導出原理とは
導出原理(Resolution Principle)とは、一階述語論理における反駁証明のための強力な推論規則であり、矛盾を示すことによって与えられた命題の妥当性を証明する手法の根幹をなす原理のことです。
導出原理(どうしゅつげんり、Resolution Principle)は、自動定理証明(Automated Theorem Proving, ATP)の分野において、特に一階述語論理(First-Order Predicate Logic)における定理の自動証明に広く用いられる基本的な推論規則です。与えられた命題の否定を公理に追加し、推論を繰り返すことで矛盾(空節)を導き出す反駁証明(proof by refutation)の基礎となるものであり、コンピュータによる論理的な推論を可能にする重要な概念です。
導出原理 の基本概念
導出原理は、複数の節(clause)から新しい節を導き出すための規則です。ここで、節とは、いくつかのリテラル(原子命題またはその否定)の論理和の形をした論理式です。導出原理が適用可能なのは、二つの節の中に、一方の節に肯定形で現れ、もう一方の節に否定形で現れる同一の原子命題が存在する場合です。
具体的には、以下の二つの節 C1 と C2 が与えられたとします。
C1=L∨R1 C2=¬L∨R2
ここで、L は原子命題、R1 と R2 はそれぞれ他のリテラルの論理和を表します。このとき、導出原理を適用すると、新しい節 R1∨R2 を導き出すことができます。この新しい節は、元の二つの節が同時に真であるならば必ず真でなければならないという性質を持ちます。
反駁証明では、証明したい命題 P の否定 ¬P を初期の公理の集合に追加し、導出原理を繰り返し適用することで、最終的に矛盾を表す空節(空のリテラルの論理和、常に偽)を導き出すことを目指します。空節が導き出された場合、初期の仮定(¬P が真である)が誤りであったと結論付けられ、したがって元の命題 P が真であることが証明されます。
導出原理 におけるユニフィケーション
一階述語論理においては、変数を含む述語を扱う必要があるため、導出原理の適用には**ユニフィケーション(Unification)**という概念が不可欠です。ユニフィケーションとは、二つの項(変数、定数、または関数適用)が同じになるように、変数への代入(substitution)を見つけるプロセスです。
導出原理を一階述語論理の節に適用する際には、解消されるべきリテラルが完全に一致する必要はありません。代わりに、それらがユニファイ可能な場合に、最も一般的なユニファイア(most general unifier, MGU)と呼ばれる代入を適用することで、リテラルを「一致」させ、導出原理を適用することができます。
例えば、以下の二つの節を考えます。
C1=P(x)∨Q(x) C2=¬P(a)∨R(y)
ここで、P(x) と ¬P(a) は、変数 x に定数 a を代入することでユニファイ可能です。この代入 {x/a} を C1 と C2 の残りのリテラルに適用すると、導出された新しい節は以下のようになります。
Q(a)∨R(y)
導出原理 の証明戦略
導出原理を用いた自動定理証明システムでは、効率的に空節を導き出すための様々な探索戦略が用いられます。代表的な戦略としては以下のようなものがあります。
- 幅優先探索(Breadth-First Search): 短い導出から順に探索を行います。
- 深さ優先探索(Depth-First Search): 可能な限り深く推論を続けます。
- 集合支持戦略(Set of Support Strategy): 初期状態として、証明したい命題の否定を含む節の集合(サポート集合)から導出された節のみを導出に用いる戦略。
- 入力導出戦略(Input Resolution): 常に少なくとも一つの親節が初期の公理または否定された定理である導出のみを許可する戦略。
- 線形導出戦略(Linear Resolution): 常に少なくとも一つの親節が初期の公理または否定された定理であるか、または直前の導出によって得られた節である導出のみを許可する戦略。
導出原理 の利点と限界
利点:
- 単一の強力な推論規則: 複雑な推論を、ユニフィケーションと組み合わせた一つの基本的な規則で実現できます。
- 自動化に適している: コンピュータによる探索と適用が比較的容易であり、自動定理証明システムの基盤となります。
- 反駁証明の有効性: 矛盾を導くことで定理の真偽を判定する反駁証明は、多くの論理的な問題を扱う上で強力な手法です。
限界:
- 探索空間の爆発: 特に複雑な定理の証明においては、導出される節の数が爆発的に増加し、効率的な探索が困難になる場合があります。
- 証明の長さ: 導出原理による証明は、人間が直感的に行う証明よりも長くなることがあります。
- 演繹的な性質: 新しい数学的概念や定理を発見する能力は持ちません。
導出原理は、一階述語論理における自動定理証明の中核をなす推論規則であり、反駁証明を通じて定理の妥当性を検証します。ユニフィケーションとの組み合わせにより、変数を含む一般的な論理式に対する推論を可能にし、様々な探索戦略とともに、自動定理証明システムの基盤技術として重要な役割を果たしています。その強力な推論能力は、論理学、計算機科学、人工知能など、広範な分野に影響を与えています。
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