レプリケーションとは
レプリケーション（Replication）とは、データやシステムの状態を複数の場所に複製し、可用性、耐障害性、パフォーマンス、およびデータ保護を向上させる技術のこと。
レプリケーション（Replication）は、情報システムにおいて、データやシステムの状態を複数の異なる場所や機器に複製（コピー）し、それらを常に同期させる技術です。
このプロセスにより、単一の障害点（Single Point of Failure）を排除し、システムの可用性（Availability）、耐障害性（Fault Tolerance）、パフォーマンス、およびデータ保護を大幅に向上させることが可能となります。データベース、ストレージ、サーバー、仮想マシンなど、多岐にわたるITインフラストラクチャの基盤技術として広く利用されています。
レプリケーション の基本的な概念
レプリケーションの主要な目的は、オリジナル（プライマリまたはマスター）のデータやシステムに障害が発生した場合でも、複製されたデータやシステム（セカンダリまたはスレーブ）を使って業務を継続できるようにすることです。これにより、ダウンタイムを最小限に抑え、データの損失を防ぎます。
主な機能は以下の通りです。
- 高可用性（High Availability）: 万一の障害時でも、システムが継続してサービスを提供できるようにします。プライマリシステムが停止しても、自動的または手動でセカンダリシステムに切り替える（フェイルオーバー）ことで、サービスの中断時間を短縮します。
- 耐障害性（Fault Tolerance）: 一部のコンポーネントに障害が発生しても、システム全体が機能し続ける能力を高めます。
- データ保護（Data Protection）: データの損失リスクを低減します。特に遠隔地へのレプリケーションは、地域的な災害（地震、火災など）からのデータ保護に有効です。
- パフォーマンス向上（Performance Improvement）: 読み取りが多いシステムでは、レプリカから読み取りを行うことで、プライマリシステムへの負荷を分散し、全体的なパフォーマンスを向上させることができます。
レプリケーション の種類
レプリケーションは、データの同期方法や用途によっていくつかの種類に分類されます。
- 同期レプリケーション（Synchronous Replication）: データの書き込みがプライマリとセカンダリの両方で完了したことを確認してから、アプリケーションに処理完了を応答する方式です。
- 特徴: データの整合性が最も高く、データ損失のリスクがほぼゼロになります。災害復旧における目標復旧地点（RPO）をゼロに近づけることが可能です。
- 課題: プライマリとセカンダリ間の距離が長い場合、ネットワーク遅延の影響を受けやすく、アプリケーションの応答速度が低下する可能性があります。そのため、主に近距離でのレプリケーションに用いられます。
- 非同期レプリケーション（Asynchronous Replication）: データの書き込みがプライマリ側で完了した時点でアプリケーションに応答を返し、その後にセカンダリにデータを複製する方式です。
- 特徴: ネットワーク遅延の影響を受けにくく、プライマリシステムのパフォーマンスへの影響が小さいです。遠隔地への災害対策（ディザスタリカバリ）に適しています。
- 課題: プライマリとセカンダリの間にわずかな時間差があるため、プライマリが障害を起こした場合、セカンダリには最新のデータが反映されていない可能性があり、わずかなデータ損失（RPO > 0）が発生するリスクがあります。
- セミ同期レプリケーション（Semi-synchronous Replication）: 同期と非同期の中間に位置する方式で、プライマリの書き込みが完了し、かつ少なくとも1台のセカンダリがデータを受信したことを確認してから応答を返す方式です。
レプリケーション の実装方式
具体的なレプリケーションの実装は、対象となるコンポーネントや技術によって異なります。
- データベースレプリケーション: データベース管理システム（DBMS）の機能を利用して、データベース全体または特定のテーブルを複製します。
- マスター・スレーブ構成: 一つのマスターデータベースが書き込み処理を担い、複数のスレーブデータベースがその更新をレプリケートして読み取り処理を分散します。
- マスター・マスター構成: 複数のマスターデータベースが存在し、それぞれが書き込みと読み込みの両方に対応します。データ競合の解決が複雑になる場合があります。
- ストレージレプリケーション: ストレージシステム（SAN, NASなど）の機能を利用して、ブロックレベルまたはファイルレベルでデータを複製します。
- 仮想マシン（VM）レプリケーション: 仮想化プラットフォーム（VMware vSphere, Microsoft Hyper-Vなど）の機能を利用して、仮想マシン全体を複製します。これにより、OS、アプリケーション、データを丸ごと保護できます。
- サーバーレプリケーション: 物理サーバーまたは論理サーバーのデータを複製します。クラスターリング技術と組み合わせて高可用性を実現することが多いです。
レプリケーション の応用
レプリケーションは、ITシステムの信頼性と効率性を高める上で不可欠な技術であり、様々な分野で応用されています。
- ディザスタリカバリ（DR）: 災害発生時に遠隔地のレプリカを使ってシステムを復旧し、事業継続性を確保します。
- 高可用性（HA）システム: システム障害時でも、自動的にスタンバイシステムに切り替えることで、サービスの継続性を維持します。
- 負荷分散（Load Balancing）: 特に読み取り要求が多いアプリケーションにおいて、レプリカに読み取り負荷を分散させることで、プライマリシステムの負担を軽減し、応答速度を向上させます。
- データマイグレーション: 新しいシステムへのデータ移行を、レプリケーションを用いてダウンタイムを最小限に抑えながら実行します。
- データ分析: プライマリシステムへの影響を避けつつ、レプリカに対してレポート作成やデータ分析を行うことができます。
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