BRISKとは

BRISKは、コンピュータビジョンにおいて、画像中の特徴点(キーポイント)を高速かつ効率的に検出・記述するために設計されたアルゴリズムであり、スケール不変性と回転不変性を持ち、特に処理能力が限られた環境(例:モバイルデバイス)でのリアルタイムな物体認識に適した特徴記述子の一つです。

BRISKの概要と特徴記述における役割

BRISK(Binary Robust Invariant Scalable Keypoints、バイナリ頑健不変スケーラブルキーポイント)は、2011年に発表された特徴抽出アルゴリズムです。これは、画像内の重要な点(角、斑点など)を特定し、その周囲の局所的な情報をコンパクトなベクトル(記述子)として表現する特徴記述子(Feature Descriptor)の一種です。

画像処理や物体認識における特徴記述子の役割は、異なる視点、スケール(拡大縮小)、回転、照明条件の下で撮影された同一の物体であっても、一意に識別できるような情報を抽出することにあります。

BRISKの最大の特徴は、以下の要素を両立させた点にあります。

  1. バイナリ記述子(Binary Descriptor): 記述子(特徴ベクトル)が0と1のみで構成されるため、データ量が少なく、記述子間の距離計算(マッチング)が非常に高速であること。
  2. スケール・回転不変性: 画像のサイズや角度が変わっても、同じ特徴点を安定して検出・記述できること。

主な目的は、SIFTやSURFといった従来の浮動小数点記述子に匹敵する頑健性を持ちながら、それらを大幅に上回る速度で処理を実行することです。

BRISKの動作原理とバイナリ記述子の生成

BRISKアルゴリズムは、主に「キーポイントの検出」と「記述子の構築」の2つのフェーズで動作します。

1. スケール空間におけるキーポイント検出

BRISKは、AGAST(Adaptive and Generic Accelerated Segment Test)と呼ばれる手法を用いて、画像全体から高速にキーポイント(特徴点)を検出します。

同時に、画像に対して複数の平滑化レベル(ガウシアンフィルタのサイズ)を適用することでスケール空間を構築します。検出された各キーポイントについて、どのスケール(解像度)で最も安定して検出されるかを判断し、スケール不変性を確保します。

2. 回転推定(Orientation Assignment)

キーポイントの周囲の領域に対して、局所的な勾配(明るさの変化)を分析し、支配的な方向(主方向)を推定します。この主方向に基づいて座標系を回転させることで、回転不変性を確保します。

3. バイナリ記述子の構築

回転補正されたキーポイントの周囲に、特殊なサンプリングパターンを適用して記述子を構築します。

  • サンプリングパターン: キーポイントを中心とする同心円上に、特定のペアとなる点(例: 長い距離のペア、短い距離のペア)を配置します。
  • ペア比較: 配置されたすべての点ペアについて、輝度(明るさ)の比較を行います。
    • 2つの点 $p_a$ と $p_b$ の輝度が比較されます。もし $I(p_a) > I(p_b)$ であれば 1、そうでなければ 0 というバイナリ結果が得られます。
  • 記述子生成: このすべてのペア比較の結果(0または1)を連結することで、512ビットのバイナリベクトル(記述子)が生成されます。

このバイナリ記述子は、ストレージ容量が小さく、ハミング距離(異なるビットの数)という単純なXOR演算によって、極めて高速に類似度を計算できます。

実用上の優位性

BRISKは、特に以下のような環境やタスクにおいて、その特性が活かされます。

  • モバイルコンピューティング: 計算リソースとバッテリー寿命が限られたスマートフォンや組み込みシステムにおいて、リアルタイムなAR(拡張現実)や物体トラッキングを行う場合に最適です。
  • 高速マッチング: 大規模な特徴点集合に対して、膨大な数のマッチング計算を必要とするアプリケーション(例:SLAM、SfM)において、マッチング速度がボトルネックになるのを防ぎます。

関連用語

深層学習・ディープラーニング | 今更聞けないIT用語集
コンピュータビジョン | 今更聞けないIT用語集
AIソリューション

お問い合わせ

システム開発・アプリ開発に関するご相談がございましたら、APPSWINGBYまでお気軽にご連絡ください。

APPSWINGBYの

ソリューション

APPSWINGBYのセキュリティサービスについて、詳しくは以下のメニューからお進みください。

システム開発

既存事業のDXによる新規開発、既存業務システムの引継ぎ・機能追加、表計算ソフトによる管理からの卒業等々、様々なWebシステムの開発を行っています。

iOS/Androidアプリ開発

既存事業のDXによるアプリの新規開発から既存アプリの改修・機能追加まで様々なアプリ開発における様々な課題・問題を解決しています。


リファクタリング

他のベンダーが開発したウェブサービスやアプリの不具合改修やソースコードの最適化、また、クラウド移行によってランニングコストが大幅にあがってしまったシステムのリアーキテクチャなどの行っています。