ウォークスルーとは
ウォークスルー(Walkthrough)とは?開発中の成果物を関係者でレビューし、問題点を早期に発見する非公式なレビュー手法
ウォークスルー(Walkthrough)とは、ソフトウェア開発プロセスにおいて、開発中の成果物(例:設計書、コード、ドキュメントなど)を、開発者自身が中心となって関係者(同僚のプログラマー、デザイナー、テスター、場合によっては顧客など)に対して説明し、その内容や論理をステップバイステップで確認しながら、潜在的な問題点や改善点を早期に発見することを目的とした、比較的非公式なレビュー手法を指します。
ウォークスルーの基本的な概念
ウォークスルーは、フォーマルなインスペクション(査読)ほど厳格な手続きを伴わず、より協力的な雰囲気の中で知識共有と問題発見を促進します。
主な概念は以下の通りです。
- 開発者主導: 成果物の作成者である開発者自身が、その内容を説明する役割を担います。これにより、作成者の意図や背景が直接伝えられ、参加者の理解が深まります。
- ステップバイステップの確認: 成果物の流れや論理を、冒頭から順を追って段階的に確認していきます。例えば、コードであれば、特定の機能の実行パスを一行ずつ追うように説明します。
- 早期の問題発見: 開発プロセスの早い段階(設計段階やコーディング初期段階)で実施することで、問題が後工程で発覚するよりも修正コストを大幅に削減できます。
- 知識共有と学習: 参加者間で成果物の内容や技術的な知識が共有され、相互学習の機会となります。特に、若手開発者の教育にも有効です。
- 非公式性: 厳密なルールや役割分担、詳細なチェックリストなどは設けず、より柔軟かつ対話的に進められます。これにより、参加者が意見を出しやすい雰囲気を作り出します。
ウォークスルーの目的とメリット
ウォークスルーは、多岐にわたる目的とメリットをソフトウェア開発プロジェクトにもたらします。
目的
- 設計やコードの検証: 論理的な誤り、不整合、抜け漏れなどを発見し、品質を向上させる。
- 要件の理解確認: 設計や実装が、当初の要件や顧客の期待を満たしているかを確認する。
- 代替案の検討: より効率的、堅牢、保守しやすい設計や実装方法がないか、議論を通じて検討する。
- 知識の共有: プロジェクトメンバー間で、システムやコンポーネントの内部構造、設計思想、実装ロジックに関する共通理解を深める。
- 属人性の排除: 特定の開発者のみが知っている情報をチーム全体で共有することで、プロジェクトの属人性を低減し、リスクを分散する。
- 開発者の育成: 経験の浅いメンバーがベテランの設計やコードを学ぶ機会を提供し、スキル向上を促す。
メリット
- コスト削減: 問題点を開発プロセスの早い段階で発見し修正できるため、後工程(テスト段階や運用段階)で発覚するよりも修正にかかる時間や費用を大幅に削減できます。
(一般的に、問題発見が遅れるほど修正コストは指数関数的に増加)
- 品質向上: 多様な視点からのレビューにより、設計の欠陥やコードのバグ、ドキュメントの不明瞭さなどを効率的に特定し、成果物の全体的な品質を高めます。
- コミュニケーションの促進: 参加者間の活発な議論を通じて、チーム内のコミュニケーションが活性化し、認識の齟齬が解消されます。
- モチベーション向上: 自分の成果物に対するフィードバックを直接受け取ることで、開発者の学習意欲や品質への意識が高まります。
ウォークスルーの実施方法
一般的なウォークスルーの実施手順は以下の通りです。
- 準備
- 発表者の準備: レビュー対象となる成果物(設計書、コード、ドキュメントなど)を準備し、説明する範囲と内容を明確にしておきます。必要に応じて、説明用の資料(図、スライド)を作成します。
- 参加者の選定: 成果物に関係する開発者、テスター、プロジェクトマネージャー、場合によっては顧客やユーザー代表など、多様な視点を持つ関係者を選定します。通常、3~7名程度が適切とされます。
- 開催の告知: 日時、場所、目的、レビュー対象の成果物を事前に共有し、参加者が準備できるよう案内します。
- 実施
- 発表者による説明: 発表者が、成果物の概要、目的、設計思想、特定の機能やロジックの流れを、順を追って説明します。参加者の理解を促すために、図や具体例を交えながら進めます。
- 質疑応答と議論: 説明中に、参加者は疑問点や懸念事項を自由に質問します。発表者はそれに対して回答し、必要に応じて参加者全員で議論を行います。問題点や改善案が発見された場合は、記録します。
- 休憩と時間管理: 長時間になる場合は適宜休憩を挟み、集中力が途切れないようにします。設定した時間内に効率的に進行するよう、ファシリテーターが時間を管理することもあります。
- 終了後
- 議事録の作成: 発見された問題点、決定事項、未解決の課題、担当者、期限などを記録し、参加者間で共有します。
- フォローアップ: 記録された問題点に対して、発表者(または担当者)が修正や対応を行い、その進捗を追跡します。必要に応じて、再レビューを実施することもあります。
ウォークスルーと類似のレビュー手法との比較
- インスペクション(Inspection / 査読): ウォークスルーよりもフォーマルで厳格なレビュー手法です。明確な役割分担(モデレーター、レコーダー、リーダーなど)、詳細なチェックリスト、入場・退場基準、欠陥発見率などの数値目標が設定されます。準備と実施に多くの時間とリソースを要しますが、高い欠陥発見率が期待できます。ウォークスルーが「教える」側面が強いのに対し、インスペクションは「検査する」側面が強いと言えます。
- ピアレビュー(Peer Review): 同僚(ピア)同士が互いのコードや設計をレビューする手法全般を指します。ウォークスルーはピアレビューの一種と見なせますが、ピアレビューはより広範な概念で、非同期に行われるプルリクエスト(GitHubなど)でのコードレビューも含まれます。
- アドホックレビュー(Ad-hoc Review): 特定の目的や計画なしに、偶発的、非公式に行われるレビューです。ウォークスルーは計画的に実施される点で異なります。
ウォークスルーは、開発中の成果物を開発者自身が関係者に説明し、その内容や論理をステップバイステップで確認することで、潜在的な問題点や改善点を早期に発見する、比較的非公式なレビュー手法です。早期の問題発見によるコスト削減、品質向上、チーム内の知識共有とコミュニケーション促進、開発者の育成といった多大なメリットをもたらします。
発表者の準備、関係者の選定、順を追った説明、活発な質疑応答と議論、そして議事録作成とフォローアップが効果的なウォークスルー実施の鍵となります。より厳格なインスペクションと比較すると非公式ですが、その柔軟性と効率性により、ソフトウェア開発の現場で広く活用されています。
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