AKAZEとは

AKAZEは、コンピュータビジョンにおいて、非線形な拡散フィルタリングに基づく特徴抽出アルゴリズムであり、画像のぼかしやノイズの影響を受けにくい、スケール不変性と回転不変性を備えた特徴点(キーポイント)を、高速かつ正確に検出・記述する手法のことです。

AKAZEの概要と特徴記述における革新性

AKAZE(Accelerated-Kaze Features、高速化されたKaze特徴量)は、2015年に発表された特徴抽出アルゴリズムであり、従来のアルゴリズム(SIFT、SURFなど)の課題を克服するために設計されました。

特徴抽出アルゴリズムの役割は、異なる視点、スケール、照明条件の下で撮影された画像間で、対応する特徴点(キーポイント)を見つけ出し、物体認識や画像照合を可能にすることです。

AKAZEの最も革新的な点は、スケール空間を構築する際に、線形なガウシアンフィルタではなく、非線形な拡散フィルタリングを利用していることです。

  • 線形フィルタリング(ガウシアン): 画像全体を一律にぼかすため、エッジや重要なディテールも同時に失われてしまいます(SIFT、SURF、KAZEなどの多くの手法で使用されます)。
  • 非線形拡散フィルタリング: 画像のエッジや境界線といった構造を保持しながら、平坦な領域のノイズだけを効果的に除去します。これにより、特徴点の位置決め精度と、記述子の頑健性が大幅に向上します。

主な目的は、ノイズや画質の変動に強く、安定した特徴抽出を可能にする非線形なスケール空間の構築と、高速なバイナリ記述子(Binary Descriptor)の採用により、リアルタイム処理を実現することです。

AKAZEの動作原理とバイナリ記述子

AKAZEの処理は、キーポイントの検出、非線形スケール空間の構築、回転推定、そしてバイナリ記述子の生成というステップで構成されます。

1. 非線形スケール空間(Non-linear Scale Space)の構築

AKAZEは、KAZEアルゴリズムをベースにしており、非線形な偏微分方程式(PDE)を解くことでスケール空間を生成します。これにより、スケールの変化を捉えつつ、エッジをシャープに保ちます。

このスケール空間から、特徴点のスケール不変性を保証する最適なスケールが決定されます。

2. キーポイントの検出と回転推定

非線形スケール空間において、ヘッセ行列の決定式が極大値をとる場所をキーポイントとして検出します。検出されたキーポイントの周囲の領域に対して、局所的な勾配(明るさの変化)を分析し、支配的な方向(主方向)を推定することで、回転不変性を確保します。

3. M-LDB記述子の生成

AKAZEは、記述子(特徴ベクトル)としてM-LDB(Modified-Local Difference Binary)と呼ばれるバイナリ記述子を使用します。

  • サンプリング: キーポイントの周囲にグリッド状にサンプリングパターンを配置します。
  • バイナリ比較: 各グリッド領域内の、特定のペアとなるピクセルの輝度や、特定の方向の勾配を比較し、その結果(0または1)を連結してバイナリベクトルを生成します。
  • 高速マッチング: バイナリ記述子であるため、記述子間の類似度(距離)はハミング距離(異なるビットの数)として計算されます。これは、浮動小数点記述子(例:SIFT)のユークリッド距離計算と比較して、極めて高速であり、特にリアルタイムアプリケーションに適しています。

実用上の優位性

AKAZEは、その高速性と頑健性のバランスから、以下のような分野で利用されます。

  • モバイル/組み込みシステム: 低い計算リソースの環境でも、安定した特徴抽出と高速なマッチングが可能です。
  • 画像照合とトラッキング: ドローンやロボットビジョンにおけるリアルタイムなSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)や、物体追跡、パノラマ画像スティッチング(結合)などに活用されます。

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