ROC曲線(アールオーシー曲線)とは

ROC曲線は、二値分類モデルの性能を評価するために用いられるグラフ表現の一つであり、様々な識別閾値(しきい値)を設定した場合における、真陽性率(感度)と偽陽性率(1-特異度)のトレードオフの関係を視覚的に示した曲線のことであり、モデルの識別能力全体を把握し、異なるモデル間の性能を比較するために不可欠な評価ツールのことです。

ROC曲線の概要と必要性

ROC曲線(Receiver Operating Characteristic curve、受信者操作特性曲線)は、もともと第二次世界大戦中にレーダー信号の受信感度を評価するために開発された手法ですが、現在では機械学習、医学、統計学など、多くの分野で二値分類モデルの性能を評価する標準的なツールとなっています。

二値分類モデル(例:疾患の有無、スパムか否か)は、通常、出力として確率値を返します。この確率値が特定の閾値(例:0.5)を超えると陽性(例:スパム)、下回ると陰性(例:非スパム)と判断されます。ROC曲線は、この閾値を $0$ から $1$ まで連続的に変化させた場合のモデルの性能変化をプロットします。

主な目的は、特定の閾値に依存せず、モデルが陽性サンプルと陰性サンプルをどれだけ効果的に分離できるかという、本質的な識別能力を評価することです。

ROC曲線の構成要素とプロット

ROC曲線は、以下の二つの指標を軸としてプロットされます。

1. 縦軸:真陽性率(True Positive Rate, TPR)

真陽性率(TPR)は、リコール(Recall)または感度(Sensitivity)とも呼ばれ、実際に陽性であるサンプル(真の陽性)の中で、モデルが正しく陽性と分類できた割合を示します。

\text{TPR} = \frac{\text{真陽性(TP)}}{\text{真陽性(TP)} + \text{偽陰性(FN)}}

TPRが高いほど、モデルの陽性クラスの捕捉能力が高いことを意味します。

2. 横軸:偽陽性率(False Positive Rate, FPR)

偽陽性率(FPR)は、実際に陰性であるサンプル(真の陰性)の中で、モデルが誤って陽性と分類してしまった割合を示します。

\text{FPR} = \frac{\text{偽陽性(FP)}}{\text{偽陽性(FP)} + \text{真陰性(TN)}}

FPRは、特異度(Specificity)の補数($1 – \text{Specificity}$)に相当します。FPRが低いほど、陰性クラスを正しく識別できていることを意味します。

3. 曲線のプロットと理想的なモデル

曲線は、TPR(縦軸)をFPR(横軸)に対してプロットしたものです。

  • 理想的なモデル: 理想的な分類モデルは、FPRが $0$ のときにTPRが $1$ に達する、左上隅(0, 1)に近づく曲線を描きます。
  • ランダムなモデル: 全く識別能力のないランダムな推測を行うモデルは、対角線($y=x$)に沿った直線を描きます。これは、FPRが $0.5$ のときTPRも $0.5$ となる状態を示します。

AUC(Area Under the Curve)による定量評価

ROC曲線の全体的な性能を単一の数値で定量化するために、AUC(Area Under the Curve、曲線下面積)が用いられます。

  • 定義: AUCは、ROC曲線の描く線と横軸(FPR軸)によって囲まれた面積です。
  • 解釈: AUCの値は $0$ から $1$ の間をとります。この値は、「ランダムに選んだ陽性サンプルとランダムに選んだ陰性サンプルを比較したとき、モデルが陽性サンプルの方がより高い確率スコアを与える確率」に等しいと解釈できます。
    • AUCが $1.0$ に近いほど、モデルの識別性能が優れていることを示します。
    • AUCが $0.5$ の場合、そのモデルはランダムな推測と区別できないことを示します。

AUCは、データセットのクラス分布が不均衡な場合でも、モデルの真の識別能力を公平に評価できるため、分類モデルの最終評価指標として広く採用されています。

関連用語

AIモデル | 今更聞けないIT用語集
二値分類問題 | 今更聞けないIT用語集
AIソリューション

お問い合わせ

システム開発・アプリ開発に関するご相談がございましたら、APPSWINGBYまでお気軽にご連絡ください。

APPSWINGBYの

ソリューション

APPSWINGBYのセキュリティサービスについて、詳しくは以下のメニューからお進みください。

システム開発

既存事業のDXによる新規開発、既存業務システムの引継ぎ・機能追加、表計算ソフトによる管理からの卒業等々、様々なWebシステムの開発を行っています。

iOS/Androidアプリ開発

既存事業のDXによるアプリの新規開発から既存アプリの改修・機能追加まで様々なアプリ開発における様々な課題・問題を解決しています。


リファクタリング

他のベンダーが開発したウェブサービスやアプリの不具合改修やソースコードの最適化、また、クラウド移行によってランニングコストが大幅にあがってしまったシステムのリアーキテクチャなどの行っています。