GPUとは

GPUは、グラフィックス処理を専門に行うために設計された半導体チップであり、多数の単純な演算コアを並列動作させることで、画像描画や大規模な行列計算を高速に処理するためのプロセッサのことです。

GPUの概要とCPUとの役割分担

GPU(Graphics Processing Unit、グラフィックス処理ユニット)は、元々、パーソナルコンピュータやゲーム機において、3次元コンピュータグラフィックス(3DCG)のレンダリング(描画)を高速化するために開発されました。画像処理では、画面上の無数のピクセル(画素)に対して、独立した単純な計算(例:色、影、座標変換)を大量に同時に実行する必要があります。

これに対し、CPU(Central Processing Unit、中央演算処理ユニット)は、少数の強力なコアを持ち、複雑で多様な処理を逐次的に、または高いクロック速度で実行することに特化しています。

GPUは、その設計思想により、並列計算(Parallel Computing)に極めて優れています。現代のGPUは、数千もの演算コアを搭載しており、これにより、グラフィックス処理の枠を超えて、ディープラーニング、科学技術計算、仮想通貨のマイニングなど、大量の独立した計算を必要とする汎用的な計算処理(GPGPU:General-Purpose computing on GPUs)にも広く利用されています。

主な目的は、画像描画や大量のデータ処理における並列計算能力を提供し、CPUの負荷を軽減しつつ、システム全体の処理速度を劇的に向上させることです。

GPUのアーキテクチャ的特徴

GPUが並列計算に優れる構造的な理由は、そのアーキテクチャにあります。

1. 多数のシンプルなコア(ストリーミングマルチプロセッサ)

CPUが複雑な命令セットと大きなキャッシュを持つ少数のコアで構成されるのに対し、GPUは多数の小さな演算ユニット(シェーダーコアまたはCUDAコアなど)で構成されます。これらのコアは、それぞれが単純なタスクを同時に実行することに特化しており、全体として極めて高いスループット(単位時間あたりの処理量)を発揮します。

2. 並列性の最大化

GPUの設計は、SIMT(Single Instruction, Multiple Threads、単一命令・複数スレッド)と呼ばれるモデルに基づいています。これは、同一の命令を異なるデータに対して同時に多数のスレッドが実行する方式です。

例えば、100万個のピクセルの色を計算する場合、GPUは100万回の異なる計算を並列に実行でき、この構造が行列演算を多用するディープラーニング(例:ニューラルネットワークの順伝播・逆伝播)に理想的です。

ニューラルネットワークの学習における行列積の計算(例:入力ベクトル $X$ と重み行列 $W$ の積)は、本質的に多数の独立した積和演算の集まりであり、GPUの並列アーキテクチャに完全にマッピングされます。

\text{出力} = \sum_{i} (W_{ij} \cdot X_i) + b_j

3. メモリの特性

GPUは、CPUとは独立した高速な専用メモリ(VRAM、Video Random Access Memory)を搭載しています。VRAMは、特に高い帯域幅(Bandwidth)を持つように設計されており、大量のデータをプロセッサコアに迅速に供給し、並列計算のスループットを維持することを可能にしています。

主要な応用分野(GPGPU)

GPUの能力は、グラフィックスを超えて以下の分野で不可欠となっています。

  1. ディープラーニングとAI:
    • 大規模なニューラルネットワークの訓練(Training)は、膨大な行列計算から成り立っており、GPUの並列性が学習時間を数日から数時間に短縮することを可能にしました。
  2. 高性能計算(HPC):
    • 科学シミュレーション、気象予測、流体力学、分子動力学シミュレーションなど、複雑な物理現象をモデリング・解析する分野で、従来のスーパーコンピュータに代わる効率的な計算リソースとして使用されています。
  3. データ処理:
    • ビッグデータの分析、データベースクエリの高速化、金融リスクモデリングなど、大量のデータを並行して処理するタスクに活用されています。

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