セッション維持とは

セッション維持は、ウェブアプリケーションにおいて、ユーザーがウェブサイトを閲覧している間、そのユーザー固有の状態や情報をサーバー側で保持し続ける仕組みのことです。

これにより、ユーザーはページを移動したり、再度アクセスしたりしても、ログイン状態やカートの内容などが継続して利用できます。

セッション維持の概要

インターネットの基盤である HTTP (Hypertext Transfer Protocol) は、本来ステートレスなプロトコルです。これは、一度リクエストとレスポンスのやり取りが終わると、サーバーはその通信の状態を保持しない、つまり「以前の通信を記憶しない」という性質を意味します。

しかし、実際のウェブアプリケーションでは、ユーザーがログインしている状態を保ったり、ショッピングカートに商品を入れた情報を記憶したり、フォームの入力内容を次のページに引き継いだりする必要があります。これらの「状態を記憶する」機能を実現するために用いられるのが、セッション維持の仕組みです。

セッション維持とは、ユーザーがウェブサイトにアクセスしてから離れるまでの一連の操作(セッション)の間、そのユーザーに関する情報をサーバー側で管理し、複数のHTTPリクエストをまたいで一貫したユーザー体験を提供することです。

セッション維持の仕組み

セッション維持には、主に以下の要素が関わっています。

1. セッションID

ユーザーが初めてウェブサイトにアクセスした際、サーバーはユーザーを識別するための一意の文字列であるセッションIDを生成します。このセッションIDは、通常、以下のような方法でユーザーのブラウザに渡されます。

  • Cookie: 最も一般的な方法です。サーバーはセッションIDをCookieとして生成し、HTTPレスポンスヘッダーに含めてブラウザに送信します。ブラウザはCookieを保存し、以降の同じサイトへのリクエストにはそのCookieを自動的に含めて送信します。
  • URLリライティング: セッションIDをURLのパスやクエリパラメータに埋め込む方法です。Cookieが利用できない環境や、一部の古いブラウザで使われることがありますが、URLが長くなったり、共有時にセッションIDが漏洩するリスクがあります。
  • 隠しフォームフィールド: フォームを送信する際に、セッションIDを隠しフィールド (<input type="hidden">) に含める方法です。ページ遷移がフォーム送信に限定される場合に利用されます。

2. セッションストア

サーバー側では、セッションIDと関連付けられたユーザー固有の情報(ユーザー名、ログイン状態、カートの内容など)を保存する場所が必要になります。これをセッションストアと呼びます。セッションストアには、以下のようなものが利用されます。

  • サーバーのメモリ: 最もシンプルですが、サーバーが再起動するとセッション情報が失われ、複数のサーバーで運用する際には共有が難しいという欠点があります。
  • ファイルシステム: サーバーのローカルファイルにセッション情報を保存する方法です。メモリよりは永続性がありますが、複数のサーバーでの共有には向いていません。
  • データベース: リレーショナルデータベース (RDB) やNoSQLデータベースにセッション情報を保存する方法です。複数のサーバー間でセッション情報を共有しやすく、永続性も高いですが、データベースへの負荷が増加する可能性があります。
  • KVS (Key-Value Store): RedisやMemcachedなどの高速なKey-Value Storeにセッション情報を保存する方法です。インメモリで動作し高速なため、大規模なウェブサービスで広く利用されています。

セッション維持のライフサイクル

セッションのライフサイクルは、一般的に以下のようになります。

  1. セッション開始: ユーザーがウェブサイトにアクセスすると、サーバーが新しいセッションを開始し、一意のセッションIDを生成します。
  2. セッションIDの送信: サーバーは生成したセッションIDをCookieなどでユーザーのブラウザに送信します。
  3. セッション情報の保存: サーバーはセッションIDをキーとして、ユーザー固有の情報をセッションストアに保存します。
  4. リクエストごとの識別: ユーザーがサイト内の他のページへ移動する際、ブラウザは保存しているセッションIDをリクエストとともにサーバーに送信します。
  5. セッション情報の読み出し: サーバーは受信したセッションIDを使ってセッションストアからユーザー情報を読み出し、それに基づいて処理を行います。
  6. セッションの更新: ユーザーの操作に応じて、サーバーはセッションストアの情報を更新します。
  7. セッション終了: ユーザーがログアウトしたり、ブラウザを閉じたり、一定時間操作がない場合(セッションタイムアウト)、セッションは終了します。サーバーはセッションストアから該当するセッション情報を削除します。

セッション維持における注意点

セッション維持は非常に便利な仕組みですが、いくつかの注意点があります。

  • セキュリティ: セッションIDが盗まれると、第三者がそのユーザーになりすましてアクセスする「セッションハイジャック」のリスクがあります。セッションIDは予測されにくいものにし、HTTPSによる暗号化通信を利用し、Cookieには HttpOnlySecure フラグを設定するなどの対策が必要です。
  • スケーラビリティ: 大規模なウェブサービスでは、セッションストアがボトルネックになることがあります。複数のサーバー間でセッション情報を共有し、高速にアクセスできる仕組み(例: 共有データベースやKVS)を導入する必要があります。
  • セッションタイムアウト: セッションが長期間維持されると、メモリやストレージリソースを消費し続けます。セキュリティと利便性のバランスを考慮し、適切なセッションタイムアウト時間を設定することが重要です。

セッション維持は、HTTPのステートレスな性質を補完し、ユーザーがウェブアプリケーションを快適に利用できるようにするために不可欠な技術です。セッションIDとセッションストアを組み合わせることで、ユーザー固有の状態を管理し、一貫したユーザー体験を提供します。その一方で、セキュリティとスケーラビリティに対する考慮も重要であり、これらを適切に設計・実装することが、信頼性の高いウェブアプリケーションを構築する上で欠かせません。

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