アベイラビリティゾーンとは

アベイラビリティゾーン(Availability Zone: AZ)とは、クラウドコンピューティングサービス(特にAmazon Web Services (AWS), Microsoft Azure, Google Cloud Platform (GCP) など)において、単一のリージョン内にある、物理的に独立した複数のデータセンター(またはデータセンター群)のことを指します。

各アベイラビリティゾーンは、それぞれ独立した電源、冷却システム、ネットワーク接続を備えており、あるAZで障害が発生しても、他のAZのサービスに影響が及ばないように設計されています。

アベイラビリティゾーンの基本的な概念

アベイラビリティゾーンの主な目的は、単一のデータセンターにおける障害(例: 停電、ネットワーク障害、自然災害など)が、そのリージョン全体のサービスに影響を与えるリスクを軽減し、システムの高可用性(High Availability)と耐障害性(Fault Tolerance)を向上させることにあります。

主な概念は以下の通りです。

  1. リージョン(Region): クラウドサービスプロバイダがサービスを提供している特定の地理的エリアを指します。例えば、AWSの「東京リージョン」やAzureの「東日本リージョン」などがあります。通常、リージョンは複数のアベイラビリティゾーンを含んでいます。
  2. 物理的独立性: 同一リージョン内のアベイラビリティゾーン間は、通常、低遅延のネットワークで接続されていますが、互いに十分な距離(数キロメートルから数十キロメートル)を置いて配置され、独立したインフラ(電源、冷却、ネットワーク、物理的セキュリティなど)を持っています。これにより、あるAZの障害が他のAZに波及する「単一障害点(Single Point of Failure: SPoF)」を排除します。
  3. 高可用性(High Availability): アプリケーションやサービスを複数のAZに分散してデプロイすることで、あるAZが完全に停止するような大規模な障害が発生しても、残りのAZでサービスを継続できます。
  4. 耐障害性(Fault Tolerance): システム全体が個々のコンポーネントの故障に耐え、機能を維持する能力を指します。AZは、この耐障害性を向上させるための重要な構成要素です。

アベイラビリティゾーンの重要性と利点

アベイラビリティゾーンは、クラウド上で堅牢なシステムを構築する上で不可欠な要素です。

  1. 単一障害点のリスク軽減: 一つのデータセンターの障害が、システム全体の停止に繋がるリスクを排除します。電力供給の途絶、大規模なネットワーク障害、火災、洪水といった災害が発生した場合でも、別のAZにデプロイされたサービスは影響を受けずに稼働を継続できます。
  2. 高可用性の実現: アプリケーションのインスタンスやデータベースのレプリカを複数のAZに分散して配置することで、プライマリのAZに問題が発生した場合でも、自動的または手動で他のAZにフェイルオーバーし、サービスの中断時間を最小限に抑えることができます。
  3. 災害対策(Disaster Recovery: DR)の容易化: 同一リージョン内のAZ間は比較的近い距離にあるため、低遅延でのデータ同期やバックアップが可能です。これにより、リージョン内の障害対策(高可用性)と、リージョン全体に影響する可能性のある大規模災害対策(災害復旧)の両方に対応しやすくなります。
  4. ロードバランシングとパフォーマンス最適化: 複数のAZにサービスインスタンスを分散し、ロードバランサーを通じてトラフィックを振り分けることで、AZ間で負荷を分散し、全体的なアプリケーションのパフォーマンスと応答性を向上させることができます。
  5. 地理的近接性: 同じリージョン内のAZは地理的に近接しているため、AZ間のネットワーク遅延が非常に低く抑えられます(通常、数ミリ秒以下)。これは、データベースの同期や分散アプリケーションのコンポーネント間通信において非常に重要です。

アベイラビリティゾーンの活用例

クラウドサービスにおいて、アベイラビリティゾーンは様々なサービスやアーキテクチャで活用されます。

  1. ウェブアプリケーションの冗長化:
    • ロードバランサー配下に、複数のAZにまたがってWebサーバーやアプリケーションサーバーのインスタンスを配置します。
    • あるAZのサーバー群が停止しても、ロードバランサーが自動的に健全なAZのサーバーにトラフィックを振り分け、サービスを継続します。
  2. データベースの高可用性:
    • データベースサービス(例: AWS RDS, Azure SQL Database, GCP Cloud SQL)は、通常、複数のAZにレプリカ(複製)を配置するオプションを提供します。
    • プライマリデータベースが稼働するAZに障害が発生した場合、自動的にスタンバイレプリカが稼働するAZにフェイルオーバーし、サービスの継続性を確保します。
  3. 仮想マシンの耐障害性:
    • 重要な仮想マシン(VM)インスタンスを複数のAZに分散してデプロイすることで、一つのAZでハードウェア障害やネットワーク障害が発生しても、他のAZのVMが稼働し続けます。
  4. コンテナオーケストレーション:
    • Kubernetesなどのコンテナオーケストレーションプラットフォームでは、ワーカーノードやコントロールプレーンのコンポーネントを複数のAZに分散配置し、クラスター全体の耐障害性を高めます。

アベイラビリティゾーンとリージョンの関係性

  • リージョン: 広域の地理的な領域。ユーザーからの遅延を最小化するため、ユーザー拠点に近い場所が選ばれる。リージョン内には、複数のAZが存在する。
  • アベイラビリティゾーン: リージョン内に存在する、物理的に分離された独立したデータセンター群。リージョン内の障害耐性を高めるために利用される。

したがって、サービスをデプロイする際には、まずユーザーに最も近い適切なリージョンを選択し、次にそのリージョン内の複数のアベイラビリティゾーンにリソースを分散配置することで、高可用性と低遅延を両立させることが一般的な設計プラクティスとなります。

アベイラビリティゾーン(AZ)は、クラウドサービスにおいて、単一のリージョン内に物理的に独立して配置された複数のデータセンター群を指します。それぞれが独立したインフラを持つことで、あるAZで発生した障害が他のAZに波及するのを防ぎ、システム全体の高可用性と耐障害性を劇的に向上させます。

単一障害点のリスク軽減、高可用性の実現、災害対策の容易化、ロードバランシングとパフォーマンス最適化などが主な利点です。ウェブアプリケーションの冗長化、データベースの高可用性、仮想マシンの耐障害性、コンテナオーケストレーションなど、クラウド上で堅牢なシステムを構築する上で不可欠な概念であり、システム設計における重要な検討事項となります。

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