オーバーフィッティングとは

オーバーフィッティングは、機械学習モデルが、訓練データ(学習に用いたデータ)に対しては極めて高い精度を示す一方で、未知の新しいデータに対しては性能が著しく低下する現象のことであり、モデルがデータに内在する一般的なパターンではなく、訓練データ特有のノイズや外れ値までをも過剰に学習し、汎用性(一般化能力)を失ってしまう状態のことです。

オーバーフィッティングの概要と原理

オーバーフィッティング(Overfitting、過学習)は、機械学習、特にディープラーニングにおいて最も頻繁に遭遇し、モデルの性能評価において厳しく監視されるべき問題です。

モデルが複雑すぎたり、訓練データが少なすぎたりする場合に発生しやすい傾向があります。例えば、訓練データに存在するわずかなノイズや特定の事例のばらつきを、モデルが本質的なルールであると誤認して取り込んでしまいます。その結果、そのノイズが含まれていない、またはパターンが少し異なる新しいデータが入力された際に、モデルは正確な予測を行うことができなくなります。

オーバーフィッティングが発生したモデルの性能は、以下の関係性で観測されます。

  • 訓練誤差(Training Error): 極めて低い値を示す。
  • 検証誤差・テスト誤差(Validation/Test Error): 訓練誤差に比べて高い値を示す。

オーバーフィッティングの対義語として、アンダーフィッティング(Underfitting、学習不足)があります。これは、モデルが単純すぎたり、学習時間が短すぎたりして、データの本質的な構造すら捉えられていない状態を指します。

主な目的は、モデルの汎用性(一般化能力)を維持し、訓練データだけでなく、あらゆる将来のデータに対しても高い予測精度を発揮できるようにすることです。

オーバーフィッティングを特定する手法

オーバーフィッティングが発生しているかを定量的に把握し、適切な対策を講じるためには、データを分割して評価することが不可欠です。

1. データの分割

通常、モデルの学習には、データを以下の三つのセットに分割します。

  • 訓練データ(Training Set): モデルの重みとバイアスを調整するために使用されるデータ。
  • 検証データ(Validation Set): 訓練中にモデルのハイパーパラメータ(学習率、層の数など)を調整したり、オーバーフィッティングを監視したりするために使用されるデータ。モデル自体は学習しない。
  • テストデータ(Test Set): 訓練と検証が完了した後、最終的なモデルの性能(未知のデータに対する汎用性)を一度だけ評価するために使用される、全く新しいデータ。

2. 学習曲線の監視

訓練の進行に伴い、訓練データと検証データそれぞれの誤差(または精度)をプロットした学習曲線を監視します。

  • オーバーフィッティングの兆候: 訓練誤差が減少し続ける一方で、検証誤差がある時点から増加に転じた場合、その時点でオーバーフィッティングが始まっていると判断されます。

オーバーフィッティングを防ぐための対策

オーバーフィッティングを制御するために、様々な正則化(Regularization)技術が開発され、利用されています。

1. 正則化項の導入(L1/L2正則化)

目的関数(誤差関数)に、モデルの重みの大きさに応じたペナルティ項を追加します。これにより、重みが極端に大きな値をとることを防ぎ、モデルの複雑性を抑制します。

  • L2正則化(リッジ回帰): 重みの二乗和をペナルティ項とします。

L_{\text{total}} = L_{\text{data}} + \lambda \sum w^2

  • L1正則化(ラッソ回帰): 重みの絶対値の和をペナルティ項とします。

ここで $L_{\text{data}}$ は訓練データに対する通常の損失関数、$\lambda$ は正則化の強さを制御するハイパーパラメータ(正則化係数)です。

2. ドロップアウト(Dropout)

ニューラルネットワークの訓練中に、ランダムに選択された一部のニューロン(ノード)の出力を一時的にゼロに設定する手法です。

  • 効果: 各ニューロンが特定の入力に過度に依存することを防ぎ、結果として、より多くのニューロンが協調して動作するロバスト(堅牢)なモデルが形成されます。

3. データ拡張(Data Augmentation)

訓練データの量が不足している場合に、既存のデータにノイズを加えたり、画像を回転・反転・拡大縮小したりすることで、訓練データのバリエーションを人為的に増やし、モデルの汎用性を向上させます。

4. 早期終了(Early Stopping)

学習曲線が示すように、検証誤差が最小値に達した後、それ以上学習を継続するとオーバーフィッティングが悪化するため、検証誤差の増加が始まった時点で訓練を終了する手法です。

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