Q学習とは

Q学習は、強化学習(Reinforcement Learning)の分野において、エージェントが環境の中で最適な行動方策を学習するためのアルゴリズムのことであり、特定の状態(State)で特定の行動(Action)を取ったときの、将来得られる報酬の総和(Q値)を反復的に推定し、そのQ値に基づいて最適な行動を選択するための、モデルフリーでオフポリシー型の学習手法のことです。

Q学習の概要と強化学習における位置づけ

Q学習(Q-Learning)は、環境のダイナミクス(状態がどのように遷移するか)を直接モデル化することなく、最適な行動方策(ポリシー)を学習できるモデルフリーの強化学習アルゴリズムです。

また、学習に使うデータ(経験)の生成に使用する行動方策(行動方策)と、学習後の最適な行動方策(ターゲット方策)が異なるため、オフポリシー(Off-Policy)学習に分類されます。

1. Q値(行動価値関数)の定義

Q学習の中心となるのは、Q値(Quality Value、行動価値関数 $Q(s, a)$)です。

  • $Q(s, a)$ は、現在の状態 $s$ において行動 $a$ を取ったとき、その後に最適な行動を継続的に選択した場合に、将来にわたって得られる累積報酬の期待値を示します。

エージェントの目標は、このQ値を正確に推定し、どの状態 $s$ においてもQ値が最大となる行動 $a$ を選択すること($\arg \max_a Q(s, a)$)です。

主な目的は、試行錯誤を通じて、報酬を最大化するような行動の選択ルールを自律的に発見することです。

Q学習のアルゴリズム

Q学習のアルゴリズムは、エージェントが環境と相互作用する中でQ値を更新していく反復的なプロセスです。

1. Q値の更新則

エージェントが状態 $s$ で行動 $a$ を取り、環境から即時報酬 $r$ を受け取り、次の状態 $s’$ に遷移したとき、Q値は以下のベルマン方程式(Bellman Equation)を基にした更新則で更新されます。

Q(s, a) \leftarrow Q(s, a) + \alpha \left[ r + \gamma \max_{a'} Q(s', a') - Q(s, a) \right]

ここで:

  • $Q(s, a)$: 更新前のQ値(現在の推定値)。
  • $\alpha$(アルファ): 学習率(Learning Rate)。新しい情報をどれだけ既存のQ値に反映させるかを制御します($0 < \alpha \le 1$)。
  • $r$: 行動 $a$ を取った直後に得られた即時報酬(Immediate Reward)
  • $\gamma$(ガンマ): 割引率(Discount Factor)。将来の報酬をどれだけ重視するかを制御します($0 \le \gamma \le 1$)。1に近いほど将来の報酬を重視します。
  • $\max_{a’} Q(s’, a’)$: 次の状態 $s’$ で取りうる最適な行動 $a’$ を選んだ場合の最大のQ値。

この更新則において、角括弧内の項 $\left[ r + \gamma \max_{a’} Q(s’, a’) – Q(s, a) \right]$ は、TD誤差(Temporal Difference Error、時間差分誤差)と呼ばれ、現在のQ値と、観測された情報($r$ と $s’$ での最大のQ値)に基づく「より真の値に近い」と期待される推定値との差分を表します。

2. 行動選択($\epsilon$-Greedy法)

Q学習において、エージェントが行動を選択する方法(行動方策)は、学習の質に大きく影響します。初期の学習段階では、探索(Exploration)(未経験の行動を試すこと)と活用(Exploitation)(現在のQ値が最大である行動を選択すること)のバランスを取る必要があります。

$\epsilon$-Greedy(イプシロン-グリーディ)法が一般的に使用されます。

  • $\epsilon$ の確率で、ランダムな行動(探索)を選択します。
  • $1 – \epsilon$ の確率で、現在のQ値が最大となる行動(活用)を選択します。

学習が進むにつれて $\epsilon$ の値を徐々に小さくすることで、初期は広く探索し、学習が収束に近づくにつれて活用を優先するようになります。

Q学習の課題と発展

1. 課題(Qテーブルの限界)

Q学習は、状態と行動のすべての組み合わせについてQ値を保持するQテーブル(Q-Table)を使用します。

  • 状態数や行動数が多いタスク(例:複雑なロボット制御、高解像度の画像入力)では、Qテーブルのサイズが現実的でないほど巨大化し、メモリ不足や計算時間の増大を引き起こします(状態空間の爆発)。

2. 発展(Deep Q-Network, DQN)

この課題を克服するために、Qテーブルの代わりにディープニューラルネットワーク(DNN)を用いてQ値を近似する手法が開発されました。これがDQN(Deep Q-Network)です。

  • DQNでは、状態 $s$ を入力とし、すべての行動に対するQ値を出力とするネットワークを構築します。これにより、巨大な状態空間でもQ学習の原理を適用できるようになり、Atariゲームなどの複雑なタスクで高い性能を発揮しました。

関連用語

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