2025年に向けたリファクタリング戦略
前回は、「DX成功の鍵はリファクタリング?2025年を見据えた最新戦略」というタイトルでDXの基礎からポイントまでをご紹介しました。今回は、前回ご紹介しきれなかった”2025年に向けたリファクタリング戦略”についてご紹介します。
前回の記事(DX成功の鍵はリファクタリング?2025年を見据えた最新戦略)はこちらからご覧ください。
DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、競争力を維持するために、多くの企業が既存システムの見直しに取り組んでいます。その中で重要な役割を担うのが「リファクタリング」です。今回は、”2025年に向けたリファクタリング戦略”と題して、DXの推進の中で重要な役割を担うリファクタリングの戦略についてご紹介していきます。
2025年に向けたリファクタリング戦略
最新技術を活用したリファクタリング
一般的にリファクタリングというと、コードを書き変えることが主な作業と思われている方も多いと思います。しかし、実際のプロジェクトでは、単にコードを書き換える作業だけで終わることはありません。リファクタリングを行うと同時に、セキュリティの強化やコストの最適化、パフォーマンスの向上、運用管理性の向上、ビルドからテストなど様々な作業の自動化などを行うことが一般的になっています。
リファクタリングは、もはや過去のコードを整理するだけの作業ではなく、クラウドやAIといった最新技術を積極的に活用することで、より効率的かつ効果的に、そして未来を見据えたシステムへと進化させることができる重要な作業工程のひとつとなっているのです。
クラウドネイティブ化による飛躍
クラウドの恩恵を最大限に受けるためには、既存システムをクラウドネイティブなアーキテクチャへとリファクタリングすることが重要です。これをリアーキテクチャやリアーキテクトと呼びます。
クラウド環境への移行と並行して、マイクロサービス化、コンテナ化、サーバーレス化など、クラウドネイティブなアーキテクチャへのリファクタリングを進めることで、スケーラビリティ、可用性、保守性を向上できます。AWS Lambda、Azure Functions、Google Cloud Functionsなどのサーバーレスプラットフォームを活用することで、インフラ管理の負担を軽減し、開発効率を高めることも可能です。
巨大なモノリシックなアプリケーションを、独立性の高い小さなサービス(マイクロサービス)に分割することで、開発の柔軟性、デプロイのスピード、障害の影響範囲の抑制などが実現できます。 各マイクロサービスはAPIで連携し、独立して開発・運用できるため、チームごとの自律的な開発を促進し、市場のニーズへの迅速な対応を可能にします。
クラウドへ移行した多くのシステムは、リホストと呼ばれるオンプレミスで採用していたアーキテクチャをほとんど変えずにクラウドへ移行したシステムのまま運用されているケースが少なくありませんが、現代のリファクタリングプロジェクトでは、マイクロサービス化、コンテナ化、サーバーレス化など、クラウドネイティブなアーキテクチャへのリアーキテクチャを行い、クラウドネイティブなアーキテクチャにあわせた最適なコードを作り出すためにリファクタリングを進めます。その結果、コストの最適化の他、スケーラビリティ、可用性、保守性を向上を実現するのです。
キーとなる技術について、一部、ご紹介しておきます。
1.コンテナ化
Dockerなどのコンテナ技術を活用し、アプリケーションとその依存関係をパッケージ化することで、環境依存の問題を解消し、開発環境、テスト環境、本番環境間での一貫性を確保します。 Kubernetesなどのコンテナオーケストレーションツールと組み合わせることで、コンテナ化されたアプリケーションのデプロイ、スケーリング、管理を自動化し、運用効率を大幅に向上することができる重要な技術ですので、DXを行う際のリアーキテクチャ・リファクタリングには欠かすことのできない技術となっています。
サーバーレス化
AWS Lambda、Azure Functions、Google Cloud Functionsなどのサーバーレスプラットフォームを活用することで、インフラ管理の負担を軽減し、開発者はコードの記述に集中できます。 これらのサービスは、開発時間の短縮を実現し、開発からリリースまでの生産性を向上させるだけではなく、運用管理ポイントを減らすことで運用管理にかかる工数の他、技術の学習や引継ぎなど人にかかる様々なコストを削減することが可能になりますので、サーバレス化もDXを行う際のリファクタリングプロジェクトでは積極的に取り入れる技術となっています。
上記以外にも、サーバーレスアーキテクチャでは、必要な時に必要な分だけリソースが自動的に割り当てられるため、コスト効率の高いシステムをつくりあげることができる技術となっています。
アジャイル開発とリファクタリング
アジャイル開発とリファクタリングは、非常に相性の良い組み合わせです。アジャイル開発では、短いサイクルで開発とリリースを繰り返すため、リファクタリングを継続的に行うことで、技術的負債の蓄積を防ぎ、変化への対応力を高めることができます。
スプリントごとにリファクタリングの時間を設ける、あるいは、継続的インテグレーション/継続的デリバリー(CI/CD)パイプラインにリファクタリングプロセスを組み込むことで、効率的な開発体制を構築できます。
段階的なリファクタリング計画の重要性について、簡単にまとめておきます。
段階的なリファクタリング計画の重要性
- パフォーマンス改善: ボトルネックとなっている箇所を特定し、パフォーマンス改善を目的としたリファクタリングを実施。
- セキュリティ強化: セキュリティ脆弱性のある箇所を修正し、セキュリティ対策を強化。
- クラウド移行: クラウド環境への移行を前提としたリファクタリングを実施。
- 機能追加: 新機能の追加や既存機能の改善に合わせて、リファクタリングを実施。
AIによる自動化
AI技術を活用することで、コード解析、テスト自動化、バグ検出などを効率化し、リファクタリングプロセスを加速できます。
