残差接続とは
残差接続(Residual Connection)とは?深層ニューラルネットワークにおいて、ある層の出力を、その層を通過した後の出力に直接加算する構造
残差接続(Residual Connection)は、深層ニューラルネットワーク(Deep Neural Network, DNN)の学習を安定化させ、より深いネットワークの訓練を可能にするための重要なテクニックです。
具体的には、ある層(または複数の層のブロック)への入力を、その層を通過した後の出力に要素ごとに加算する処理を指します。この構造は、特に画像認識分野で高い成果を上げたResNet(Residual Network)において導入され、以降、様々な深層学習モデルで広く採用されています。
残差接続 の基本概念
従来の深層ニューラルネットワークでは、ネットワークが深くなるにつれて、勾配消失問題や勾配爆発問題が発生しやすくなり、学習が困難になるという課題がありました。残差接続は、この問題を軽減し、より深いネットワークでも効率的に学習を進めるための解決策の一つとして提案されました。
残差接続の基本的なアイデアは、ネットワークが直接的なマッピング H(x) を学習するのではなく、入力 x と出力 H(x) の差分である残差関数 F(x)=H(x)−x を学習するように設計することです。そして、実際の層の出力としては、F(x)+x を用います。ここで、x はショートカット接続(スキップ接続とも呼ばれます)によって、層をバイパスして直接後段に伝えられます。
残差ブロックの構造
残差接続は、通常、残差ブロック(Residual Block)と呼ばれる基本的な構成要素の中に組み込まれます。典型的な残差ブロックは、以下の要素で構成されます。
- 入力 x
- 複数の畳み込み層、バッチ正規化層、活性化関数などからなる一連の処理 F(x)
- ショートカット接続(恒等写像、identity mapping)による入力 x の直接的な伝播
- 要素ごとの加算 F(x)+x を行う加算層
- 必要に応じて、活性化関数
この構造により、ネットワークは恒等写像(入力をそのまま出力する関数)を容易に学習できるようになります。もし追加の層が不要な場合、その層の重みをゼロに近づけることで、F(x)≈0 となり、出力はほぼ入力 x と等しくなります。これにより、深いネットワークにおいても、性能劣化を防ぎやすくなります。
残差接続 の利点
- 勾配消失・勾配爆発の軽減: ショートカット接続を通じて勾配が直接後段に伝わるため、勾配が層を逆伝播する際に減衰したり、爆発したりするのを防ぎ、深いネットワークの学習を安定化させます。
- 学習の高速化: 勾配が効率的に伝播することで、ネットワークの収束が早まり、学習時間を短縮できる場合があります。
- 性能向上: より深いネットワークを効果的に学習できるようになるため、モデルの表現力が高まり、認識精度や生成品質の向上が期待できます。
- 恒等写像の学習の容易さ: ネットワークが不要な層をスキップするような挙動を学習しやすくなり、ネットワークの柔軟性が向上します。
- 深いネットワークの実現: 残差接続を用いることで、数百層、数千層といった非常に深いネットワークの学習が可能になり、複雑なタスクへの適用範囲が広がります。
残差接続 の応用
ResNetの成功以降、残差接続のアイデアは様々な深層学習モデルに採用されています。
- 画像認識: ResNetをベースとした様々な派生モデル(ResNeXt、Wide ResNetなど)
- 物体検出: Faster R-CNN、Mask R-CNNなどの二段階検出器や、SSD、YOLOなどの一段階検出器
- セマンティックセグメンテーション: U-Net、DeepLabなどのモデル
- 自然言語処理: Transformerモデルの一部(Add & Normレイヤー)
- 音声認識: 深層なリカレントニューラルネットワークやTransformerベースの音声認識モデル
残差接続は、深層ニューラルネットワークの学習における重要なブレークスルーであり、勾配問題の緩和、学習の安定化、そしてより深いモデルの実現に大きく貢献しています。そのシンプルながらも強力なアイデアは、現代の深層学習モデルにおいて不可欠な要素の一つとなっており、様々な分野でその有効性が実証されています。
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