ベストエフォートとは

ベストエフォートは、通信サービスやITインフラにおいて、提示された最大通信速度やサービス品質(QoS)を保証せず、その時々のネットワークの混雑状況や設備の性能の限界において、可能な限り最大限の努力で処理を行うという提供形態のことです。

これは、特定の帯域や応答速度をあらかじめ予約して提供する帯域保証型サービスとは対照的な概念であり、通信コストを低く抑えることができる一方で、利用者数や通信負荷の増大によって実際の通信速度が著しく低下したり、通信断が発生したりする可能性があることを前提とした契約モデルです。

ベストエフォートの概念と背景

ベストエフォート(Best Effort)という用語は、日本語では「最善努力」と訳されます。通信事業者(プロバイダー)が「仕様上の最大値」を提示しながらも、実際の利用環境においてその数値を達成することを法的に保証しない仕組みを指します。

1. なぜ品質を保証しないのか

インターネットの基盤となるIP(インターネットプロトコル)ネットワークは、複数のユーザーで同じ通信設備を共有する仕組み(収容設計)になっています。すべてのユーザーに最大速度を保証しようとすると、各ユーザー専用の広大な帯域を常に確保しておく必要があり、サービスの利用料金が極めて高額になります。

ベストエフォート方式を採用することで、ユーザーが通信を行っていない余剰帯域を他のユーザーに割り当てることが可能になり、安価で効率的なネットワーク構築が実現されています。

2. 帯域保証型との比較

ビジネス用途などで信頼性が重視される場合には、ベストエフォートではなく帯域保証型のサービスが選択されます。

項目ベストエフォート型帯域保証型(ギャランティ型)
通信速度混雑時に低下する常に契約速度が維持される
コスト比較的安価高額
主な用途家庭用インターネット、一般的なWeb閲覧金融取引、基幹システム、専用線接続
障害リスク他ユーザーの影響を受けやすい影響を受けにくい設計
帯域保証型との比較

通信速度に影響を与える要因

ベストエフォート型のサービスにおいて、実効速度(実際に計測される速度)が理論上の最大値(カタログスペック)を大きく下回る主な要因には、以下のようなものがあります。

1. 輻輳(ふくそう)

特定の時間帯(夜間など)に多くのユーザーが一斉に通信を行うことで、通信回線や基地局の処理能力が限界に達し、データの渋滞が発生することです。これにより、パケットロスや遅延が生じ、体感速度が低下します。

2. 物理的な伝送損失

光回線の場合は基地局からの距離による影響は少ないものの、ADSLやモバイル通信(4G/5G)においては、距離、障害物、電波の干渉などの物理的環境が大きく影響します。

3. オーバーヘッドの存在

通信を行う際には、実際のデータ(ペイロード)以外に、宛先情報やエラーチェック用の制御情報(ヘッダ)が付加されます。また、カプセル化などの処理過程で一定のデータ量が必要となるため、理論上の最大速度からこれらオーバーヘッド分を差し引いた値が、数学的な限界値となります。

\text{実効スループット} = \text{物理層速度} - \text{通信プロトコルによるオーバーヘッド}

ベストエフォート型サービスの評価指標

品質を保証しないサービスにおいて、ネットワークの品質を客観的に評価するためには、単なる最大速度だけでなく、以下の指標が用いられます。

  • スループット(Throughput): 単位時間あたりに実際に転送できたデータ量。
  • レイテンシ(Latency): データが送信元から送信先に届くまでの遅延時間。オンラインゲームやWeb会議ではこの数値の低さが重要となります。
  • パケット損失率(Packet Loss Rate): 送信されたパケットが途中で消失した割合。

\text{パケット損失率} = \frac{\text{消失したパケット数}}{\text{送信された全パケット数}} \times 100

運用上の留意点

サービス提供側は、ベストエフォートであっても極端な品質低下を避けるため、トラフィックの監視と設備の増強を継続的に行う義務があります。一方で利用側は、クリティカルな業務においてベストエフォート型回線を利用する場合、通信速度の変動を許容できるシステム設計にするか、あるいは複数の回線による冗長化を検討する必要があります。

ベストエフォートという仕組みは、現在のインターネットの普及を支えてきた経済的で合理的なモデルであると言えます。

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