データアーキテクチャとは
データアーキテクチャ(Data Architecture)は、情報技術の分野において、組織のデータ資産の収集、整理、統合、保管、および利用を規定する全体的な構造と設計を指します。
これは、データがどのように生成され、保存され、処理され、アクセスされ、そして最終的にビジネス価値を生み出すために利用されるかを定義する青写真であり、データ戦略を実現するための基盤となります。
データアーキテクチャの基本的な概念
データアーキテクチャは、データのライフサイクル全体を考慮し、データの整合性、一貫性、可用性、セキュリティ、そしてスケーラビリティを確保することを目指します。
主な概念は以下の通りです。
- データ戦略との整合性: データアーキテクチャは、組織のビジネス戦略とデータ戦略をサポートするように設計される必要があります。データの利用目的(例:分析、運用、機械学習)に応じて、最適な構造と技術が選択されます。
- データモデル(Data Model): データの構造、関係性、および制約を抽象的に表現したものです。概念データモデル、論理データモデル、物理データモデルの3つのレベルがあります。
- 概念データモデル: ビジネス要件の視点から、主要なエンティティとその関係性を記述します。
- 論理データモデル: 概念モデルを特定のデータベース技術に依存しない形で詳細化し、属性、主キー、外部キーなどを定義します。
- 物理データモデル: 論理モデルを特定のデータベースシステム(例:RDB、NoSQL DB)に実装するための具体的なテーブル、カラム、インデックスなどを定義します。
- データフロー(Data Flow): データがシステム内をどのように移動するかを記述します。データの生成源から、処理、保存、そして利用されるまでの経路を示します。
- データ標準とガバナンス: データの一貫性と品質を維持するための命名規則、データ型、セキュリティポリシー、アクセス制御など、データに関する標準と統制の枠組みを定義します。
データアーキテクチャの主要なコンポーネント
現代のデータアーキテクチャは、複数の層とコンポーネントから構成され、データのライフサイクル全体を管理します。
- データソース層(Data Sources Layer): データが生成される元のシステムやアプリケーションが含まれます。これには、トランザクションシステム(OLTP)、センサーデータ、外部データプロバイダー、ソーシャルメディア、レガシーシステムなどが含まれます。
- データインジェスト層(Data Ingestion Layer): 様々なデータソースからデータを収集し、データレイクやデータウェアハウスなどの中央リポジトリに取り込むための仕組みです。
- バッチ処理: 定期的に大量のデータをまとめて転送します。
- ストリーミング処理: リアルタイムまたは準リアルタイムでデータを連続的に取り込みます(例:Kafka, Kinesis)。
- データストレージ層(Data Storage Layer): 取り込まれたデータを保存するための多様なストレージソリューションが含まれます。
- データレイク(Data Lake): 構造化、半構造化、非構造化データなど、あらゆる形式の生データをそのままの形で保存する大規模なリポジトリです。ビッグデータ分析や機械学習の基盤として利用されます。
- データウェアハウス(Data Warehouse): 構造化されたデータを格納し、ビジネスインテリジェンス(BI)やレポート作成、履歴分析のために最適化されたリレーショナルデータベースです。ETL(Extract, Transform, Load)プロセスを通じてデータが整理・統合されてロードされます。
- データマート(Data Mart): 特定の部門やビジネス機能に特化したデータウェアハウスのサブセットです。
- データ処理・変換層(Data Processing & Transformation Layer): 生データを分析や利用に適した形式に変換、加工するプロセスを実行します。
- ETL/ELTパイプライン: データの抽出(Extract)、変換(Transform)、ロード(Load)を行うパイプラインです。
- データクレンジング: 欠損値の補完、重複データの削除、表記ゆれの統一など、データ品質を向上させる処理。
- データ集計: 複数のデータをまとめて統計量を算出する処理。
- データ分析・利用層(Data Analytics & Consumption Layer): 処理されたデータが、ビジネスユーザー、データアナリスト、データサイエンティスト、アプリケーションによって利用される層です。
- BIツール: ダッシュボード、レポート、可視化。
- 機械学習(ML): モデルの訓練、予測、推論。
- アプリケーション: データを利用して機能を提供する各種アプリケーション。
- データガバナンス・セキュリティ層(Data Governance & Security Layer): データライフサイクル全体にわたってデータの品質、セキュリティ、コンプライアンスを確保するための横断的な機能です。
- データカタログ: データの所在、内容、品質、所有者などを管理するメタデータリポジトリ。
- アクセス管理: データの機密性に基づいたアクセス権限の制御。
- コンプライアンス: GDPRやCCPAなどの規制遵守。
データアーキテクチャの主要なパターン
組織のニーズに応じて、様々なデータアーキテクチャパターンが採用されます。
- レガシーデータウェアハウス(Traditional Data Warehouse): 主に構造化データを対象とし、ETLプロセスで変換されたデータを格納します。BIやレポート作成に強みがあります。
- データレイクハウス(Data Lakehouse): データレイクの柔軟性(生データ保存)とデータウェアハウスの構造化・管理機能(ACIDトランザクション、スキーマ管理)を統合したハイブリッドなアーキテクチャです。分析と機械学習の両方に適しています。
- データメッシュ(Data Mesh): 中央集権的なデータレイクやデータウェアハウスの代わりに、データをドメインごとに分散管理し、「データプロダクト」として提供する分散型アーキテクチャです。大規模組織でのデータアクセスの民主化を目指します。
- リアルタイムデータアーキテクチャ: ストリーミングデータ処理技術を活用し、リアルタイムな意思決定やアプリケーションの動作を可能にするアーキテクチャです。
データアーキテクチャは、組織のデータ資産の収集、整理、統合、保管、および利用を規定する全体的な構造と設計であり、データ戦略を実現するための基盤となります。データソース、インジェスト、ストレージ、処理・変換、分析・利用、そしてガバナンス・セキュリティといった複数の層とコンポーネントから構成されます。レガシーデータウェアハウス、データレイクハウス、データメッシュ、リアルタイムアーキテクチャなど、多様なパターンが存在し、組織のビジネス要件や技術的制約に応じて最適なものが選択されます。適切に設計されたデータアーキテクチャは、データの価値を最大化し、データドリブンな意思決定を促進するために不可欠です。
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