EPPとは
EPPは、ドメイン名登録機関(レジストリ)と、レジストラ(ドメイン名登録サービス提供事業者)の間で、ドメイン名の登録、管理、および移管(トランスファー)を行うために使用されるプロトコルのことであり、インターネットドメイン名の分散的な登録システムを安全かつ効率的に運用するための、クライアント・サーバー型のアプリケーション層プロトコルのことです。
EPPの概要とドメイン名システムにおける役割
EPP(Extensible Provisioning Protocol、拡張可能なプロビジョニングプロトコル)は、インターネットのドメイン名システム(DNS)の運用において、最も重要な役割の一つであるドメイン名のライフサイクル管理を担うための標準規格です。このプロトコルは、IETF(Internet Engineering Task Force)によってRFC 5730などで標準化されました。
ドメイン名登録のプロセスは、主に二つの主体間で行われます。
- レジストリ(Registry): .com、.net、.jpなどの特定のトップレベルドメイン(TLD)のデータベースを管理する組織(例:.comのVeriSign、.jpのJPRS)。
- レジストラ(Registrar): ユーザー(ドメイン名登録者)からドメイン登録申請を受け付け、レジストリに登録手続きを行う事業者(例:GoDaddy、お名前.comなど)。
EPPは、このレジストラとレジストリの間で、ドメイン名の登録、更新、削除、所有者情報の変更、移管といった一連の処理を、ネットワーク経由で安全かつ正確に行うための「言語」を提供します。
主な目的は、複数のレジストラが単一のレジストリと相互運用可能であり、ドメイン名登録のオペレーションを標準化し、信頼性を高めることです。
EPPの技術的特徴
1. XMLベースのプロトコル
EPPの最大の特徴は、メッセージ形式としてXML(Extensible Markup Language)を採用している点です。
- 拡張性: XMLを使用することで、プロトコルを拡張するためのメカニズムが組み込まれています。新しいTLDの導入や、レジストリが提供する新しい機能(例:セキュリティ機能)に対応する際、既存のプロトコル構造に影響を与えることなく、新しいXML要素を簡単に追加できます。この「拡張可能(Extensible)」という点がプロトコルの名称の由来となっています。
- 可読性: XML形式は、バイナリ形式と比べて人間にとって比較的読みやすく、デバッグや検証が容易です。
2. セキュアな通信
ドメイン名の管理は、インターネットの安定性とセキュリティにとって極めて重要です。そのため、EPPの通信は、第三者による盗聴や改ざんを防ぐために、SSL/TLSを用いた暗号化された接続(セキュアなTCP接続)上で行われることが義務付けられています。
3. クライアント・サーバーモデル
EPPは、クライアント・サーバーモデルに基づいて動作します。
- クライアント(レジストラ): ドメイン名の登録・管理操作を要求する側です。
- サーバー(レジストリ): クライアントからの要求を受け付け、ドメイン名データベースに対して操作を実行する側です。
レジストラは、サーバーに対してXML形式のコマンドを送信し、サーバーは処理結果をXML形式のレスポンスとして返します。
EPPによるドメイン名の主な操作
EPPは、ドメイン名のライフサイクル全体を管理するための、一連の標準的なコマンドを提供します。
- Create(作成): 新しいドメイン名を登録します。
- Check(チェック): 登録しようとするドメイン名が既に利用可能かどうかを確認します。
- Info(情報取得): 既存のドメイン名に関する詳細情報(有効期限、ネームサーバー、連絡先情報など)を取得します。
- Update(更新): ドメインの登録情報(連絡先、ネームサーバーなど)を変更します。
- Delete(削除): ドメイン名を廃止(削除)します。
- Transfer(移管): ドメイン名をあるレジストラから別のレジストラへ移管します。この際、認証情報(AuthInfo CodeまたはAuth Code)の使用がEPPによって規定されています。
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