SHA-2とは

SHA-2は、任意の長さのデータから、固定長で暗号学的に安全なハッシュ値を生成するためにNIST(アメリカ国立標準技術研究所)によって標準化された暗号学的ハッシュ関数群であり、先行するSHA-1の脆弱性に対処し、現在、最も広く利用されているハッシュ標準の一つのことです。

SHA-2の概要と設計の背景

SHA-2(Secure Hash Algorithm 2)は、米国家安全保障局(NSA)によって設計され、2001年にNIST(National Institute of Standards and Technology)によって連邦情報処理標準(FIPS PUB 180-2)として標準化された暗号学的ハッシュ関数のファミリーです。

ハッシュ関数は、入力データ(メッセージ)の完全性検証や、デジタル署名におけるメッセージダイジェストの生成など、暗号技術の基盤として極めて重要な役割を果たします。

SHA-2は、先行するSHA-1が理論的に衝突攻撃を受ける可能性が指摘された(後に実際に実用的な攻撃が成功)ことを受け、より安全性の高い代替策として開発されました。SHA-2のファミリーには、異なるビット長を持つ複数のバリエーションが含まれており、セキュリティ要件に応じて選択されます。

主な目的は、MD5やSHA-1で露呈した衝突耐性(異なる入力から同じハッシュ値が生成されることへの耐性)の問題を克服し、長期的な暗号学的セキュリティを確保することです。

SHA-2の技術的特徴とバリエーション

SHA-2のアルゴリズムは、先行するMD5やSHA-1と同じくMerkle-Damgård構造に基づいていますが、より複雑な操作と長いハッシュ長を採用しています。

1. SHA-2の主要なバリエーション

SHA-2ファミリーには、

名称出力ハッシュ長内部処理のブロックサイズ
SHA-256256ビット512ビット
SHA-384384ビット1024ビット
SHA-512512ビット1024ビット
SHA-224224ビット512ビット

最も広く利用されているのは、ハッシュ長が256ビットのSHA-256であり、これはビットコインなどのブロックチェーン技術や、SSL/TLS証明書、SSH通信など、現代のほぼすべてのセキュリティプロトコルで標準的に採用されています。

2. 基本構造と処理の特徴

SHA-2の処理は、入力メッセージを特定のブロックサイズ(例:SHA-256では512ビット)に分割し、圧縮関数を用いて複雑な変換を繰り返し適用する構造をとります。

  • パディング: 入力メッセージは、その長さがブロックサイズの倍数となるようにパディング(詰め物)されます。
  • 初期ハッシュ値: 処理は、固定された初期ハッシュ値(IV)から開始されます。
  • ワード拡張とラウンド処理: メッセージブロックは、内部でより大きな「ワード」に拡張され、このワードに対して、論理演算、ビットシフト、ローテート(循環シフト)といった多数の非線形な操作を含む多数のラウンド(例:SHA-256は64ラウンド)が実行されます。
  • 圧縮関数: 各メッセージブロックの処理が完了すると、それまでのハッシュ値と組み合わされて新しいハッシュ値が生成されます。

3. 頑健性の向上

SHA-2は、SHA-1と比較して、より複雑な非線形関数と、より多くのラウンドを使用することで、入力のわずかな変化が出力に大きく影響する雪崩効果を高めています。また、長いハッシュ長(256ビット以上)を採用することで、衝突を見つけるために必要な計算量が膨大になり、現在の計算能力では事実上不可能なレベルの衝突耐性を提供します。

応用分野

SHA-256などのSHA-2ファミリーは、現代のデジタル社会において、データの信頼性とセキュリティを保証する基盤技術となっています。

  • ウェブセキュリティ: SSL/TLS通信におけるデジタル証明書(HTTPS)の署名アルゴリズムとして。
  • デジタル署名: 文書やプログラムの作成者が本物であることを証明し、改ざんがないことを保証するために。
  • パスワードのハッシュ化: データベースにパスワードを平文で保存せず、不可逆なハッシュ値として保存するために。
  • ブロックチェーン: トランザクションの検証、ブロックの整合性維持、プルーフ・オブ・ワークの計算など、暗号通貨の根幹技術として。

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