オブザーバビリティー(可観測性)とは:次世代システム運用を支える視点

ITシステムの複雑性が増す現代において、従来の監視手法だけでは対応しきれない「見えない」課題に直面している企業は少なくありません。

本稿では、次世代のシステム運用に不可欠な概念であるオブザーバビリティー(可観測性)について、その本質とビジネスにもたらす価値を、具体的な事例を交えながら解説いたします。

1. 複雑化するITシステムにおける「見えない」課題

近年、ビジネスのデジタル化が加速し、企業システムはかつてないほど複雑化しています。マイクロサービスコンテナクラウドネイティブといった最新技術の導入は、開発の迅速化とスケーラビリティの向上に貢献する一方で、従来のシステム運用では捉えきれない新たな課題を生み出しています。

従来の監視との違い

従来のシステム監視は、CPU使用率やメモリ使用量、ネットワークトラフィックといった事前に定義された既知の指標を基に、システムの健全性をチェックすることが主流でした。これは、あらかじめ想定される問題や障害に対しては有効な手段です。

しかし、現代の複雑な分散システムでは、予期せぬ挙動や未知の障害が発生する可能性が高く、従来の監視だけではその全体像を把握し、根本原因を特定することが困難になっています。

例えるならば、従来の監視は、自動車の速度計や燃料計を見ているようなものです。これらは車の状態を把握する上で重要ですが、エンジンの異音やタイヤの異常など、予期せぬ問題の兆候までは捉えきれません。

なぜ今、オブザーバビリティーが必要なのか?

では、なぜ今、これほどまでにオブザーバビリティーが注目されているのでしょうか。その背景には、主に以下の要因が挙げられます。

1.マイクロサービス、コンテナ、クラウドネイティブ化によるシステムの複雑性

現代のシステムは、モノリシックなアプリケーションから、マイクロサービスコンテナといった、独立した小さなサービスが連携し合う分散型アーキテクチャへと移行しています。

これらは、開発の俊敏性や高いスケーラビリティを実現する一方で、サービス間の依存関係が複雑になり、問題発生時にどのサービスが原因となっているのかを特定することが極めて困難になります。

例えば、Netflixのような大規模サービスでは、数千ものマイクロサービスが連携しており、その全てを従来の監視手法で網羅することは現実的ではありません。オブザーバビリティーは、このような複雑なシステムの「内部状態」を外部から推測・理解する能力を提供することで、この課題に対処します

2.ビジネスアジリティと開発・運用のスピード向上

現代のビジネスは、市場の変化に迅速に対応するためのビジネスアジリティを強く求めています。

そのため、システム開発と運用はこれまで以上に高速化し、頻繁なリリースが行われています。このスピード感の中で、障害発生時の原因特定や復旧に時間を要することは、ビジネス機会の損失に直結します。

オブザーバビリティーは、開発・運用チームがシステムの状態を迅速に把握し、問題解決に集中できる環境を提供することで、このスピード要求に応えます

予期せぬ障害への対応と根本原因特定の困難さ

従来の監視では、既知の障害パターンに対するアラートは有効ですが、予期せぬ障害や、複数のサービスが複雑に絡み合った結果として発生する問題には対応しきれません。

例えば、ある特定のAPIコールが異常に遅延している場合、その原因がデータベースのボトルネックにあるのか、ネットワークの問題なのか、あるいは別のサービスからの予期せぬ高負荷によるものなのかを、従来の監視データだけでは判断が難しいのです。

オブザーバビリティーは、システムから出力される膨大なデータ(メトリクス、ログ、トレース)を統合的に分析することで、未知の挙動や予期せぬ障害の兆候を早期に検知し、根本原因の迅速な特定を可能にします

これは、単に「システムがダウンした」ことを知るだけでなく、「なぜダウンしたのか」「どこに問題があるのか」を深く掘り下げて理解するために不可欠な能力と言えるでしょう。

2. オブザーバビリティーの3本柱

オブザーバビリティーは、システムから収集される様々なデータに基づいてその内部状態を推測する概念ですが、具体的には以下の3つの主要な要素(「3本柱」と称されます)から構成されます。これらはそれぞれ異なる性質を持つデータであり、相互に連携することでシステムの包括的な可視化を実現します。

メトリクス: システムの状態を数値で把握する

メトリクスとは、CPU使用率、メモリ使用量、ネットワークトラフィック、ディスクI/O、リクエスト数、エラー率、応答時間など、システムの状態を定量的に示す数値データのことです。これらは、特定の時点でのスナップショットとして収集され、時系列で記録されることで、システムの変化やトレンドを把握するために用いられます。メトリクスは軽量であり、大量に収集してもシステムのパフォーマンスに大きな影響を与えにくいという特性があります。

収集すべき主要メトリクスと活用例

システムの種類や役割によって重要となるメトリクスは異なりますが、一般的に以下のカテゴリのメトリクスが重要とされます…

株式会社APPSWINGBYは、このようなオブザーバビリティー(可観測性)の向上を目的としたシステム改修から、AI・機械学習プラットフォームの導入、リアルタイム意思決定エンジンの開発・実装、既存システムのリファクタリングまで、お客様のハイパーパーソナライゼーション戦略を全面的にサポートし、お客様のビジネス成長に貢献いたします。

貴社システムの次世代システム運用導入やモダン化等にご興味をお持ちでしたら、ぜひAPPSWINGBYにご相談ください。お客様の状況を詳しくお伺いし、最適なソリューションをご提案いたします。】

お問い合わせフォームはこちら

システム開発にお困りではありませんか?

この記事を書いた人
株式会社APPSWINGBY
株式会社APPSWINGBY マーケティング

APPSWINGBY(アップスイングバイ)は、アプリケーション開発事業を通して、お客様のビジネスの加速に貢献することを目指すITソリューションを提供する会社です。

ご支援業種

情報・通信、医療、製造、金融(銀行・証券・保険・決済)、メディア、流通・EC・運輸 など多数

株式会社APPSWINGBY
株式会社APPSWINGBY マーケティング

APPSWINGBY(アップスイングバイ)は、アプリケーション開発事業を通して、お客様のビジネスの加速に貢献することを目指すITソリューションを提供する会社です。

ご支援業種

情報・通信、医療、製造、金融(銀行・証券・保険・決済)、メディア、流通・EC・運輸 など多数

監修
APPSWINGBY CTO川嶋秀一
株式会社APPSWINGBY  CTO 川嶋秀一

動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
Webシステム開発からアプリ開発、AI、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトを担当。C,C++,C#,JavaScript,TypeScript,Go,Python,PHP,Vue.js,React,Angular,Flutter,Ember,Backboneを中心に開発。お気に入りはGo。

APPSWINGBY CTO川嶋秀一
株式会社APPSWINGBY  CTO 川嶋秀一

動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
Webシステム開発からアプリ開発、AI、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトを担当。C,C++,C#,JavaScript,TypeScript,Go,Python,PHP,Vue.js,React,Angular,Flutter,Ember,Backboneを中心に開発。お気に入りはGo。