データ損失とは

データ損失(Data Loss)とは、デジタルデータが、意図しない、あるいは予期せぬ出来事によって、破壊、破損、またはアクセス不能となる事象を指します。

これは、個人、企業、政府機関を問わず、情報システムを利用するあらゆる主体にとって極めて重大な問題であり、事業継続性、法的コンプライアンス、および組織の評判に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

データ損失 の基本的な概念

データ損失は、単にファイルが消えることだけでなく、その内容が読み取れなくなったり、本来の価値を失ったりする状態全般を指します。

主な概念は以下の通りです。

  1. データの完全性(Data Integrity)の喪失: データが本来の状態から変化し、不正確になったり、信頼できなくなったりすることを意味します。例えば、データベースのデータが部分的に破損し、正しい計算結果が得られなくなるケースです。
  2. 可用性(Availability)の喪失: データ自体は存在しても、何らかの理由でユーザーやシステムがそれにアクセスできなくなる状態です。例えば、サーバーの故障によりデータが一時的に利用できなくなるケースです。
  3. 機密性(Confidentiality)の喪失: データの不正なアクセスや漏洩は、広義ではデータの管理上の損失と見なされることもありますが、データ損失の文脈では、主にデータの破壊や可用性の問題が焦点となります。

データ損失 の主な原因

データ損失は様々な要因によって引き起こされますが、大別すると以下のカテゴリに分類できます。

  1. ハードウェアの故障: 最も一般的な原因の一つです。
    • ストレージデバイスの故障: ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)、RAIDアレイ、USBメモリ、SDカードなどの物理的な損傷や寿命。
    • サーバー、ネットワーク機器の故障: データが保存されているサーバーや、それにアクセスするためのネットワーク機器の故障。
    • 電力供給の問題: 停電、電力サージ(過電圧)、不安定な電源供給による機器の損傷やデータ破損。
  2. 人的ミス: ユーザーやシステム管理者による不注意や誤操作。
    • 誤削除: 必要なファイルを誤って削除してしまう。
    • 誤フォーマット: ストレージデバイスを誤ってフォーマットしてしまう。
    • 設定ミス: データベースやアプリケーションの設定ミスによりデータが上書きされたり、アクセスできなくなったりする。
    • 物理的な損傷: 液体をこぼす、落下させるなどによるデバイスの損傷。
  3. ソフトウェアの不具合または破損: オペレーティングシステム(OS)やアプリケーションの不具合、またはファイルシステムの破損。
    • OSのクラッシュ: システムの予期せぬシャットダウンやフリーズによる未保存データの損失やファイルシステムの破損。
    • アプリケーションのバグ: ソフトウェアのバグによりデータが誤って保存されたり、破損したりする。
    • ファイルシステムの破損: データの読み書きを管理するファイルシステム自体が損傷し、データにアクセスできなくなる。
  4. サイバー攻撃と悪意のある行為: 外部からの攻撃や内部犯による故意の破壊。
    • マルウェア/ランサムウェア: ウイルス、トロイの木馬、特にデータを暗号化し身代金を要求するランサムウェアによるデータへのアクセス不能化。
    • ハッキング: システムへの不正侵入によるデータ破壊、改ざん、盗難。
    • 内部犯によるデータ破壊: 従業員などによる故意のデータ削除や破損。
  5. 自然災害: 予測不能な自然現象による物理的な被害。
    • 地震、火災、洪水: データセンターやオフィスが物理的に損傷し、データが失われる。
    • 落雷: 電子機器への直接的なダメージ。

データ損失 の影響と対策

データ損失の影響は、その性質や規模によって異なりますが、ビジネスに甚大な被害をもたらす可能性があります。

影響

  • 事業継続性の阻害: 業務の中断、生産性の低下、顧客サービスの停止。
  • 経済的損失: 売上減少、復旧コスト、罰金、訴訟費用など。
  • 信用の失墜: 顧客、取引先、株主からの信頼喪失、ブランドイメージの毀損。
  • 法的・規制上の問題: データプライバシー規制(例:GDPR, CCPA)への違反、コンプライアンス要件の不履行。

対策

データ損失のリスクを最小限に抑え、発生した場合の被害を軽減するためには、多層的な対策が必要です。

  1. バックアップ戦略の確立: 最も基本的かつ重要な対策です。
    • 定期的なバックアップ: データの変更頻度に応じて、日次、週次などでバックアップを自動化する。
    • バックアップの冗長化: 複数のストレージ(オンプレミス、クラウド、オフサイト)にバックアップを保存する。
    • バックアップの検証: バックアップデータが正常に復元できることを定期的に確認する。
    • 3-2-1ルール: データのコピーを3つ持ち、2つの異なるメディアに保存し、1つはオフサイト(遠隔地)に保管する。
  2. 冗長性の確保: ハードウェアやシステムの故障に備えて、データやシステムの冗長性を高めます。
    • RAID(Redundant Array of Independent Disks): 複数のディスクにデータを分散・冗長化して保存し、ディスク故障時にデータ損失を防ぐ。
    • クラスタリング/高可用性(HA)システム: 複数のサーバーを連携させ、一部のサーバーが故障してもサービスが継続できるようにする。
    • データレプリケーション: データのコピーを別の場所(地理的に離れたデータセンターなど)にリアルタイムまたはほぼリアルタイムで同期する。
  3. データ損失防止(DLP: Data Loss Prevention)ソリューション: 機密データが組織外に不正に持ち出されたり、誤って共有されたりするのを防ぐ技術です。
  4. セキュリティ対策の強化: マルウェア対策、ファイアウォール、侵入検知システム、アクセス制御、従業員のセキュリティ教育など、サイバー攻撃や内部犯による脅威からデータを保護します。
  5. 災害復旧計画(DRP: Disaster Recovery Plan)の策定: 大規模な災害発生時に、システムとデータを復旧し、事業を継続するための詳細な計画を事前に策定し、定期的に訓練します。
    • RPO(Recovery Point Objective): 許容されるデータ損失量(時間)。例:1時間前の状態まで復旧。
    • RTO(Recovery Time Objective): 許容されるシステム停止時間。例:4時間以内にサービスを再開。
  6. 物理的セキュリティ: サーバー室やデータセンターへの物理的なアクセスを制限し、盗難や損傷から機器を保護します。

データ損失は、デジタルデータが破壊、破損、またはアクセス不能となる深刻な事象であり、ハードウェア故障、人的ミス、ソフトウェア不具合、サイバー攻撃、自然災害など、多岐にわたる原因によって引き起こされます。

その影響は、事業継続性の阻害、経済的損失、信用の失墜、法的問題に及びます。データ損失のリスクを管理するためには、定期的なバックアップ、冗長性の確保、データ損失防止ソリューションの導入、セキュリティ対策の強化、災害復旧計画の策定、および物理的セキュリティの徹底といった多層的なアプローチを講じることが不可欠です。

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