FCoEとは

FCoEは、ファイバーチャネル(Fibre Channel)のプロトコルを、標準的な高性能イーサネットフレーム内にカプセル化し、統合されたネットワーク上で伝送するための技術標準のことであり、従来の専用インフラストラクチャを必要とするファイバーチャネルSANと、一般的なTCP/IPネットワークを統合し、データセンターのケーブル配線やアダプタ数を削減するための技術のことです。

FCoEの概要とデータセンターの統合

FCoE(Fibre Channel over Ethernet、イーサネット上のファイバーチャネル)は、データセンターのネットワークインフラストラクチャにおけるコンバージェンス(統合)を推進するために開発されました。この技術が登場するまで、データセンターでは主に以下の二種類のネットワークが独立して稼働していました。

  1. イーサネット(Ethernet): 一般的なデータ通信やTCP/IPトラフィックに使用されます。
  2. ファイバーチャネル(FC): サーバーとストレージ間の高速かつ信頼性の高いブロックアクセス(SAN)専用に使用されます。

ファイバーチャネルは、その高い信頼性と低遅延性からストレージアクセスに最適ですが、高価な専用ケーブル(光ファイバー)、専用のHBA(Host Bus Adapter)、専用のスイッチが必要であり、配線が複雑化し、コストが増大するという課題がありました。

FCoEは、このファイバーチャネルのプロトコルスタックをそのまま利用し、それをロスレス(無損失)の高性能イーサネット(主に10GbE以上)上で伝送できるようにすることで、二つの異なるネットワークを単一の物理ケーブルと単一のアダプタ(CNA: Converged Network Adapter)に統合することを可能にしました。

主な目的は、サーバーのI/Oを統合し、ハードウェアのコスト、消費電力、管理の複雑さを削減しながら、ファイバーチャネルSANの持つ信頼性と性能を維持することです。

FCoEの技術的仕組みとロスレスイーサネット

FCoEの実現には、以下の二つの重要な技術的要素が不可欠です。

1. イーサネットフレームへのカプセル化

FCoEでは、ファイバーチャネルフレーム全体が、特定のEtherType(プロトコル識別子)を持つ標準的なイーサネットフレームのペイロード部分に格納されます。このカプセル化により、FCプロトコルのロジックは変更されることなく、既存のイーサネット上で伝送されます。

  • FCoEは、TCP/IPプロトコルスタックの上に乗るのではなく、IP層よりも下のデータリンク層(レイヤー2)で直接動作します。このため、ファイバーチャネルが持つ低遅延性を維持できます。

2. ロスレスイーサネットの要求

従来のイーサネットは、ネットワークが混雑するとパケットを破棄(ドロップ)する設計(ベストエフォート)ですが、ストレージSANはデータの確実な配送を保証しなければなりません。FCoEは、この要件を満たすために、IEEEによって標準化された以下のデータセンターブリッジング(DCB)機能に依存します。

  • PFC(Priority Flow Control、優先度フロー制御): 特定のトラフィッククラス(FCoEトラフィック)に対して、フレーム破棄を防ぐために一時停止信号を送信し、ロスレスな伝送を保証します。
  • ETS(Enhanced Transmission Selection、拡張送信選択): 異なるトラフィッククラス間で帯域幅を公平に共有し、FCoEが必要な帯域を確保できるようにします。

これらのDCB機能を持つ高性能なイーサネットスイッチ(FCoEスイッチまたはDCBスイッチ)が、FCoEの安定稼働には不可欠です。

FCoEの構成要素と利点

構成要素役割
CNA(Converged Network Adapter)サーバーに搭載されるアダプタ。イーサネット(TCP/IP)とファイバーチャネル(FCoE)の両方のトラフィック処理能力を統合します。
FCoEスイッチDCB機能をサポートし、イーサネットフレーム内のFCトラフィックを識別し、FC SANまたは他のFCoEデバイスに適切に転送します。
FCoEの構成要素と利点

FCoEの最大の利点は、ケーブル配線とサーバーアダプタの削減です。これにより、冷却、電力、ラック密度といったデータセンターの運用コストを大幅に効率化できます。

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