CARTとは

CARTは、決定木(Decision Tree)を作成するためのアルゴリズムの一つであり、分類問題と回帰問題の両方に対して、データを効率的に分割して予測モデルを構築する手法のことです。

CARTの概要と開発背景

CART(Classification and Regression Trees)は、1984年にLeo Breimanらによって提案された、機械学習における決定木アルゴリズムの基礎を築いた重要な手法です。CARTは、データセットを段階的に、かつ再帰的に分割していくことで、最終的に予測や分類を行うための木構造のモデルを構築します。

このアルゴリズムの最大の特徴は、分類問題(Classification)回帰問題(Regression)の両方に対応できる汎用性の高さにあります。

  • 分類木(Classification Trees): 出力がカテゴリ(例:Yes/No、A/B/C)である問題。
  • 回帰木(Regression Trees): 出力が連続値(例:価格、温度)である問題。

主な目的は、複雑なデータセットの背後にある意思決定ルールを、人間が解釈可能なシンプルな木構造として表現し、高い予測精度を達成することです。

CARTの動作原理:データの最適分割

CARTアルゴリズムは、訓練データセットに対して、最適な分割ルール(Split Rule)を繰り返し適用することで決定木を成長させます。

1. 分割基準(不純度指標)

分割の良し悪しを評価するために、CARTは以下の異なる不純度指標を用いて、最も純度の高い(予測が均一な)子ノードを生成する分割点を選択します。

  • 分類問題:ジニ不純度(Gini Impurity)
    • あるノードにおけるデータのクラスの混ざり具合を示します。ジニ不純度が最小になるような分割が最適とされます。ノード t におけるジニ不純度 IG​(t) は、クラス j が選択される確率を p(j∣t) として、以下の式で計算されます。
    • I_{G}(t) = 1 – \sum_{j} [p(j|t)]^2 このジニ不純度の減少量(情報利得)が最大となる特徴量とその分割点を採用します。
  • 回帰問題:分散(Variance)
    • ノード内の目的変数の値のばらつき(分散)を使用します。ノードを分割することで、子ノードの分散の合計が最小になるような分割が選択されます。

2. 再帰的二分分割

  • CARTは常に二分分割(Binary Split)を行います。これは、どのノードも最大で2つの子ノードにしか分割されないということです。
  • ノードの不純度を最小化する特徴量と分割点が決定されると、データはその分割点に基づいて2つの子ノードに分けられ、このプロセスが再帰的に繰り返されます。

3. 停止条件と枝刈り(Pruning)

  • 過学習の抑制: CARTは、ノードのデータ数が最小閾値を下回る、またはノードの不純度が一定レベル以下になるなどの停止条件が満たされるまで木を成長させます。
  • しかし、過度に成長した木は過学習を引き起こしやすいため、訓練後に枝刈り(Pruning)という手法を用いて、不要な枝を切り落とします。これにより、モデルの汎化性能を向上させます。

CARTの優位性と影響

CARTは、ランダムフォレストや勾配ブースティングなどの高度なアンサンブル学習アルゴリズムの基礎となる技術として、機械学習の分野に大きな影響を与えました。

  • 優位性:
    • 非線形な関係の捕捉: データ間の複雑な非線形な関係を自動的に発見できます。
    • 高い解釈性: 木構造のモデルであるため、意思決定の過程が視覚的に理解しやすく、解釈性に優れています。
    • データ準備の容易さ: 特徴量のスケーリングや正規化などの前処理が不要です。

CARTは、決定木という形で人間が理解しやすい予測ルールを提供する、非常に強力で実用的なアルゴリズムです。

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