より上位のレイヤーにエラーを再度投げることで、適切なコンテキストを持つ場所で最終的な処理が行われるようにする。
  • リソースの確実な解放: データベース接続、ファイルハンドル、ネットワークソケットなどのリソースは、エラー発生時にも Finally ブロックなどを用いて確実に閉じ、システムの安定性を保つ。
  • エラーメッセージの明確化: システムのデバッグを支援するため、エラーの種類、発生時刻、原因となった入力値などの詳細をログに記録する一方で、ユーザーには「操作に失敗しました」のような分かりやすいメッセージを提供し、内部の詳細情報を漏洩させないように注意する。

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