XOR問題とは

XOR問題は、排他的論理和(Exclusive OR)の真理値表を、単一のパーセプトロン(線形分離可能なモデル)では学習・識別することができないという、初期のニューラルネットワーク研究における限界を示した問題のことであり、非線形な境界線が必要なパターンを扱うためには、多層構造(隠れ層)を持つニューラルネットワーク(多層パーセプトロン)が必要であることを理論的に証明した、機械学習の歴史において重要な転換点となった課題のことです。

XOR問題の概要と線形分離の限界

XOR(排他的論理和)は、二つの入力が「異なる」場合にのみ真(1)を出力し、「同じ」場合には偽(0)を出力する論理演算です。

1. XORの真理値表

XOR問題の中心は、以下の真理値表に示す入力パターンと出力の関係にあります。

入力 A入力 B出力 A XOR B
000
011
101
110

2. 単一パーセプトロンの限界

初期のニューラルネットワークモデルであるパーセプトロン(Perceptron)は、入力層と出力層の二層構造を持ち、線形分類器として機能します。これは、入力空間(グラフ)上にただ一つの直線(または超平面)を引くことで、データセットを二つのクラスに分類する能力しか持ちません。

XOR問題の真理値表の入力パターン(0,0)、(0,1)、(1,0)、(1,1)を2次元平面上にプロットすると、出力が1の点((0,1)と(1,0))と、出力が0の点((0,0)と(1,1))が対角線上に配置されます。

この配置を見ると、いかなる直線(単一の線形境界)を用いても、出力1の点と出力0の点を完全に分離することが不可能であることが分かります。この線形分離が不可能であるという性質こそが、XOR問題の本質です。

解決策:多層パーセプトロンの導入

XOR問題が提示されたことで、単層パーセプトロンには限界があることが認識され、研究の焦点は非線形分離可能な問題を解決できる構造に移りました。その解決策として登場したのが、隠れ層(Hidden Layer)を持つ多層構造のニューラルネットワーク、すなわち多層パーセプトロン(Multi-Layer Perceptron, MLP)です。

1. 非線形性の獲得

隠れ層を追加し、さらに活性化関数(例:ReLUシグモイド関数)として非線形関数を用いることで、MLPは複数の線形境界を組み合わせた非線形な複雑な境界を学習する能力を獲得します。

XOR問題をMLPで解く場合、隠れ層のノードは、AND、OR、NOTなどの単純な論理演算をそれぞれ学習し、それらの出力を組み合わせることで、最終的にXORのような非線形な関係を表現します。

2. 勾配降下法とバックプロパゲーション

MLPの導入は、単に構造的な解決策に留まりませんでした。多層構造のネットワークを効率的に学習させるためのアルゴリズム、バックプロパゲーション(誤差逆伝播法)の開発が、XOR問題を実用的に解く鍵となりました。

バックプロパゲーションは、出力層で計算された誤差を、連鎖律(Chain Rule)を用いてネットワークの入力側に向かって逆方向に伝播させることで、各ニューロンの重みを効率的に更新する手法です。

\frac{\partial E}{\partial w_{ij}} = \frac{\partial E}{\partial o_j} \cdot \frac{\partial o_j}{\partial \text{net}_j} \cdot \frac{\partial \text{net}j}{\partial w{ij}}

ここで $E$ は誤差関数、 $w_{ij}$ は重み、 $o_j$ は出力、 $\text{net}_j$ は入力の総和です。このアルゴリズムと多層構造の組み合わせにより、ニューラルネットワークは非線形な問題を含む、より複雑な現実世界のタスクに対処できる汎用的なモデルへと進化しました。

XOR問題は、ディープラーニングの基礎となる多層ネットワークとバックプロパゲーションの重要性を確立した、理論的なマイルストーンとして位置づけられています。

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