探索戦略とは

探索戦略(Search Strategy)とは、人工知能やアルゴリズムの分野において、問題を解決するために、可能な状態空間や解の候補の中から目的の解を効率的に見つけ出すための方針や手順のこと

探索戦略(たんさくせんりゃく、Search Strategy)は、人工知能、アルゴリズム最適化問題などの分野において用いられる概念であり、特定の目標を達成するために、潜在的な可能性を持つ「探索空間(Search Space)」の中から、最適な、あるいは満足できる解を効率的に見つけ出すための一連の方針や手順を指します。探索空間は、問題の取りうる全ての状態や解の候補から構成されます。

探索戦略 の基本的な概念

多くの問題は、一連の行動や選択を通じて、初期状態から目標状態へと到達するプロセスとして表現できます。このとき、考えられる全ての状態の集合や、解の候補の集合が探索空間となります。探索戦略の目的は、この広大な探索空間を、無駄なく、かつ体系的に探索し、目的の解(例えば、最短経路、最適解、特定の条件を満たす解など)を発見することです。

探索戦略は、主に以下の観点から分類されます。

  1. 情報の利用度:
    • 非情報探索(Uninformed Search / Blind Search): 探索空間に関する特別な知識(例えば、目標状態までの距離の見積もりなど)を利用せず、定められた規則に従って機械的に探索を進める戦略です。
    • 情報探索(Informed Search / Heuristic Search): 探索空間に関する追加の情報(ヒューリスティック関数など)を利用し、より効率的に目標状態に近づけるように探索の優先順位を決定する戦略です。
  2. 探索の順序: 探索するノード(状態)をどのような順序で展開していくかによって、様々な戦略が存在します。

代表的な探索戦略

非情報探索(Uninformed Search)

探索空間に関する特別な知識がない場合に用いられます。

  • 幅優先探索(Breadth-First Search, BFS): 探索の開始点から近いノード(深さが浅いノード)から順に探索を進める戦略です。全てのノードを一度だけ訪問し、最初に目標ノードを見つけることができる場合、最短経路を見つけることが保証されます。
    • 利点: 最短経路を保証。
    • 欠点: 探索空間が広い場合、メモリ消費量が大きくなる傾向があります。
  • 深さ優先探索(Depth-First Search, DFS): 可能な限り深く探索を進め、行き止まりに到達したら一つ前のノードに戻って別の経路を探索する戦略です。
    • 利点: メモリ消費量が比較的少ない。
    • 欠点: 最短経路を保証しない。無限ループに陥る可能性がある(限定深さ探索や反復深化深さ優先探索で対応)。
  • 一様コスト探索(Uniform-Cost Search): 幅優先探索の拡張で、ノードまでのパスのコストが最も低いノードから順に探索します。各辺にコストが与えられている場合に最適解(最小コストのパス)を保証します。優先度付きキューを使用します。

情報探索(Informed Search / Heuristic Search)

ヒューリスティック関数 h(n) を用いて、目標状態までの残りコストを推定し、探索の効率を高めます。

  • 貪欲最良優先探索(Greedy Best-First Search): ヒューリスティック関数 h(n) の値が最も小さい(目標に最も近いと推定される)ノードから順に探索を進めます。
    • 利点: 探索が高速に進む可能性がある。
    • 欠点: 最適解を保証しない。
  • A*探索(A* Search): 各ノード n について、開始点からの実コスト g(n) と、目標点までの推定コスト h(n) の和 f(n)=g(n)+h(n) を評価関数として使用し、この f(n) の値が最も小さいノードから優先的に探索します。ヒューリスティック関数が「許容的(Admissible)」であれば、最適解を保証します。
    • 利点: 最適解を保証し、かつ効率的であることが多い。
    • 欠点: ヒューリスティック関数の質に依存する。メモリ消費量が大きくなる場合がある。
  • 反復深化A*(Iterative Deepening A*): A*探索のメモリ消費量の問題を改善したもので、探索の深さ制限を段階的に増加させながらA*探索を行います。

その他の探索戦略

探索戦略 の選択

どの探索戦略を選択するかは、問題の性質、探索空間の大きさ、求められる解の質(最適解か近似解か)、計算資源の制約などによって異なります。

  • Prologなどの論理プログラミング言語では、デフォルトで深さ優先探索が採用されていることが多いです。
  • ネットワークの最短経路探索には、ダイクストラ法(一様コスト探索の応用)やA*探索がよく用いられます。
  • 複雑な最適化問題には、メタヒューリスティック手法が有効です。

探索戦略は、人工知能やアルゴリズムにおいて、広大な探索空間から効率的に目的の解を見つけ出すための方針や手順です。探索空間に関する情報の利用度によって非情報探索と情報探索に大別され、それぞれ幅優先探索、深さ優先探索、一様コスト探索、貪欲最良優先探索、A*探索などの代表的な手法が存在します。問題の特性や制約に応じて適切な探索戦略を選択することが、効率的かつ効果的な問題解決に不可欠です。

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