三重冗長(TMR)とは

三重冗長(TMR)は、システムやコンポーネントの信頼性と可用性を向上させるために、同じ機能を担う3つの独立したユニットを並行して稼働させ、その出力結果を多数決で決定する設計手法のことです。これにより、単一の故障や誤動作が発生しても、システム全体の処理が継続できます。

三重冗長(TMR)の概要

現代のミッションクリティカルなシステムでは、わずかな故障も許されない高い信頼性が求められます。例えば、航空宇宙、医療機器、産業制御システム、そして一部のデータセンターインフラなどでは、システムのダウンタイムが許されない、あるいは人命に関わるようなケースも存在します。

このような要件を満たすために採用される設計手法の一つが、三重冗長(Triple Modular Redundancy, TMR) です。TMRは、文字通り「三つのモジュールによる冗長性」を意味し、同じ処理を行う3つの独立したモジュール(またはコンポーネント、システム)を並行して動作させ、その出力結果を比較器(Voter)で多数決によって決定します。

これにより、3つのモジュールのうち1つが故障したり、一時的に誤った出力を生成したりしても、残りの2つの正しい出力が多数決で採用されるため、システム全体としては正常な動作を継続できます。

三重冗長(TMR)の仕組みと構成要素

TMRの基本的な仕組みは、以下の主要な構成要素から成り立っています。

1. 冗長モジュール(Redundant Modules)

同じ機能を提供する3つの独立したモジュールが、同じ入力データを受け取って並行して処理を実行します。これらのモジュールは、物理的に分離され、電源供給なども独立していることが理想的です。

2. 多数決回路(Voter)

3つの冗長モジュールからの出力結果を受け取り、それらを比較して多数派の出力結果を最終的なものとして採用する論理回路またはソフトウェアです。例えば、モジュールA、B、Cからそれぞれ出力 OA​,OB​,OC​ があった場合、もし OA​=OB​=OC​ であれば、OA​ と OB​ が一致しているため、多数決により OA​ (または OB​) を最終出力として採用します。

3. 故障検出・診断(Fault Detection and Diagnosis)

多数決回路は、どのモジュールが誤った出力を生成したかを特定する機能も持ちます。これにより、故障したモジュールを隔離したり、交換したりするための情報を提供できます。

三重冗長(TMR)の利点

TMRを導入することで、以下のような顕著な利点が得られます。

  • 高い可用性と信頼性: 3つのモジュールのうち1つが故障しても、残りの2つが正常に動作していればシステム全体としては機能を継続できます。これにより、システムのダウンタイムを大幅に削減し、信頼性を向上させます。単一障害点(Single Point of Failure)のリスクが低減されます。
  • 瞬時の故障耐性: 故障が発生した場合でも、多数決によって瞬時に正しい出力が選択されるため、サービスの途絶や遅延がほとんど発生しません。
  • 容易な故障診断: 多数決の結果から、どのモジュールが誤った出力を出したかを容易に特定できるため、故障診断と保守が簡素化されます。
  • 永続的なエラーの許容: 一時的なエラーだけでなく、永続的なハードウェア故障にも対応できます。故障したモモジュールを交換し、再度TMR構成に戻すことで、システム全体の稼働を継続できます。

三重冗長(TMR)の考慮事項

TMRは非常に効果的な冗長化手法ですが、いくつかの考慮事項も存在します。

  • コストの増加: 同じモジュールを3つ用意するため、ハードウェアコストが少なくとも3倍になります。ソフトウェアの複雑さも増し、開発・テストコストも増加する可能性があります。
  • 複雑性の増加: 3つのモジュールと多数決回路の設計、実装、そしてそれらの同期や故障管理は、単一のシステムよりも複雑になります。多数決回路自体が故障点とならないよう、その設計にも高い信頼性が求められます。
  • 共通モード故障(Common Mode Failure): 3つのモジュールすべてに影響を及ぼすような共通の原因(例えば、設計ミス、ソフトウェアのバグ、環境要因、電源異常など)が存在する場合、TMRの効果は失われます。これを避けるためには、異なるベンダーの部品を使用したり、多様な実装手法を取り入れたりするなどの対策が必要です。
  • 消費電力と熱の増加: 3つのモジュールが同時に動作するため、単一のシステムに比べて消費電力と発生する熱が増加します。

三重冗長(TMR)の応用分野

TMRは、その高い信頼性から、特に故障が許されない以下のような分野で活用されています。

  • 航空宇宙: 航空機の飛行制御システムや衛星の姿勢制御システムなど、故障が即座に人命に関わるシステム。
  • 医療機器: 人工呼吸器、手術ロボットなど、患者の生命維持に関わる装置。
  • 産業制御システム: 原子力発電所の制御システム、鉄道の信号システムなど、高い安全性と可用性が求められるプラントやインフラ。
  • 高性能コンピューティング/データセンター: 非常に高い可用性が求められるサーバーやネットワーク機器の一部。

三重冗長(TMR)は、システムやコンポーネントの究極的な信頼性と可用性を実現するための強力な設計アプローチです。同じ機能を3つの独立したモジュールで実行し、多数決で結果を決定することで、単一の故障が発生してもシステムが正常に動作し続けることを保証します。

コストや複雑さの増加という側面はあるものの、人命やビジネスに甚大な影響を及ぼす可能性のあるミッションクリティカルな環境において、TMRは安全と安定を確保するための不可欠な技術として広く採用されています。

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