K平均法とは
K平均法(K-means法)とは?データを複数のグループに自動分類するクラスタリングアルゴリズム
K平均法(K-means法)とは、機械学習における教師なし学習アルゴリズムの一つであり、与えられたデータセットを、事前に指定されたK個の互いに素な(重複しない)クラスター(グループ)に自動的に分割(クラスタリング)する手法を指します。各データポイントは、最も近いクラスターの中心(重心)に割り当てられることで、グループ分けが行われます。
K平均法の基本的な概念
K平均法は、データの特徴に基づいて類似したデータポイントをまとめることを目的としています。例えば、顧客の購買履歴データから顧客をいくつかのセセグメントに分類したり、画像データから似た色の領域をまとめたりする際に活用されます。
主な概念は以下の通りです。
- クラスター(Cluster): K平均法によって分類されるデータのグループです。各クラスターは、互いに似た性質を持つデータポイントの集まりであると想定されます。
- セントロイド(Centroid)/重心: 各クラスターの中心を表す仮想的な点です。これは、そのクラスターに属するすべてのデータポイントの平均値(重心)として計算されます。K平均法のアルゴリズムは、このセントロイドを反復的に更新しながら、最適なクラスターを見つけ出します。
- 距離尺度(Distance Metric): 各データポイントがどのクラスターに属するかを決定するために、データポイントとセントロイド間の「距離」を計算します。最も一般的に使用されるのはユークリッド距離(Euclidean Distance)ですが、データの性質によっては他の距離尺度(例: マンハッタン距離)も利用されます。
ここで、x と y はn次元のデータポイントです。
- Kの値: ユーザーが事前に指定する必要がある、最終的に分割したいクラスターの数です。このKの値の選択は、クラスタリング結果に大きな影響を与えます。
K平均法の動作原理(アルゴリズム)
K平均法は、以下の手順を反復的に実行することで、データをK個のクラスターに分割します。
- ステップ1: 初期セントロイドの選択(Initialization): まず、データセットの中からK個の初期セントロイドをランダムに選択します。あるいは、他のヒューリスティックな方法(K-means++など)で初期化することもあります。
- ステップ2: データポイントの割り当て(Assignment Step): データセット内の各データポイントについて、K個のセントロイドのうち、最も距離が近いセントロイドが属するクラスターにそのデータポイントを割り当てます。
- ステップ3: セントロイドの更新(Update Step): 各クラスターに割り当てられたデータポイントの平均を計算し、その結果を新しいセントロイドとして更新します。 クラスター Ci に属するデータポイントの集合が
であり、その数が
のとき、新しいセントロイド
は以下のように計算されます。
- ステップ4: 収束の判定(Convergence Check): ステップ2とステップ3を、セントロイドの位置がほとんど変化しなくなるまで(または、事前に設定した最大反復回数に達するまで)繰り返します。セントロイドが移動しなくなったら、アルゴリズムは収束したとみなされます。
このプロセスは、各クラスター内のデータポイントとセントロイドの距離の二乗和(クラスター内総平方和:Within-Cluster Sum of Squares (WCSS))を最小化するように機能します。
Kの最適な値の選択
K平均法の最も大きな課題の一つは、事前にKの値を指定する必要があることです。Kの最適な値を見つけるための一般的な方法は以下の通りです。
- エルボー法(Elbow Method): 異なるKの値でクラスタリングを実行し、WCSS(クラスター内総平方和)をプロットします。WCSSが急激に減少し始める点(肘のように見える点)が、Kの最適な値であると判断されます。
- シルエット係数(Silhouette Coefficient): 各データポイントが、自身のクラスターにどれだけ密接に結合しているか、そして他のクラスターからどれだけ離れているかを示す指標です。シルエット係数が高いKの値が望ましいとされます。
- ビジネス知識: 分析するデータの背景にあるビジネス知識や専門知識に基づいて、Kの値を決定することもあります。例えば、顧客を「新規」「既存」「休眠」の3つのカテゴリに分類したい場合、K=3と設定する、などです。
K平均法のメリットとデメリット
K平均法は広く利用されていますが、その特性を理解しておくことが重要です。
メリット
- シンプルで理解しやすい: アルゴリズムが直感的で理解しやすく、実装も比較的容易です。
- 計算効率が良い: 大規模なデータセットに対しても比較的迅速に処理が可能です。線形的な計算量で、各反復のコストが低い傾向にあります。
- 汎用性が高い: 多くの分野(顧客セグメンテーション、画像処理、異常検知など)で幅広く利用されています。
デメリット
- Kの事前指定が必要: 最適なKの値を事前に知る必要がある点が最大の課題です。
- 初期セントロイドへの依存: 初期セントロイドの選択によってクラスタリング結果が異なる場合があります。これを解決するため、K-means++などの初期化手法が提案されています。
- 外れ値への弱さ: セントロイドが平均値であるため、外れ値に敏感であり、クラスターの中心が引きずられてしまう可能性があります。
- 球状のクラスターを仮定: K平均法は、クラスターが球状で、密度が均一であるという暗黙の仮定を持っています。複雑な形状や密度の異なるクラスター構造を持つデータでは、うまく機能しない場合があります。
- カテゴリカルデータへの適用: 数値データに強く、カテゴリカルデータ(名義尺度、順序尺度など)を直接扱うのが苦手です。この場合、カテゴリカルデータを数値に変換する前処理が必要となります。
K平均法の応用例
K平均法は、そのシンプルさと効率性から、様々な分野で活用されています。
- 顧客セグメンテーション: 顧客の購買履歴や行動パターンに基づいて、似たような顧客グループに分類し、ターゲットマーケティング戦略を立てる。
- 画像処理とコンピュータビジョン: 画像の色の数を減らす(色量子化)、画像内の似たテクスチャ領域をセグメンテーションする。
- 異常検知: データが少数のクラスターに属する中で、どのクラスターにもうまく属さないデータポイントを異常として特定する。
- 文書のクラスタリング: 多数のテキスト文書を内容に基づいて自動的にグループ化する。
- 地理空間データ分析: 都市内の人々の移動パターンや、特定のイベント発生地点の集中度を分析する。
K平均法(K-means法)とは、事前に指定されたK個のクラスターにデータセットを自動的に分割する、教師なし学習のクラスタリングアルゴリズムです。初期セントロイドの選択から始まり、データポイントの割り当て、セントロイドの更新という反復プロセスを経て、クラスター内総平方和が最小化されるようにデータをグループ化します。
シンプルで計算効率が良いというメリットがある一方で、Kの事前指定や初期セントロイドへの依存、外れ値への弱さ、そして球状クラスターの仮定といったデメリットも存在します。顧客セグメンテーション、画像処理、異常検知など、多岐にわたる分野で活用されており、データから隠れた構造やパターンを発見するための基本的なツールとして広く利用されています。
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