ラベルエンコーディングとは

ラベルエンコーディング(Label Encoding)とは、カテゴリカルデータを機械学習アルゴリズムが扱える数値形式に変換するための手法の一つ

ラベルエンコーディング(Label Encoding)は、機械学習において、カテゴリカルデータ(Categorical Data)を数値データに変換するための前処理手法です。カテゴリカルデータとは、「性別(男性、女性)」、「色(赤、青、緑)」、「都市(東京、大阪、福岡)」のように、限られた数のカテゴリやラベルで表現される非数値データのことです。

多くの機械学習アルゴリズムは、数値データしか直接処理できないため、カテゴリカルデータを適切な数値形式に変換する必要があります。ラベルエンコーディングは、これらのカテゴリをそれぞれユニークな整数値に置き換えることで、アルゴリズムがデータを利用できるようにします。


ラベルエンコーディング の基本的な概念

ラベルエンコーディングのプロセスは非常に単純です。特定のカテゴリカル特徴量(カラム)内のユニークな各カテゴリに対して、0から始まる連続した整数値を割り当てます。

例えば、「色」という特徴量に「赤」「青」「緑」というカテゴリがあった場合、ラベルエンコーディングを適用すると、以下のように変換されます。

  • 「赤」 → 0
  • 「青」 → 1
  • 「緑」 → 2

これにより、元のテキスト形式のカテゴリカルデータが、機械学習モデルが処理できる数値形式に変換されます。


ラベルエンコーディング の適用例と実装

Pythonのscikit-learnライブラリは、ラベルエンコーディングを簡単に実行するためのLabelEncoderクラスを提供しています。

Python

from sklearn.preprocessing import LabelEncoder
import pandas as pd

# サンプルデータ
data = {'色': ['赤', '青', '緑', '赤', '青'],
        'サイズ': ['S', 'M', 'L', 'M', 'S']}
df = pd.DataFrame(data)

print("変換前のデータ:")
print(df)

# '色'カラムにラベルエンコーディングを適用
le = LabelEncoder()
df['色_encoded'] = le.fit_transform(df['色'])

print("\n変換後のデータ:")
print(df)
print("\n割り当てられたラベル:")
print(list(le.classes_)) # オリジナルのカテゴリと割り当てられた数値の対応関係

出力例:

変換前のデータ:
  色 サイズ
0  赤    S
1  青    M
2  緑    L
3  赤    M
4  青    S

変換後のデータ:
  色 サイズ  色_encoded
0  赤    S          0
1  青    M          1
2  緑    L          2
3  赤    M          0
4  青    S          1

割り当てられたラベル:
['青', '赤', '緑']

(注: LabelEncoderの内部的な順序は、文字列のアルファベット順になることが多いですが、実装によって異なる場合があります。)


ラベルエンコーディング の利点と課題

利点

  • 実装の簡便性: 非常にシンプルで実装が容易です。
  • メモリ効率: 新しいカラムを増やすことなく、既存のカラムを数値に置き換えるため、メモリ使用量が少ないです。
  • 高速性: 変換処理が高速です。

課題

  • 順序関係の導入: ラベルエンコーディングは、カテゴリ間に「順序」や「大小関係」があるかのように見なしてしまうという大きな課題があります。例えば、「赤」が0、「青」が1、「緑」が2とエンコードされた場合、機械学習モデルは「緑」が「赤」よりも「大きい」あるいは「優れている」といった誤った解釈をする可能性があります。
    • この順序関係は、ロジスティック回帰やサポートベクターマシン、ニューラルネットワークなど、数値の大小に敏感なアルゴリズムに悪影響を及ぼすことがあります。モデルがカテゴリ間の順序を不適切に学習し、性能が低下する原因となります。
  • 名義尺度データへの不適合: カテゴリ間に本質的な順序関係がない「名義尺度(Nominal Scale)」のデータに対しては、この順序の導入は特に問題となります。

ラベルエンコーディング の適切な利用シーンと代替手法

ラベルエンコーディングは、常に適切な手法というわけではありません。

適切な利用シーン

  • 順序尺度データ: カテゴリ間に明確な順序関係が存在する場合(例:「低」「中」「高」を0, 1, 2にエンコードする場合)。
  • ツリーベースのアルゴリズム: 決定木ランダムフォレスト、勾配ブースティングなどのツリーベースのアルゴリズムは、特徴量の数値の大小関係に比較的鈍感であるため、ラベルエンコーディングが問題となりにくいことが多いです。これらのモデルは、特定の値(カテゴリ)でデータを分割する閾値を学習するため、順序が人為的に導入されてもその影響を受けにくい傾向があります。

代替手法

ラベルエンコーディングの課題を解決するための主要な代替手法として、**ワンホットエンコーディング(One-Hot Encoding)**があります。

  • ワンホットエンコーディング: カテゴリカル特徴量の各ユニークなカテゴリに対して、それぞれ新しいバイナリ(0または1)の独立したカラムを作成する手法です。
    • 例:「色」が「赤」「青」「緑」の場合、色_赤色_青色_緑という3つの新しいカラムが作られます。
    • これにより、カテゴリ間に順序関係が導入されるのを防ぎ、名義尺度データに適しています。
    • 課題としては、カテゴリ数が多い場合に次元の呪い(高次元化)が発生し、メモリ消費量が増加したり、スパースなデータになったりする点が挙げられます。

ラベルエンコーディングは、カテゴリカルデータを数値形式に変換する簡便な前処理手法であり、各カテゴリにユニークな整数値を割り当てます。実装が容易でメモリ効率が良いという利点がある一方で、カテゴリ間に不適切な順序関係を導入してしまうという重大な課題を抱えています。そのため、カテゴリに順序関係がない名義尺度データや、数値の大小に敏感なアルゴリズムを用いる場合は、ワンホットエンコーディングなどの代替手法を検討することが重要です。適切なエンコーディング手法の選択は、機械学習モデルの性能と解釈性を大きく左右します。

関連用語

決定木 | 今更聞けないIT用語集
機械学習 | 今更聞けないIT用語集
AIソリューション

お問い合わせ

システム開発・アプリ開発に関するご相談がございましたら、APPSWINGBYまでお気軽にご連絡ください。

APPSWINGBYの

ソリューション

APPSWINGBYのセキュリティサービスについて、詳しくは以下のメニューからお進みください。

システム開発

既存事業のDXによる新規開発、既存業務システムの引継ぎ・機能追加、表計算ソフトによる管理からの卒業等々、様々なWebシステムの開発を行っています。

iOS/Androidアプリ開発

既存事業のDXによるアプリの新規開発から既存アプリの改修・機能追加まで様々なアプリ開発における様々な課題・問題を解決しています。


リファクタリング

他のベンダーが開発したウェブサービスやアプリの不具合改修やソースコードの最適化、また、クラウド移行によってランニングコストが大幅にあがってしまったシステムのリアーキテクチャなどの行っています。