リファクタリング・ディフェンス戦略 ~AIフレンドリーネスの3要素

リファクタリング・ディフェンス戦略 ~AIフレンドリーネスの3要素

本記事は、「AIとデータを活用した「リファクタリング・ディフェンス戦略」」の続きです。前回の記事では、急激に減少を続ける「ゼロクリック検索」時代のメカニズムについてご紹介しました。

AI時代に生き残るための「リファクタリング・ディフェンス戦略」の手始めとして、AI検索の深層分析の続きをご紹介していきます。

前回の記事「AIとデータを活用した「リファクタリング・ディフェンス戦略」をまだお読みでない場合はこちらのリンクから是非ご覧ください。

では、さっそくはじめていきましょう!

AI検索の深層分析:なぜ旧来のシステム構造が通用しないのか

AI検索エンジンは、従来のキーワードベースのクローラーとは比較にならないほど高度で大量の情報処理を行っています。

米国で電力がひっ迫し、電力供給不足が原因でAI分野で中国に後れを取る可能性があると水面下でささやかれていますが、AIの高度な情報処理が社会を揺るがすほどの電力を消費する程の量が情報処理されているのです。

AIが情報をどのように取り扱うかを簡単に説明しますと、AIは情報を「解釈」し、「推論」し、「集約」します。

この過程において、旧来のシステム構造、特にモノリシック(一枚岩)で柔軟性に欠けるシステムが、AIにとって致命的な障壁となる場合があるのです。

もう少し具体的に見ていきましょう。

AIが欲するデータ構造:AIフレンドリーネスの3要素

AI検索エンジンが情報を「信頼できる回答」として採用するためには、AIが理解しやすい形でデータを提供する必要があります。

これを「AIフレンドリーネス」と呼び、以下の3つの要素が鍵となります。

1.構造化・半構造化データ(Structurization)

AIは、人間が読むためにデザインされたHTMLのテキストよりも、機械が処理しやすいように意味付けされたデータを好みます。

具体的には、データの仕様がJSON-LDスキーマでマークアップされていたり、リアルタイムの在庫情報がAPI経由で提供されたりすることを求める傾向にあります。

AIにとっては、構造化されたデータを直接「読み取り」、競合比較や要約に利用しやすい構造だということです。

2.データ品質(Data Quality)

AIは情報の正確性、完全性、一貫性を重視します。

システム内に古いデータや重複したデータが散在していると、AIはその情報源の信頼性を低く評価します。

AIが情報を集約・推論する際、矛盾したデータ(例:AページとBページで製品価格が異なる)を検出すると、その情報源全体の信頼スコアを低下させる可能性があります。

データ品質は、AIの推論結果の品質に直結すると考え、対策を練るべきでしょう。

3.データの鮮度とアクセス性(Freshness & Accessibility)

データの鮮度とアクセス性(Freshness & Accessibility)AIは最新の情報を好みます。

しかし、そのデータが社内システム(例:CRM、ERP)の奥深くにあり、Webからアクセスできない、あるいはAPI連携が困難な場合、そのデータはAIにとって「存在しないデータ」となります。

業界の調査によれば、データサイエンティストは作業時間の最大80%を、AIモデルの学習に使えるようデータを準備・クリーニングする作業に費やしています。

逆読みすれば、多くの企業システムがAIフレンドリーでないことの証左となるでしょう。

内部システムの「負債」がAI対応の足かせとなる現実

多くの企業が「AIフレンドリーネス」の重要性を理解していても、実行に移せない最大の原因は、「技術的負債」として知られる旧来のシステム構造にあります。

レガシーコードや複雑に絡み合ったシステムは、データのサイロ化を引き起こします。

例えば、

顧客データはCRMに…

製品データはPIMに…

在庫データはERPに…

様々なシステムにデータが分散し、それぞれが独自の古いフォーマットで保持されている状態です。

このような状態では、AIが必要とする「高品質で構造化された最新データ」をAPI経由で提供しようにも、莫大なコストと時間がかかります。

以下は、技術的負債がAI導入コストを増大させる要因をまとめてみたものです。

技術的負債の症状AI対応における障壁(コスト増大要因)
モノリシックな構造API連携が困難。特定データの抽出に大規模な改修が必要。
データのサイロ化データの前処理・統合コストが激増。AIの学習データ品質が低下。
ドキュメント不足・属人化データ構造の解析が困難。リファクタリングの工数が見積もれない。
手動テストへの依存システム改修時のデグレードリスクが高く、迅速なAI対応が不可能。
AI導入コストを増大させる相関表

AI導入における最大のボトルネックは、AIモデルの構築そのものではなく、この「データの前処理とクリーニング」のコストです。

この技術的負債こそが、AI検索時代における最大の経営リスクであることを認識しなくてはなりません。

次回は、ディフェンス戦略の実践フェーズについてご紹介していきます。

APPSWINGBYは、最先端の技術の活用と、お客様のビジネスに最適な形で実装する専門知識を有しております。AI開発から既存の業務システムへの統合などの他、リファクタリング、リアーキテクチャ、DevOps環境の構築、ハイブリッドクラウド環境の構築、システムアーキテクチャの再設計からソースコードに潜むセキュリティ脆弱性の改修の他、テクノロジーコンサルティングサービスなど提供しています。

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この記事を書いた人
株式会社APPSWINGBY
株式会社APPSWINGBY マーケティング

APPSWINGBY(アップスイングバイ)は、アプリケーション開発事業を通して、お客様のビジネスの加速に貢献することを目指すITソリューションを提供する会社です。

ご支援業種

情報・通信、医療、製造、金融(銀行・証券・保険・決済)、メディア、流通・EC・運輸 など多数

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監修
APPSWINGBY CTO川嶋秀一
株式会社APPSWINGBY  CTO 川嶋秀一

動画系スタートアップや東証プライム上場企業のR&D部門を経て、2019年5月より株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTO。
Webシステム開発からアプリ開発、AI導入、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトまで幅広く携わる。
C, C++, C#, JavaScript, TypeScript, Go, Python, PHP, Java などに精通し、Vue.js, React, Angular, Flutterを活用した開発経験を持つ。
特にGoのシンプルさと高パフォーマンスを好み、マイクロサービス開発やリファクタリングに強みを持つ。
「レガシーと最新技術の橋渡し」をテーマに、エンジニアリングを通じて事業の成長を支えることに情熱を注いでいる。

APPSWINGBY CTO川嶋秀一
株式会社APPSWINGBY  CTO 川嶋秀一

動画系スタートアップや東証プライム上場企業のR&D部門を経て、2019年5月より株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTO。
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C, C++, C#, JavaScript, TypeScript, Go, Python, PHP, Java などに精通し、Vue.js, React, Angular, Flutterを活用した開発経験を持つ。
特にGoのシンプルさと高パフォーマンスを好み、マイクロサービス開発やリファクタリングに強みを持つ。
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