SISRとは

SISRは、単一の低解像度画像(Low Resolution Image)から、より高精細で高解像度の画像(High Resolution Image)を推定・復元する画像処理タスクのことであり、ディープラーニング技術の発展により、従来の線形補間手法では不可能であった失われた詳細情報(高周波成分)の復元を実現している技術領域のことです。

SISRの概要と超解像技術の課題

SISR(Single Image Super-Resolution、単一画像超解像)は、画像処理分野における基本的な課題の一つです。デジタルカメラやスマートフォンなどで撮影された画像や動画は、その解像度が物理的なセンサーの限界やストレージ容量の制約を受けるため、常に高解像度であるとは限りません。

低解像度画像から高解像度画像を生成する処理は、本質的に不良設定問題(Ill-posed Problem)です。なぜなら、1つの低解像度ピクセルは、複数の異なる高解像度ピクセルから生成されている可能性があり、その逆写像(Inverse Mapping)は一意に定まらないためです。

従来の超解像手法(例:バイキュービック補間)は、周囲のピクセルの色や輝度を基に平均化して新しいピクセルを生成するため、結果としてぼやけた(高周波成分が失われた)画像になりがちでした。

主な目的は、失われた詳細情報やテクスチャを人工的に、かつ現実的に「推測」し、視覚的品質と客観的評価の両方で高精細な画像を生成することです。

ディープラーニングによるSISRの進展

SISRの分野は、2014年に畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を導入したSRCNN(Super-Resolution Convolutional Neural Network)が登場して以来、劇的な進化を遂げました。ディープラーニングを用いることで、低解像度と高解像度の間の複雑な非線形写像を学習することが可能になり、従来の線形手法を大きく上回る性能を発揮しています。

1. 学習のターゲット(教師データ)

SISRモデルの学習では、対応する低解像度画像 $X$ と、その真の高解像度画像 $Y$ のペアが教師データとして使用されます。ネットワーク $F$ は、以下の関係を近似するように訓練されます。

F(X) \approx Y

ここで、ネットワークの出力 $F(X)$ は推定された高解像度画像 $\hat{Y}$ です。

2. 代表的なアーキテクチャ

  • 残差学習(Residual Learning): VDSR(Very Deep Super-Resolution)のように、低解像度画像と高解像度画像の間の残差(失われた情報)のみを学習する手法。深いネットワークでも学習が安定し、性能が向上します。
  • サブピクセル畳み込み(Sub-pixel Convolution): ESPCNのように、拡大処理をネットワークの最終段階まで遅らせ、低解像度空間で特徴抽出を行うことで、計算効率を大幅に向上させる手法。
  • 敵対的学習(Adversarial Learning): SRGAN(Super-Resolution Generative Adversarial Network)のように、GAN(敵対的生成ネットワーク)を利用し、画像が本物に近いか(現実的か)を評価する識別器を用いて訓練することで、客観的指標だけでなく、人間の視覚的な品質を向上させる手法。

SISRの評価指標

SISRモデルの性能を客観的に評価するためには、主に以下の指標が用いられます。

  1. PSNR(Peak Signal-to-Noise Ratio、ピーク信号対雑音比): 復元された画像と真の高解像度画像との間の平均二乗誤差(MSE)に基づいて計算される指標で、数値が高いほどノイズが少なく、元の画像に近いことを示します。
  2. SSIM(Structural Similarity Index Measure、構造的類似性指標): 画像の輝度、コントラスト、構造の3つの要素に基づいて類似度を評価する指標で、人間の知覚により近い評価を提供します。値は $0$ から $1$ の間をとり、$1$ に近いほど類似性が高いことを示します。

関連用語

深層学習・ディープラーニング | 今更聞けないIT用語集
畳み込みニューラルネットワーク | 今更聞けないIT用語集
AIソリューション

お問い合わせ

システム開発・アプリ開発に関するご相談がございましたら、APPSWINGBYまでお気軽にご連絡ください。

APPSWINGBYの

ソリューション

APPSWINGBYのセキュリティサービスについて、詳しくは以下のメニューからお進みください。

システム開発

既存事業のDXによる新規開発、既存業務システムの引継ぎ・機能追加、表計算ソフトによる管理からの卒業等々、様々なWebシステムの開発を行っています。

iOS/Androidアプリ開発

既存事業のDXによるアプリの新規開発から既存アプリの改修・機能追加まで様々なアプリ開発における様々な課題・問題を解決しています。


リファクタリング

他のベンダーが開発したウェブサービスやアプリの不具合改修やソースコードの最適化、また、クラウド移行によってランニングコストが大幅にあがってしまったシステムのリアーキテクチャなどの行っています。