FCFSとは

FCFSは、プロセスやタスクを処理する際に、システムへの要求が到着した順番(先着順)で実行するスケジューリングアルゴリズムのことであり、公平かつシンプルな処理順序を提供し、オペレーティングシステム(OS)やネットワークのキューイングシステムなどで基本的なスケジューリング手法として利用されるための方式のことです。

FCFSの概要と動作原理

FCFS(First-Come, First-Served、先着順)は、最もシンプルで理解しやすいスケジューリングアルゴリズムです。この方式は、現実世界における行列(キュー)と同じ原理に基づいており、システムが処理すべきジョブやプロセスを待ち行列(キュー)に入れ、最も長く待機しているものから順にリソース(例:CPU、プリンター、ネットワーク帯域)を割り当てます。

このアルゴリズムの動作は、基本的にFIFO(First-In, First-Out、先入れ先出し)の原則に従います。

  1. 到着: プロセスやタスクがシステムに到着すると、待ち行列の最後尾に追加されます。
  2. 実行: CPUなどのリソースが空くと、待ち行列の最前列にあるプロセスが選択され、実行を開始します。
  3. 完了: プロセスは、途中で中断されることなく、実行が完了するまでリソースを占有し続けます(非プリエンプティブ方式)。

主な目的は、処理の順序を明確にし、公平性(誰もが必ず順番を得られること)を保証しつつ、アルゴリズムの実装を極めて単純に保つことです。

FCFSの評価指標と課題

FCFSはシンプルである反面、特にリアルタイム性が求められる環境や、処理時間のばらつきが大きい環境では、いくつかの重要な課題を抱えています。

1. 評価指標

FCFSの性能は、主に以下の指標で評価されます。

  • ターンアラウンドタイム(応答時間): プロセスがシステムに到着してから完了するまでの合計時間。
  • 平均待ち時間: プロセスがリソースの割り当てを待つためにキュー内で費やす時間の平均。

2. コブラ効果(Convoy Effect)

FCFSの最大の課題は、コブラ効果(数珠つなぎ効果)と呼ばれる現象です。

  • 現象: 非常に処理時間の長い(CPUバースト時間の大きい)プロセスが先に到着し、リソースを占有すると、その後に到着した多数の短いプロセスや、入出力(I/O)集中型のプロセスが、長時間にわたって待たされることになります。
  • 結果: 多数の短いプロセスの待ち時間が不必要に長くなり、平均待ち時間が悪化します。これは、システムの全体的な応答性(特にユーザー体験)を低下させる要因となります。

例えば、以下の3つのプロセスがあったと仮定します。

プロセス到着時刻処理時間(CPUバースト)
P1024
P213
P323
3つのプロセス

P1が最初に到着し、処理時間が最も長いため、他のプロセスは長時間待たされます。

  • P1の完了時刻: 24
  • P2の待ち時間: $24 – 1 = 23$
  • P3の待ち時間: $27 – 2 = 25$
  • 平均待ち時間: \frac{0 + 23 + 25}{3} \approx 16.0

もしP2とP3が先に処理されていれば、平均待ち時間は大幅に短縮されます。

FCFSの応用分野

コブラ効果の課題があるにもかかわらず、FCFSはいくつかの分野で有効に活用されています。

  • ディスクI/Oスケジューリング: ハードディスクへのアクセス要求の処理順序を管理する際に、公平性が必要な場合に利用されます。
  • バッチ処理システム: リアルタイム応答が要求されない、長時間かかる処理の連続実行において、プロセスの到着順序を単純に適用するために用いられます。
  • ネットワークキューイング: ネットワーク機器(ルーターなど)が、バッファに到着したパケットを最も単純な順序で処理する際の基本方式として実装されます。

しかし、現代のマルチタスクOSにおけるCPUスケジューリングの主要なアルゴリズムとしては、より応答性と効率性を追求したラウンドロビン(Round Robin)や優先度ベースのスケジューリングなどが、FCFSの課題を補完するために多く採用されています。

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