PCMとは

PCMは、アナログ信号(主に音声)をデジタル信号に変換する際の最も基本的な方式の一つであり、信号の標本化(サンプリング)、量子化、および符号化によってデジタルデータとして表現する技術のことです。

PCMの概要とデジタル化の役割

PCM(Pulse Code Modulation、パルス符号変調)は、1930年代に発明された技術であり、現代のデジタル通信、デジタルオーディオ、デジタル電話など、広範な分野で音声や映像などのアナログ情報をデジタルデータとして扱うための基盤技術となっています。

現実世界のアナログ信号は、時間的にも振幅的にも連続的な値を取りますが、コンピュータや通信システムは離散的なデジタルデータしか処理できません。

PCMは、この連続的な信号をデジタルシステムで扱えるように、時間軸と振幅軸の両方で離散化するプロセスを提供します。

主な目的は、アナログ信号をノイズや劣化に強く、高品質なまま長距離伝送・保存が可能なデジタル形式に変換することです。

PCMの3つの主要なステップ

PCMのデジタル化プロセスは、以下の3つの段階から構成されます。これらのステップは、前述の「A-D変換」のプロセスと同一です。

1. 標本化(Sampling)

  • 動作: 連続的なアナログ信号を、非常に短い一定の間隔(サンプリング周期)で区切り、その瞬間の信号の振幅値を採取します。
  • サンプリング周波数: 1秒間に採取する回数をサンプリング周波数(fs​)と呼びます。
  • 理論的根拠(標本化定理): 標本化定理(ナイキスト・シャノンの定理)によれば、元の信号に含まれる最高周波数(fmax​)の2倍以上の周波数で標本化すれば、元の信号の情報を失うことなく正確に復元できるとされています。たとえば、人間の可聴域が約20kHzであるため、CD-DAではその2倍強である44.1kHzが採用されています。fs​≥2fmax​

. 量子化(Quantization)

  • 動作: 標本化によって得られた連続的な振幅値を、事前に定めた有限の段階(レベル)に丸める(離散化する)プロセスです。
  • 量子化ビット数(分解能): 段階の細かさは、量子化ビット数によって決まります。たとえば、16ビット量子化であれば 216=65,536 段階の振幅を表現できます。
  • 影響: 量子化の際に生じる誤差を量子化誤差と呼びます。ビット数が多いほど誤差が小さくなり、より原音に忠実な再現(SN比の向上)が可能になります。

3. 符号化(Coding)

  • 動作: 量子化された各レベルに、対応する二進数のデジタルコード(パルス符号)を割り当てます。
  • 結果: これにより、アナログ信号は、時間軸に沿ったビット列(デジタルデータ)として表現されます。このビット列が、デジタル伝送や記録の対象となります。

PCMの派生と応用

PCMは、そのシンプルさと高品質性から、以下の主要な分野で利用されています。

  • デジタルオーディオ: CD、DVD、Blu-ray Disc、WAVファイルなど、ほとんどの非圧縮デジタルオーディオフォーマットの基本形式です。
  • 電話通信: ISDNやVoIP(IP電話)など、現代のデジタル通信網における音声データの標準的な符号化方式です。
  • 映像: デジタルビデオ(例:SDI、HDMI内の非圧縮音声)の音声トラックとして利用されます。

なお、PCMをベースに、伝送効率を高めるためにデータ量を削減した方式として、DPCM(Differential PCM)ADPCM(Adaptive Differential PCM)などの派生技術も存在します。

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