AC-3とは

AC-3は、ドルビーラボラトリーズ社が開発した、主に映画やホームシアターで利用されるデジタル音声圧縮符号化技術および音声フォーマットであり、最大5.1チャンネルのサラウンド音声を提供し、映画館やDVD、ブルーレイディスクの標準的な音声規格として広く普及している技術のことです。

AC-3の概要と発展

AC-3(Audio Coding 3)は、ドルビーラボラトリーズ(Dolby Laboratories, Inc.)が開発した非可逆圧縮方式の音声符号化技術です。現在では、一般的にドルビーデジタル(Dolby Digital)という名称で広く知られています。

この技術は、音響心理学的な原理を利用して、人間の聴覚が感知しにくい周波数成分や小さな音を効率的に削除することで、元の音声データと比較して大幅なデータ量の削減を実現します。

AC-3が最初に実用化されたのは1992年の映画館であり、デジタル化されたマルチチャンネルのサラウンド音声を提供することで、映画の音響体験を革新しました。その後、DVD、ブルーレイディスク、デジタル放送(地上デジタル、衛星デジタル)、そしてゲーム機など、様々な家庭用エンターテイメント機器に採用され、マルチチャンネル音声のデファクトスタンダード(事実上の標準)の一つとなりました。

主な目的は、限られたデータ帯域の中で、高品質かつ没入感のあるマルチチャンネルサラウンド音響を効率的に伝送・記録することです。

AC-3の技術的特徴と5.1チャンネル構成

AC-3の最も大きな特徴は、そのマルチチャンネル対応にあります。

1. 5.1チャンネルサラウンド

AC-3の最も一般的な構成は5.1チャンネルです。これは、独立した5つの全帯域チャンネルと、1つの低域効果音(LFE)専用チャンネルで構成されています。

チャンネル名略称役割
左(Left)L画面左側の音源を再生
中央(Center)C主に台詞や中央の音源を再生
右(Right)R画面右側の音源を再生
左サラウンド(Left Surround)Ls視聴者の左後方からの音響効果を再生
右サラウンド(Right Surround)Rs視聴者の右後方からの音響効果を再生
低域効果音(Low Frequency Effects)LFE120Hz以下の重低音(サブウーファー)専用
5.1チャンネルサラウンド

「.1」チャンネルと呼ばれるLFEチャンネルは、爆発音や振動などの重低音成分を独立して扱うため、映画鑑賞時に迫力のある音響体験を提供します。

2. 音響心理学的符号化

AC-3は、人間の聴覚の特性に基づいた知覚符号化(Perceptual Coding)を利用しています。具体的には、大きな音が小さな音をかき消して聞こえなくするマスキング効果を応用し、マスキングされて聞こえない音声情報や、人間の可聴域外の周波数成分をデータから削減します。

これにより、CD品質のステレオ音声が持つデータ量(約1.4 Mbps)と比較して、AC-3の5.1チャンネル音声は、通常384 kbpsから640 kbps程度という低いビットレートで、聴覚的にほぼ劣化を感じさせない音質を実現しています。

派生技術と互換性

AC-3は、その後のドルビーデジタル技術の基盤となりました。

  • ドルビーデジタルプラス(Dolby Digital Plus, E-AC-3): AC-3の符号化効率とビットレートを向上させた拡張版で、最大7.1チャンネルに対応し、ストリーミングサービスやHD放送で利用されています。
  • ドルビーTrueHD(Dolby TrueHD): ロスレス(可逆圧縮)方式の音声コーデックであり、ブルーレイディスクのハイエンドな音響規格として採用されています。

AC-3は、その長い歴史と普及率から、現在でもほとんどの映像再生機器やオーディオレシーバーでデコード(復号化)が可能であり、高い互換性を有しています。

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