クラウドネイティブ化で高まる事業価値:リファクタリングがもたらす長期的なメリット

クラウドネイティブ化で高まる事業価値:リファクタリングがもたらす長期的なメリット

1. はじめに

今回は、「クラウドネイティブ化で高まる事業価値:リファクタリングがもたらす長期的なメリット」と題して、クラウドネイティブ化する企業のシステムにおいて、リファクタリングの重要性が増し、大きなメリットを生み出しているその中身について、ご紹介してきます。少しテクノロジー的な要素が強くなった記事になりますが、大まかな流れが理解できるよう基本的な解説も交えご紹介します。

それでは、基本のキであるクラウドネイティブからはじめまていきます。

クラウドネイティブ化の重要性とは

近年、多くの企業がクラウド移行を進める中で、単なるリフト&シフトではなく、クラウドネイティブなアプローチを採用することの重要性が増しています。クラウドネイティブとは、クラウド環境を前提にしたアーキテクチャ設計や開発手法を指し、コンテナ化、マイクロサービス、継続的デリバリー(CI/CD)などの技術を活用して、システムの俊敏性や拡張性を向上させるものです。

クラウドネイティブ化を進めることで、以下のようなビジネス価値を得ることができます。

  • 開発スピードの向上: アジャイル開発やDevOpsの推進により、サービス提供の迅速化が可能になる。
  • 運用コストの削減: サーバーレスやマイクロサービスの活用により、必要なリソースのみを使用し、ITコストを最適化できる。
  • 可用性とスケーラビリティの向上: オートスケーリングや分散システム設計により、高い可用性を維持しつつ、ビジネスの成長に対応できる。

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リファクタリングとクラウド移行の関係性

クラウド移行のアプローチには大きく分けて「リフト&シフト」「リプラットフォーム」「リファクタリング」「リアーキテクチャ」の4つがあります。その中でもリファクタリングは、アプリケーションのコードを最適化し、クラウドネイティブな環境でより効率的に動作させる手法です。

移行手法概要メリットデメリット
リフト&シフト既存のアプリケーションをそのままクラウドに移行移行が容易、初期コストが低いクラウドの利点を十分に活かせない
リプラットフォーム一部をクラウド向けに最適化(例:データベースの変更)一定の最適化が可能変更範囲が限定的
リファクタリングアプリケーションのコードやアーキテクチャを最適化クラウドの特性を最大限に活用初期投資と工数がかかる
リアーキテクチャ全面的にクラウドネイティブに再設計最大限のスケーラビリティと最適化が可能高コスト、高工数
リファクタリングとクラウド移行の関係性

リファクタリングは、レガシーシステムからの移行、リフト&シフトしたシステムのシステムアーキテクチャの変更、クラウドネイティブアーキテクチャへの変更、DevOpsの中でのリファクタリングなど様々なプロジェクトで実施されています。

リファクタリングを適切に行うことで、クラウドの持つ拡張性や可用性、コスト最適化といった特性を活かし、長期的なビジネス価値の向上が期待できます。

企業がデジタル変革を成功させるために必要な視点

デジタル変革(DX)を成功させるには、単なる技術導入にとどまらず、組織全体の変革が求められます。以下の3つの視点が重要です。

  1. ビジネス戦略と技術の整合性を取る
    • クラウドネイティブ化が事業成長にどのように寄与するのかを明確にし、ビジネスゴールと技術戦略を一致させる。
  2. 組織とプロセスの最適化
    • アジャイル開発やDevOpsを導入し、開発プロセスの迅速化と効率化を図る
    • SRE(Site Reliability Engineering)などの実践を取り入れ、運用の自動化と可用性向上を目指す。
  3. 人材育成と文化の変革
    • クラウドネイティブ技術の理解を深めるために、エンジニアへのトレーニングを実施。
    • 技術の変化に柔軟に対応できる組織文化を醸成する。

これらの視点を持ちながら、クラウドネイティブ化とリファクタリングを推進することで、企業の競争力を高め、持続的な成長を実現できます。

2. クラウドネイティブ化とリファクタリングの基礎

クラウドネイティブ化とリファクタリングの基礎

クラウドネイティブとは何か?

