RISCとは

RISCは、マイクロプロセッサの設計思想の一つであり、命令セットを単純化し、命令数を削減することで、処理速度の高速化と消費電力の低減を図るアーキテクチャのことです。

RISCの概要と設計思想

RISC(Reduced Instruction Set Computer、縮小命令セットコンピュータ)は、複雑な命令を排除し、単純で基本的な命令のみで構成された命令セットを持つプロセッサの設計アプローチです。この思想は、1980年代初頭に、従来のプロセッサ(後のCISC)が持つ複雑で多機能な命令セットの非効率性に対抗する形で提唱されました。

従来のプロセッサ設計(CISC: Complex Instruction Set Computer)では、一つの命令でメモリからのデータロード、演算、結果のストアといった複数の処理を一度に実行できる複雑な命令が多数含まれていました。しかし、これらの複雑な命令の多くは、コンパイラによってあまり利用されず、結果として回路の複雑化と処理の遅延を招いていました。

RISCの主な目的は、命令の実行を単純化し、ほとんどの命令を1クロックサイクルで完了させることで、全体的な処理速度を向上させることです。複雑な処理は、単純なRISC命令を複数組み合わせること(ソフトウェア処理)によって実現されます。

RISCアーキテクチャの主要な特徴

RISCプロセッサがCISCと比較して高速で効率的な理由として、以下の構造的特徴が挙げられます。

1. 命令の単純化と固定長命令

  • 単純な命令セット: 命令の種類と数が少なく、一つ一つの命令が単純な処理(例:加算、ロード、ストア)に限定されています。
  • 固定長命令: ほとんどの命令が一定の長さ(例:32ビット)で統一されています。これにより、命令のデコード(解釈)とパイプライン処理が非常に単純かつ迅速になります。

2. ロード/ストアアーキテクチャ

RISCでは、演算命令(例:加算、論理演算)は、レジスタ間でのみ実行されるという原則があります。メモリとのデータのやり取りは、専用のロード命令(メモリからレジスタへ)とストア命令(レジスタからメモリへ)のみで行われます。

これにより、演算処理中に複雑なメモリアクセスを意識する必要がなくなり、パイプライン処理の効率が向上します。

3. レジスタ数の増加

単純なロード/ストア命令を多用し、レジスタ間の演算を基本とするため、RISCプロセッサはCISCプロセッサよりも多数の汎用レジスタを搭載しています。これにより、頻繁に使用するデータをレジスタ内に保持できる時間が増え、データアクセスによる遅延が減少します。

4. ハードウェア制御の単純化

命令が単純であるため、プロセッサ内の制御回路をハードウェア(ワイヤードロジック)で設計することが可能になり、CISCのように複雑なマイクロコードによる制御が不要になります。これにより、回路が簡潔になり、命令の実行速度が向上し、消費電力が削減されます。

RISCの応用と普及

RISCアーキテクチャは、その高い電力効率と処理速度から、現代の多くの分野で支配的な地位を占めています。

  • モバイルデバイス: スマートフォンやタブレットに広く採用されているArmアーキテクチャは、代表的なRISCベースの設計であり、低消費電力と高性能を両立させています。
  • サーバー: サーバー向け高性能CPUの一部も、RISCの設計思想を採用しています。
  • 組み込みシステム: 自動車や家電製品などの組み込みシステムにおいても、小型で低コスト、低消費電力であるRISCコアが多く利用されています。
  • 独自開発: 近年注目されているオープンソースの命令セットアーキテクチャであるRISC-Vも、このRISCの原則に基づいています。

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