RAIDとは

RAIDは、複数の物理的なハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)を仮想的に一つの論理的なドライブとして統合し、データの冗長性(耐障害性)とパフォーマンスの向上を実現する技術、およびその構成方式のことです。

RAIDの概要と導入目的

RAID(Redundant Array of Independent Disks、または Redundant Array of Inexpensive Disks)は、サーバーやストレージシステムにおいて、データの安全性とアクセス速度を向上させるための基盤技術です。

単一のドライブを使用する構成に比べ、RAIDは複数のドライブにデータを分散して書き込むことで、以下の主要な目的を達成します。

  1. 耐障害性の向上(冗長性): ドライブの一つが故障した場合でも、データが失われることなく、システムが停止せずに稼働し続けることを可能にします。
  2. パフォーマンスの向上: データの読み書きを複数のドライブで同時に行うため、データ転送速度が向上します。

RAIDは、専用のRAIDコントローラ(ハードウェア)またはOSのソフトウェア機能(ソフトウェアRAID)によって制御されます。

RAIDの主要なレベルと構成

RAIDには、データの分散方法や冗長性の持たせ方の違いにより、いくつかの標準的なレベル(RAIDレベル)が定義されています。

1. RAID 0(ストライピング)

  • 動作原理: データを複数のディスクに細かく分割して並列に書き込みます(ストライピング)
  • 冗長性: 冗長性はありません。ディスクが1台でも故障すると、全てのデータが失われます。
  • 利点: データの読み書きがディスクの台数分だけ並列化されるため、最も高いパフォーマンス(特に高速なデータ転送速度)が得られます。

2. RAID 1(ミラーリング)

  • 動作原理: 同じデータを完全に複製(ミラーリング)して、同時に2台のディスクに書き込みます。
  • 冗長性: 極めて高い冗長性を持ちます。1台のディスクが故障しても、もう1台のディスクにデータが完全に残っているため、システムの継続稼働が可能です。
  • 利点: 読み取り性能は向上し、書き込みは2台への同時書き込みになるため若干のオーバーヘッドが生じます。可用性が最優先されるシステムに適しています。
  • 容量効率: 使用できる容量は全ディスク容量の半分です(例: 2TBディスク2台の場合、利用可能容量は2TB)。

3. RAID 5(パリティ分散)

  • 動作原理: データをディスク全体にストライピングすると同時に、データの整合性を保証するためのパリティ情報もディスク全体に分散して書き込みます。
  • 冗長性: 任意の1台のディスクの故障に耐えることができます。故障時には、残りのデータとパリティ情報から失われたデータを再構築(リビルド)できます。
  • 利点: 優れた読み取りパフォーマンス、比較的良好な書き込みパフォーマンス、および容量効率のバランスが取れています。最も広く一般的に使用されるRAIDレベルです。
  • 容量効率: $N$ 台のディスクで構成する場合、利用可能容量は全容量の $(N-1)/N$ となります(パリティ用に1台分の容量を消費)。

データの再構築(リビルド)は、パリティ情報 $P$ が、元のデータブロック $D_1, D_2, \dots$ の排他的論理和(XOR)で計算されることを利用します。

P = D_1 \oplus D_2 \oplus \dots \oplus D_n

4. RAID 6(二重パリティ)

  • 動作原理: RAID 5と同様にデータをストライピングしますが、2種類の独立したパリティ情報(PパリティとQパリティなど)をディスク全体に分散して書き込みます。
  • 冗長性: 任意の2台のディスクの同時故障に耐えることができます。
  • 利点: 極めて高い耐障害性が得られます。大容量ディスクを使用する場合や、リビルド時間が長く、その間に別のディスクが故障するリスクがある環境に適しています。
  • 容量効率: $N$ 台のディスクで構成する場合、利用可能容量は全容量の $(N-2)/N$ となります(パリティ用に2台分の容量を消費)。

5. RAID 10(RAID 1 + 0)

  • 動作原理: RAID 1(ミラーリング)を構成したセットを、さらにRAID 0(ストライピング)で束ねる複合構成です。
  • 冗長性: 非常に高い冗長性を提供します。各ミラーセットから1台ずつ、計2台のディスクが故障してもシステムは継続できます(ただし、同じミラーセット内の2台が同時に故障するとデータが失われます)。
  • 利点: RAID 0の高速性と、RAID 1の高い耐障害性の両方を兼ね備えています。特に、I/O性能と可用性の両方が最重要とされるデータベースシステムなどに適しています。
  • 容量効率: 全ディスク容量の半分が利用可能です。

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