クラウドネイティブとは、クラウド環境の特性を最大限に活用し、アプリケーションの設計・開発・運用を最適化するアプローチです。

主に以下のような技術や手法を活用します。

  • マイクロサービスアーキテクチャ: アプリケーションを独立した小規模なサービスに分割し、それぞれが独立してスケール可能。
  • コンテナ技術(Docker、Kubernetes): アプリケーションのポータビリティとスケーラビリティを向上させる。
  • CI/CD(継続的インテグレーションと継続的デリバリー): 開発・テスト・デプロイの自動化により、迅速なリリースを実現。
  • Infrastructure as Code(IaC): 運用の自動化とスケーラビリティの確保。

リフト&シフト vs. リファクタリング vs. リアーキテクチャ

クラウド移行の戦略を決定する際には、リフト&シフト、リファクタリング、リアーキテクチャの違いを理解することが重要です。特にリファクタリングとリアーキテクチャは長期的なビジネス価値に大きく影響を与えます。

  • リフト&シフト: 迅速な移行が可能だが、クラウドのメリットを最大限に享受できない。
  • リファクタリング: コストと時間はかかるが、クラウドの特性を活かし、長期的な競争力を向上。
  • リアーキテクチャ: 最も大きな変革が必要だが、完全なクラウドネイティブ環境を構築できる。

企業におけるクラウド移行の現状と課題

多くの企業がクラウド移行を進める中で、技術的負債の解消、スキル不足、運用負荷の増大といった課題が顕在化しています。これらの課題を解決するためには、適切なクラウド戦略とリファクタリング計画が不可欠です。

3. リファクタリングがもたらす長期的なメリット

事業の俊敏性・拡張性の向上

リファクタリングを行うことで、既存システムをクラウドネイティブに近い形に最適化し、市場の変化に素早く対応できる基盤を整備できます。

特に、マイクロサービスへの分割やコンテナ技術の導入を進めることで、一部の機能だけを独立して改善や修正ができるため、全体システムを停止させるリスクを極小化できます。

  1. 需要の急増や急減に合わせてリソースを自動的にスケールアウト・スケールインできるため、拡張性の面でも大きなアドバンテージがあります。
  2. また、複数の開発チームが同時並行で作業できる体制を整えやすくなるため、サービス開発のリードタイムを短縮し、結果として新規事業の立ち上げや既存事業の拡大をスピーディーに進めることができます。

運用コスト削減とROIの最大化

クラウドの従量課金やオートスケーリングを活用できるよう、アプリケーションを最適化することがリファクタリングの大きな狙いです。

オンプレミス環境やレガシーアプリケーションのままでは、常に余剰リソースを確保しなければならない場合が多く、非効率なコスト構造を抱えがちです。

  1. リファクタリングでクラウド環境へ移行した企業の多くは、ピーク時のみリソースを追加し、通常時はリソースを縮小するといった柔軟な運用が可能になります。
  2. このように必要な分だけのインフラコストに抑えられるため、IT部門の運用コストを大幅に削減し、結果的にROI(投資対効果)の向上に寄与します。
  3. 具体例として、Netflixはオンプレミス環境から完全にAWSクラウドへ移行する際に、マイクロサービスアーキテクチャへリファクタリングを行いました。その結果、インフラ管理の負担を大幅に減らし、高可用性と柔軟なスケーリングを実現したと報告されています。

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技術的負債の解消と開発生産性の向上

レガシーコードやモノリシックな設計を長期間放置すると、保守や新機能追加の度に工数が膨らむだけでなく、チーム内での知見が属人化しやすくなります。リファクタリングは、これらの技術的負債を解消する絶好の機会でもあります。

  • コードの可読性やメンテナンス性を高めることで、バグ修正や新機能の追加にかかる時間が短縮できます。
  • 開発チームはコアビジネスに直結する機能開発にリソースを集中できるようになり、組織全体の生産性が向上します。
  • 技術スタックのモダナイズによって、最新の開発ツールや自動テストフレームワークの導入も円滑に進み、品質を担保しながら迅速なリリースサイクルを回すことが可能になります。

このように、リファクタリングはただコードをきれいにするだけではなく、ビジネス環境の変化に応じた柔軟な対応やコスト構造の改善、さらにはエンジニアリングチームの生産性向上にも大きく寄与します。最終的には企業の競争力を高め、継続的な成長を促す原動力となるのです。

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この記事を書いた人
株式会社APPSWINGBY
株式会社APPSWINGBY マーケティング

APPSWINGBY(アップスイングバイ)は、アプリケーション開発事業を通して、お客様のビジネスの加速に貢献することを目指すITソリューションを提供する会社です。

ご支援業種

情報・通信、医療、製造、金融(銀行・証券・保険・決済)、メディア、流通・EC・運輸 など多数

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監修
APPSWINGBY CTO川嶋秀一
株式会社APPSWINGBY  CTO 川嶋秀一

動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
Webシステム開発からアプリ開発、AI、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトを担当。C,C++,C#,JavaScript,TypeScript,Go,Python,PHP,Vue.js,React,Angular,Flutter,Ember,Backboneを中心に開発。お気に入りはGo。

APPSWINGBY CTO川嶋秀一
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動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
Webシステム開発からアプリ開発、AI、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトを担当。C,C++,C#,JavaScript,TypeScript,Go,Python,PHP,Vue.js,React,Angular,Flutter,Ember,Backboneを中心に開発。お気に入りはGo。