例えば、まだまだ粗削りな部分はありますが、ソースコードをAIに学習させることで、潜在的なバグや技術的負債を自動的に検出するツールが登場しています。積極的にそれらのツールを検証し、実際のプロジェクトに取り入れていくことで、労力の削減、生産性の向上を実現することができます。
昔からエンジニア同志の間では言われていることですが、”コンピューターに任せることができることはすべてコンピューターに任せる“という思想をより実現しやすい状況になってきました。
リファクタリングを成功させるためのポイント
リファクタリングは、システムの品質向上、開発効率向上、そしてビジネスの成長に大きく貢献する一方、適切な計画と実行なしに進めると、予期せぬ問題やリスクに直面する可能性もあります。リファクタリングを成功に導くためには、以下のポイントを踏まえることが重要です。
1.明確な目標設定とスコープ定義
リファクタリングに着手する前に、まず「なぜリファクタリングを行うのか?」という目的を明確にすることが重要です。いざリファクタリングをスタートさせると、やりたいことが山ほどでてくるものですが、リファクタリングの目的を明確化し、達成すべき目標を設定しておくことで、プロジェクトの目標がぶれずにプロジェクトを進めることができるようになります。
効果測定とフィードバック
リファクタリングの効果を測定し、フィードバックを得る仕組みを構築しましょう。
チームワークとコミュニケーション
リファクタリングは、開発チーム全体の協力が不可欠です。プロダクトオーナーと開発チーム全体でリファクタリングの重要性を理解し、協力体制を築くことで、情報の共有と理解がスムーズになり、リファクタリング作業も効率的に進めることができるようになります。
継続的な改善と自動化
リファクタリングは、一度実施して終わりではなく、継続的に行うべき活動です。リファクタリングを継続的に行うことで、システムの品質を大幅に向上にさせ、機能改善や新規機能のリリース、セキュリティ対応など必要不可欠な作業をスムーズに行うことができるようになります。 また、リファクタリングプロジェクトでは、運用管理フェーズに入ったシステムで必ず発生するだろうタスクをできるだけ自動化させておくことが、運用管理コストの削減や生産性向上につながります。自動化できる可能性がある作業をしっかりと自動化させておくことが重要です。
リファクタリングを成功させるためには、技術的な側面だけでなく、チームワーク、コミュニケーション、継続的な改善、リスク管理など、多岐にわたる要素を考慮する必要があります。上記のポイントを踏まえ、計画的かつ戦略的にリファクタリングを進めることで、システムの品質向上、開発効率向上、そしてビジネスの成長に大きく貢献できるでしょう。
リファクタリングで未来を創造
リファクタリングは、単なる技術的な改善作業ではありません。企業の成長と競争力強化、そして未来を創造するための重要な戦略です。2025年以降も勝ち続けるためには、リファクタリングを継続的に実施し、変化に柔軟に対応できるシステムを構築していく必要があります。
リファクタリングがもたらす企業の成長と競争力強化
リファクタリングによって、以下のような効果が期待できます。
- 開発速度の向上: コードの可読性や保守性が向上することで、開発速度が向上し、新しい機能やサービスを迅速に市場に投入できます。
- 品質の向上: バグや脆弱性を修正することで、システムの品質が向上し、顧客満足度を高めることができます。
- コスト削減: 運用コストや保守コストを削減することができます。
- 柔軟性の向上: 変化に柔軟に対応できるシステムを構築することで、ビジネスの成長を促進することができます。
- 人材育成: 開発者のスキル向上やモチベーション向上に繋がります。
リファクタリングは、これらの効果を通じて、企業の成長と競争力強化に大きく貢献します。
2025年以降も勝ち続けるための継続的な改善
2025年以降も、デジタル技術は進化し続け、ビジネス環境はさらに変化していくでしょう。そのため、リファクタリングを一度実施して終わりにするのではなく、継続的に改善していくことが重要です。
- 定期的な見直し: 定期的にシステムを見直し、リファクタリングの必要性を判断する。
- 最新技術の導入: クラウド、AIなど、最新技術を積極的に導入し、リファクタリングを効率化する。
- 自動化: テスト自動化など、リファクタリングプロセスを自動化する。
- 継続的な学習: 開発者は、常に新しい技術や手法を学び続ける。
継続的な改善によって、システムを常に最適な状態に保ち、変化に迅速に対応できる体制を構築することで、2025年以降も勝ち続けることができるでしょう。
リファクタリングは、未来への投資です。
今、リファクタリングに取り組むことで、未来のビジネスを成功に導くことができるでしょう。
この記事を書いた人
株式会社APPSWINGBY マーケティング
- ご支援業種
情報・通信、医療、製造、金融(銀行・証券・保険・決済)、メディア、流通・EC・運輸 など多数
監修
株式会社APPSWINGBY CTO 川嶋秀一
動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
Webシステム開発からアプリ開発、AI、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトを担当。C,C++,C#,JavaScript,TypeScript,Go,Python,PHP,Vue.js,React,Angular,Flutter,Ember,Backboneを中心に開発。お気に入りはGo。
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APPSWINGBYのリファクタリングサービスでは、外部のふるまいを変更することなくコードの明瞭性を向上させ、不必要な複雑性を排除し、コードを最適な状態にします。これにより、保守性が向上し、将来の変更や追加が容易になります。また、最新の開発ベストプラクティスに基づいてコードをアップデートすることで、セキュリティの向上やパフォーマンスの最適化も実現します。